『BLEACH』第631話「friend」の感想・考察
こんばんは。ほあしです。
今週の『BLEACH』の感想です。
『BLEACH』第631話「friend」
激しく交戦するバズビーとハッシュヴァルト。二人の戦闘と交錯するかたちで、その過去が語られます。
幼いバズビー、まるでスパルタの戦士のような格好ですね。彼のキレッキレのモヒカンはここにルーツがあったようです。小さいながらも城と呼べる規模の建物で生活し、食料であるはずのウサギにも特に執着しない(「食うために狩りしてる訳じゃねー」)というところを見ると、彼はそれなりに豊かな暮らしをしていたのでしょうね。また、版図の拡大を狙うユーハバッハがバズビーの城とその周辺の土地を攻撃したということも併せて考えると、この土地を治める領主のような家柄だったのかもしれません。
今週のタイトルは「friend」です。言うまでもなく、かつて「友達」だった二人の滅却師、バズビーとハッシュヴァルトのことを指しています。
当時のハッシュヴァルトは、純血統滅却師でありながら霊子兵装(「神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)」という名前が今回初登場しました)を作ることすらできなかったようです。バズビーに言わせれば、この時点では年齢的に作れないのが当たり前のようですが、しかし思いかえしてみれば、ハッシュヴァルトはこれまでの戦いのなかでその霊子兵装を披露したことは一度もなく、常に大きな剣を振るうばかりでしたね。もしかすると、彼は現在もなお自身の霊子兵装を形成できないのかもしれません。だとするとそれは滅却師としてかなり致命的な欠陥のように思えますが、そこになにか大きな秘密などがあるのかもしれません。
ところで、バズビーの甲冑を見ていてふと思ったのですが、ハッシュヴァルトの聖文字”B”はバズビー(Buzz-B)のイニシャルで、バズビーの聖文字”H”はハッシュヴァルト(Haschwalth)のイニシャルになっているんですよね。互いの名前のイニシャルを聖文字として持ち合っている、というのは、いかにも「誓い」じみた符合のように見えて素敵だなと思います。また、バズビーの聖文字『灼熱(the Heat)』は見たまま炎を操る能力なわけですが、自分の故郷を亡きものにした「炎」の力によって戦うというのはかなり悲しい話だなと思うわけです。このたびの回想からも分かるとおり、故郷が焼き払われた瞬間の光景はバズビーのなかに今もしっかりと残っているわけですから。
ハッシュヴァルトが「ユーゴー」という呼ばれ方を好まない理由は、どう見てもこの「叔父さん」にあるようですね。叔父さんに名を呼ばれたハッシュヴァルトの目の死に方が半端じゃありません。「おまえはわしがおらんとだめなんだ」「かわいいユーゴー」というセリフから、押しつけがましい愛情による束縛が容易に見て取れますから、過剰な愛情によって子供をスポイルしてしまうタイプの保護者だったのでしょう。
ここで、場面は現在、城内での戦いに戻ります。バズビーの質問と皮肉に対し、ハッシュヴァルトは、ユーハバッハの居城をあくまでも防衛するという意志表示をします。
この「城」の名前に関するバスビーの質問は、先週ハッシュヴァルトが部下に対して「私が真世界城を離れる訳にはいかない」と言っていたのを受けてのものでしょう。さっき地上にいたときまでは「銀架城」と呼ばれていたはずの城が、「真世界城」という耳慣れない名前で呼ばれていたわけですから、バズビーとしては当然疑問が生じるわけです。
というわけで、先々週の記事で私が述べた「銀架城」と「真世界城」という名前に関する話は誤りだったようです。お詫びして訂正します。先々週の記事の該当部分については取消線を引いておきます。
場面は再びバスビーとハッシュヴァルトの過去へ。ユーハバッハは、彼ら二人が暮らしていた小城と森とを家族もろとも焼き払った、憎むべき仇だったわけですね。だからこそバズビーは、幼い日の誓いを忘れたかのようにユーハバッハへの忠誠を尽くし続けるハッシュヴァルトを「裏切り者」と呼んだのでしょう。
