Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第681話「THE END TWO WORLD」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第681話「THE END TWO WORLD」

 真世界城の頂上へ駆けつけた恋次が『蛇尾丸』による攻撃を仕掛けますが、ユーハバッハには当然のごとく通じず、前触れ無く弾けるようにして斬魄刀が破壊されます。「『蛇尾丸』が破壊される未来」か何かに書き換えたのでしょう。まあ、通り一遍の斬魄刀相手ならわざわざ未来改変などするまでもなさそうですが。恋次の表情は、目の前で何が起きたのか理解しかねて驚いているような感じですね。恋次ルキアはユーハバッハの能力のことをまだ知りませんから、無理もありません。結局、ユーハバッハは歩みを止めることなく何処かへと去りました。

 

 今週のタイトルは「THE END TWO WORLD」です。「二つの世界の終わり」ですね。前回、これから尸魂界と現世を滅ぼしに行くとユーハバッハが宣言していましたから、そのことを指しているのでしょう。とはいえ、ではユーハバッハがこれら二つの世界へ直接出向いて何かするのかというと必ずしもそうとは限らないのではないかと思うんですよね。

 というのも、これから滅ぼすつもりの世界の内側に自分自身が足を踏み入れていたのでは、滅ぼせるものも滅ぼせませんよね。滅ぼすならその世界の外側から、ユーハバッハ自身は巻き込まれないような場所に身を置いてからだと思うんです。つまりどういうことかというと、今回ユーハバッハが「門」を開いて旅立った先は、現世でも尸魂界でもない、全く別の世界なんじゃないかと。あの「門」が穿界門とも黒腔とも異なる様子で描かれているのも、そういうことなんじゃないかと思います。ユーハバッハが創ろうとしている「真の世界」になるべき世界があの門の向こうにあって、彼はその安全圏から二つの世界を滅ぼし、新たな世界創生に取りかかるのではないかと思うんですよね。ユーハバッハの最終目的についてのアレコレは以前にも記事にしたことがありますので、そっちもあわせてどうぞ。

 

 場面が変わって、雨竜vsハッシュヴァルト。三度目の『聖別』で力を奪われたハッシュヴァルトが、天を仰いで倒れます。力だけを奪い取られ、明らかに見捨てられたわけですが、しかし彼は、これを主君の裏切りであるなどとは思わないんですね。「陛下のお役に立てるのならばそれで良い」というところはもう絶対に揺るがないようです。思えばバズビーと戦っている時にも、彼は「ユーハバッハの利益を第一に考える」という言動を示していました。

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久保帯人BLEACH』70巻26~27頁)

 しかも今回は、「ユーハバッハの後継者」に指名されたはずの雨竜と自分とを引き較べて「雨竜は陛下の役に立てず、自分だけが陛下のお役に立てるから誇らしい」という話になっています。それだけ雨竜のことを敵視しまくっていた、つまりそれだけ陛下に心酔しきっていたということですね。かつてユーハバッハに言われた「私にはお前が必要だ」という言葉が、ハッシュヴァルトにとってどれほど大きなものだったかが分かります。

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久保帯人BLEACH』70巻19頁)

 

 ハッシュヴァルトの誇りを聞き届けて、雨竜は去ろうとします。これをわざわざ引き止めて「傷を移して行け」と勧めてくるハッシュヴァルト、本当にイイですよね・・・。これ、つまるところ「かつて自分が選べなかった選択を雨竜に託そうとしている」んですよね。

 かつてハッシュヴァルトは、突然目の前に現れたユーハバッハから「お前が必要だ」と突然告げられ、どうすべきか逡巡していたところでバズビーが激昂し、彼の攻撃を咄嗟に止めてしまったがために決裂してしまったわけですよね。友を取るべきかユーハバッハを取るべきか、あるいはもう少し根本的なところとして、そもそもバズビーは自分という「友」を必要としているのかいないのか。それらをじっくり考えて「秤にかける」ための時間がもう少しあれば結論が変わっていたかもしれないと、ハッシュヴァルトは思っていたんですね。「ユーハバッハを選んだ」という結論そのものを後悔しているのではなく(「後悔は無い 何一つ」と本人も言っています)、「選択肢を秤にかけて吟味せず、迷いに追われて選んでしまった」という経緯を後悔しているわけです。

 だからこそ、自分が選べなかった「友」という選択肢を選んだ雨竜に対しては、その選択に迷いや後悔が無いようにしてほしいという思いがあるんじゃないかと思います。ですから、「傷を移して行け」というのは、かつて迷いを残したまま重大な選択をしてしまい、そのことを後悔している先達としての餞のようなものなのかなと。

 で、これに遠慮して気後れしてしまう雨竜は、やはりお人好しというか、なんとも普通の高校生だよなあと思います。放っておいても死ぬということが分かっている相手へ更に追い討ちをかけること(いわゆる「死体蹴り」に等しい行為)になるのですから、道義的な観点から考えれば気がすすまなくて当然です。というか、ここで雨竜が我が意を得たりとばかりに遠慮無く傷を移して平気な顔をしてたりしたら、それはもはや「人格破綻者」としか言えませんけどね。

 しかし、倒れているハッシュヴァルトが血みどろになっていますから、結局雨竜はその餞を受け取ったようです。ハッシュヴァルトの右手が開くと、大剣の柄に象嵌された"B"の文字が見えます。これ、かつてバズビーが「子分の証」としてハッシュヴァルトにあげたマントの留め金ですね。

