Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第632話「friend 2」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第632話「friend 2」

 先週に引き続いてバズビーとハッシュヴァルトの回想です。タイトルも引き続き「friend」のまま。

 やはりと言うべきか、ハッシュヴァルトは滅却師能力を持っていないようですね。数十年に一度程度生まれると言われている「不全の者」ではないかとバズビーが推測しています。ハッシュヴァルトがこれまで一貫して霊子兵装を見せずに剣のみで戦ってきたことには、きちんと理由があったということですね。

 ここで気になるのは、バズビーの目から見たハッシュヴァルトが、剣士および射手としてきわめて熱心に鍛錬をしているように見えたらしい、という点です。

 ハッシュヴァルトが「叔父さん」を嫌っていたらしいというのは、先週の時点でかなり分かりやすいかたちで示唆されていましたよね。彼がユーゴーという呼ばれ方を嫌っていた理由として提示されたのが「叔父さん」だったわけですから。

 だとすると、この時点でのハッシュヴァルトは、いったい何の理由があって剣や弓の腕前をそんなに熱心に鍛えていたのでしょうか。先週も言いましたが、現時点で提示されているハッシュヴァルトと「叔父さん」の関係を考えるかぎり、彼の中にユーハバッハへの憎悪がそれほど強く生じるようには思えないんですよね。

 あるいはユーハバッハなどは関係なく、単に「自分は滅却師として不全である」という負い目を払拭したいから、ということなのでしょうか(「自分の才能の無さを補おうと」という所見をバズビーも語っていますし)。いずれにせよ、ハッシュヴァルト本人の視点から何事かが語られるまで、この点について確かな答えはわかりませんね。

 

 ユーハバッハの軍勢が、彼ら二人の前に現れます。旗に描かれている紋章は、ユーハバッハ(YHWH)のイニシャルである”Y”を象ったものでしょう。『見えざる帝国』のシンボルである「星形の十字架」は、”Y”の字形が元になっていたのですね。

 ユーハバッハの憲兵だという兵士が二人ほど登場していますが、彼らもまた、先週登場したザイドリッツと同じタイミングで顔と名前だけは見せていましたね。「アルゴラ」と「ヒューベルト」という名前のようです。ただ、どちらがアルゴラでどちらがヒューベルトなのかは分かりません。以前に登場した際のフキダシの位置がそれぞれの顔の位置に対応しているのだとするなら、額に傷を持つほうがアルゴラで、黒髪のほうがヒューベルトということになるのでしょうが、確かなことは言えません。

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久保帯人BLEACH』57巻180頁)

 

 『星十字騎士団』志願者募集の旨を聞いたバズビーは、憲兵の前に飛び出して自らをアピールします。強烈な復讐心を持っているバズビーだからこその逸りでしょう。また、無謀な行為に出るバズビーを見た大人が「元領主のところの倅」と言っていますから、やはり彼はもともとこの地域を領有する家の子供だったんですね。

 

 バズビーの挑発(「あんたのその椅子俺にくれよ」という言い回しは以前にも使われていましたね)に乗った憲兵とバズビーとが戦闘になろうかというその瞬間に、ユーハバッハの霊圧によってほとんどの者が地に伏せさせられてしまいました。

このときにハッシュヴァルトだけが自立したままでいられたのは何故なんでしょうね。ユーハバッハがわざとハッシュヴァルトを避けるようにして民衆に霊圧をかけたからなのか、あるいはユーハバッハ自身は全員に等しく霊圧をかけたけれども、それに屈せずにいられる「何か」をハッシュヴァルトだけが持っていたからなのか。現時点ではちょっと判断がつきかねます。

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久保帯人BLEACH』61巻55頁)

 

 ただ、ユーハバッハはハッシュヴァルトに対して「私はお前の名を知っている」と言い、実際、本人が名乗る前にその名を呼んでいるわけですから、彼は事前にハッシュヴァルトに目をつけていたというのはほぼ間違いないだろうと思います。以前ハッシュヴァルトが雨竜に説明していたように、「陛下は全ての滅却師と繋がっておられる」のだとしたら、これは何ら不思議なことではありませんし。