とはいえ、この一連の回想はあくまでもバズビーの視点のみに立って語られているものですから、故郷を焼き払われたという出来事をハッシュヴァルトがどう受け取ったのかという点は分からないわけです。ハッシュヴァルトが「叔父さん」と築いていた関係性次第では、彼が実はユーハバッハに深く感謝しているという可能性すらあり得るでしょう。バズビーにしても「どちらから言い出すでもなく」と回顧していますから、この二人が「ユーハバッハへの殺意をはっきり言語化して確認しあった」というわけでもないようですし。
再び場面が変わり、当時のユーハバッハとその部下の会話へ。当然のことながら、顔の造型は「斬月のオッサン(=千年前のユーハバッハ)」そのものです。当時のユーハバッハは、尸魂界を制圧するための新たな戦力として『星十字騎士団』を準備しはじめたのですね。バズビーらはユーハバッハに接近して復讐を果たすため、ここから『星十字騎士団』への抜擢を目指しはじめたという感じなのでしょうか。続きが楽しみです。
これまでの作中描写のなかで『星十字騎士団』メンバーの過去に触れたものといえば、エス・ノトの回想くらいだったでしょうか。何らかの理由で病床にあったらしいエス・ノトの許にユーハバッハが現れ、彼に力を与えるというものでした。
バズビーにしてもエス・ノトにしても、それぞれの回想がいつ頃の出来事なのか具体的に明示されていませんから、時系列の整理はまだ少し難しそうです。ユーハバッハの顔の造型から判断するに、おそらく今回の回想は約1000年前の出来事なのだろうという当たりを付けるくらいはできますが。
ただ、ここに登場している部下・ザイドリッツは、『見えざる帝国』が尸魂界へ最初の侵攻を行なった際、元柳斎の卍解『残火の太刀』の能力の一つ「火火十万億死大葬陣」によって蘇らせた「ユーハバッハのかつての部下」の一人なんですね。1000年前の戦いで元柳斎に斬られたはずの人物がこの回想の時点ではまだ健在であるということは、「今回のバズビーの回想は、最低でも1000年以上は昔のことである」ということだけは間違いなく言えそうです。
また、今週のバズビーの回想では、ユーハバッハについて「200年前から生きてる」という言及がありますから、ユーハバッハはどんなに遅くとも西暦800年前後にはすでに誕生していたのだろうと推定できますね。御年1200歳。やはり「ばけもの」です。
また、今週の内容を読むと、以前「ユーハバッハの後継者」に雨竜が指名されたとき、バズビーがハッシュヴァルトに対して必要以上に攻撃的に絡んでいた理由が分かりますね。ハッシュヴァルトはすでにこれ以上無いほどユーハバッハに近い地位を獲得し、すでに「次期皇帝」と言われていたというのに、突然現れたどこの誰とも知れない少年にその座を明け渡してしまったわけですから、これはバズビーにしてみれば「裏切り」としか言いようがない事態だったのでしょう。
ザイドリッツは、ユーハバッハの版図に対して「光の帝国(リヒトライヒ)」という名前を用いています。尸魂界の”影”に隠れ潜んでいた「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」と対をなす名前になっていますから、その前身のような存在なのでしょう。
「光の帝国」といえば、20世紀ベルギーの画家ルネ・マグリットによる同名の作品群が有名ですね。「一つの風景に昼と夜とが共存している」という不思議な趣の作品で、国立新美術館で現在開催中のマグリット展ではそのなかの一枚を観ることができるようです。
『BLEACH』における「光の帝国」とマグリットの作品とのあいだに具体的な関連があるのかどうかは分かりませんが、「昼と夜とが共存している」というこの絵の主題には、『BLEACH』の作品テーマに繋がる部分があるような気はしています。以前にお話しした「白い勢力と黒い勢力の宥和」「生と死の狭間を描く」などの文脈において。
最終的になんともとりとめのない話になりましたが、今週の感想は以上です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
それでは。