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久保帯人BLEACH』69巻158~159頁)

 これを後生大事にずっと持ち続けていたんですね、ハッシュヴァルトは。それも、彼の唯一の得物であるところの大剣の、しかも利き手が必ず触れる柄の根元に埋め込むというかたちで。バズビーとの友情の証を、文字通りに肌身離さず。どれほど大切だったんでしょうか。そりゃ「迷いに追われて秤にかけることができなかった」という後悔もしようというものですよね。

 

 場面が変わって、再び真世界城の頂上へ。ユーハバッハが去った後の一護たちですね。ユーハバッハの「"未来を改変する"力」のことを聞かされたルキア恋次ですが、やはり打つ手など思い浮かばないようです(当然のことですが)。織姫の「拒絶」によって天鎖斬月を修復しようとしますが、「ここから先の未来全てで折られたものを"拒絶"で消す事はできぬ」ということのようで、修復が効きません。

 ここで月島を持ってくるというのが上手いなあと思います。月島の完現術は「対象に"栞"を挟み込んで新しい過去を作り出す能力」ですから、ユーハバッハがやるような「未来の改変」とはそもそも競合しないんですね。「天鎖斬月を折られた」というのがもはや過去の事実になってしまった(ただしあらゆるパターンの世界において折られてしまっているため、このままでは"拒絶"はできない)からこそ、「ブック・オブ・ジ・エンド」が活きてくるわけです。さっきまではそもそも存在すらしなかった「卍解を折られなかった過去」を新たに作り出したことで初めて「卍解を折られた」という事実を拒絶することが可能になったと。

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久保帯人BLEACH』52巻120頁)

 銀城と月島がそもそも真世界城の頂上まで辿りつけたのは、空鶴と雪緒のおかげでしょうね。彼等を拾った空鶴の「花鶴大砲」なら霊王宮までは難なく辿りつけますし、そこからの道中は雪緒に送ってもらえば終わりです。実際、銀城の背後に雪緒の姿がありますね。

 で、ここで銀城が月島に言っている「義理を返せ」という言葉の意味なんですが。月島から一護へ返すべき義理があるとすれば、「家族や友人との絆を奪って絶望を味わわせたこと」についてだと思うんですよね。まあこれは月島独りで企んだことではなく銀城との共謀だったわけですし、義理を果たすというよりは罪滅ぼしみたいなことなんですが。

 では、そもそもなぜ銀城は「一護に義理を返さなければならない」などと思っているのでしょうか。一言で言えば、「銀城は一護に救われたから」ですね。

 銀城と一護はどちらも同じ死神代行という立場にありながら、その選択は非常に対照的でした。銀城は死神たちの裏切りを知って袂を分かったのに対し、一護はそこに薄々勘付きながらもあくまで彼等を仲間として信じ続ける道を選びました。そうして同じ状況に対して正反対の結論を出したにも関わらず、一護は銀城のことを「理解」しようとし、「銀城は間違っている」などとは決して言わなかったんですね。「何かひとつボタンの掛け違いでもあれば自分も銀城のようになっていたかもしれない」という、同じ死神代行であるがゆえの「理解」です。死神にも人間にもなりきれなかった銀城の孤独を、同じ死神代行として理解してくれたのが一護だったわけです。それが銀城にとっては救いになったんですね。今回はその礼をした、といったところでしょう。まあ銀城がこんなことを自分の口で懇切丁寧に説明するわけはありませんし、もしそんな野暮をされては興醒めもいいところですが。

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久保帯人BLEACH』54巻142,156~157,163~165頁)

 

 こうして再び『天鎖斬月』を手にした一護ですが、この『天鎖斬月』には、果たしてまだ力が残っているんでしょうか。折られた刀身こそ元に戻りましたが、その内側にあった虚&滅却師の力は、ユーハバッハに奪い取られたままだと思うんですよね。いわば入れ物だけが残った空っぽの状態なのではないかなと。

 だとすれば、ここから雨竜の『完全反立』が効いてくるのかなと思います。「一護とユーハバッハという"2点"の間に起きた"力の移動"という出来事を逆転する」という使い方をすれば、さきに奪われた一護の力が戻るだけでなく、逆にユーハバッハの力を根こそぎ奪い取ることすらできると思うので。しかも、もしそうやってユーハバッハの力を「全て」奪い取ってしまったら、もう勝利確定のはずなんですよね。なぜなら、ユーハバッハは「自分が吸収してきた魂を失うと無力な赤ん坊に戻ってしまう」という特性を持っているからです。雨竜が対ユーハバッハ戦の切り札たりうる状況がほぼ整ったと言って良いと思います。

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久保帯人BLEACH』63巻95頁)

 雨竜もいま真世界城の頂上に向かっているはずですから、そこでユーハバッハの「"未来を改変する"力」の概要を聞かされるでしょう。そうすれば、頭の切れる雨竜ならそういう使い方にもすぐ辿りつくだろうと思います。

 

 とはいえ、「未来を意のままに操る」という能力が相手ですから、油断はできません。『完全反立』で一発逆転という作戦も、能力を使う前に雨竜が殺されたらその時点で終わるわけですし。それに、こんなに早い段階で「うまくやれば勝てそう」な道筋が見えてきているという事実それ自体がちょっと怖いんですよね。また更にどんでん返しが起こりそうな気がして。本当にどうなることやら・・・。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。