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久保帯人BLEACH』63巻89頁)

 

 それにしても、ユーハバッハの右腕になるのは自分だというつもりでバズビーが名乗り上げようとしたら、ユーハバッハ本人から指名を受けたのはハッシュヴァルトだったというのは、バズビーのプライドとしてはどんなもんなんでしょうか。内心ではユーゴーと組んでもユーハバッハを殺すのに何のメリットにもならないだろう」とまで思っていたわけですから、自分が選ばれずにハッシュヴァルトが選ばれるのは全く訳が分からないでしょう。まさに呆然といった表情を浮かべています。

 

 「我が半身」とユーハバッハが言っているのは、おそらく「昼と夜を境に力が交換される」という話に繋がるのだろうと思います。ユーハバッハが休んでいるあいだの王座を預ける者として「半身」と表現しているのでしょう。

 これは推量ですが、滅却師のあいだで数十年に一度生まれると言われる「不全の者」というのは、ユーハバッハが休息を取るあいだ、自らの力を預けておくための「容れ物」になってもらうために生まれてくるものなのかなと考えられますね。ハッシュヴァルトが滅却師として本来持っていて然るべき能力すらも持たず、空っぽの存在として生まれてきたのは、「ユーハバッハの力の容れ物」として空っぽであってもらう必要があったからなのかな、と。余計なものが入っていては「容れ物」として用を為さないわけですから。

 

 それにしても、大地にひれ伏す民衆の中央でユーハバッハとハッシュヴァルトが対峙しているさまは、それこそまさに「神」と「神に選ばれた高貴な人間」の対峙という趣があってたいへん分かりやすいなぁと思います。選ばれていない有象無象どもは神を前にしてひれ伏すほかない、という。

 

 ところで、ユーハバッハの軍勢が掲げている”Y”の字を象った紋章を見て思い出したのですが、〈死神代行消失篇〉で一護が完現術の修行をしているとき、『月牙天衝』のような感覚で黒い霊圧を飛ばしていたことがありましたよね。

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久保帯人BLEACH』50巻105頁)

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久保帯人BLEACH』51巻27,29,40頁)

 この完現術による攻撃をいま改めて見てみると、どれも滅却師にゆかりのある紋章に似ているんですよね。この符合は以前からぼんやりと考えていたことではあるんですが、このたび”Y”の紋章を見てほぼ確信しました。

回転翼が6枚のときはユーハバッハ自身を象徴するものと思われる「*(いわゆるアスタリスク)」の紋章に、5枚のときは滅却師を象徴する「星」の紋章に、4枚なら「十字架」に、3枚ならユーハバッハ(YHWH)のイニシャル「Y」に、それぞれよく似ています。似ているというか、図像としては完全に同じものなんですよね。

 滅却師と完現術者は能力の成り立ちがよく似ている」という話を以前にしましたが、そのあたりと関連させて考えてみると面白いかもしれませんね。一護の完現術のなかに、滅却師としての資質が知らずのうちに現れていた、という解釈も可能だと思います。

 

 また、特に「*」の紋章については、ユーハバッハのみならず、『BLEACH』という作品内における「神」という概念そのものを象徴する記号として用いられている節がありますので、この記号については後日別の記事としてまとめるつもりです。ここでは参考としていくつか画像を紹介するにとどめておきます。 

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久保帯人BLEACH』63巻98頁)

 ※ユーハバッハの「魂を分け与える力」について明かされた第565話のオマケ絵です。単行本にのみ掲載されている絵なので、知らない人も多いのではないでしょうか。

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久保帯人BLEACH』65巻67頁) 

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久保帯人BLEACH』66巻138~139頁)

 ご覧のように、いずれもユーハバッハと関わりのあるシーン、特にユーハバッハの神性・特別性を強調するような場面で「*」の紋章が登場しているんですね。最近では、『真世界城』が現れた際、王座の背後に垂れ下げられていた「垂れ幕」に、これと同じ紋章が描かれていました。というような話を近いうちにまとめますので、お楽しみに。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。