Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BURN THE WITCH』第1話「WITCHES BLOW A NEW PIPE」の感想

ご無沙汰しております。

ほあしです。

 

本日発売の週刊少年ジャンプ2020年38号にて、久保帯人先生の新作『BURN THE WITCH』の短期集中連載が始まりました。

今作は、中編アニメーション映画としての公開を前提とした全4話構成とのこと。

この記念すべき作品について少しでも多くの方に興味を持っていただきたく思い、各話感想などものしたいと思った次第です。

よろしくお願いいたします。

 

まず、全体的な感想を端的に述べますね。

 

情報量多すぎません??????

 

「ウイング・バインド」の上層部の人がいきなりどっさり出てきて、正直言ってかなりビビりました。本当に中編アニメの尺(一般的には60~90分くらいですよね)に収まる話になるんでしょうか。

もちろん、この第1話で出てきた新たなキャラクターの中にも、その出番の大きさにはある程度差が出てくるのだろうと思いますが、にしても、こうして顔と名前を出したからにはみんながそれなりの存在感を持つ予定ではあるんでしょうから、ここは期待していきたいと思います。

 

さて、細かいところを見ていきますが、まずタイトルから。「WITCHES BLOW A NEW PIPE」、直訳すると「魔女たちは新たな笛を吹き鳴らす」といった感じでしょうか。『BURN THE WITCH』という物語の新たな始まりを告げるファンファーレのような、華々しい雰囲気を感じさせてくれるタイトルだと思います。

 

冒頭。一人で表ロンドンの往来を歩くニニーの「おとぎ話なんてクソでしょ」というモノローグから物語が始まります。完全に読切版『BURN THE WITCH』の冒頭を踏襲したものですね。

読切版ではのえるの「制服が好きだ」というモノローグから始まりました。のえるが「好きなもの」を端緒として自己のあり方を語る一方で、ニニーは「嫌いなもの」を語ることで確固たる自己を訴えるわけです。象徴的ですよね。

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久保帯人『BURN THE WITCH』読切版より)

「私はこれこれこういうものが嫌いです」と語る行為って、やはりリスキーなことではあるじゃないですか。なにが好きでも嫌いでもその人の勝手。それは全くそのとおりなんですが、それでも、あえて「これが嫌い」と言明するという行為にはやはり一定の攻撃的なニュアンスが含まれてしまうわけです。「誰かが好きかもしれないものの価値を自分は認めない/低く見ている」ということの表明ですからね。こういう点に、ニニーの自我の強さというか、「自己を貫くために他人と波風を立てることを躊躇しない」とでもいうような、鮮烈な力強さが表れているなと思いました。

 

ところでニニー、「セシル・ダイ・トゥワイス」というアイドルグループのリーダーとして活動しているという情報が明かされましたが、冒頭に出てきたパパラッチたちの言動や後のシーンののえるのセリフなどを見るに、このグループはどうやら表ロンドンでも普通に活動しているようですね。

読切版の冒頭ではニニーが出演したCM映像が大スクリーンに流れていましたが、そこで宣伝していたのは、ドラゴンの涙液から作ったという清涼飲料のような商品で、明らかに「裏ロンドン向け」のものでした。彼女のアイドルとしての活動がどの程度の規模だったのか判然としなかったのですが、今回の描写を見るに、どうやらかなり売れてるっぽいですね。あと実はこの読切版のCM映像のなかで、「CECILE DIE TWICE」というグループ名がデザインされた服をすでに着てますね。 

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久保帯人『BURN THE WITCH』読切版より)

あと、このパパラッチのくだりでしれっと「TJと別れた」とか「脱退したメンバーと仲悪かった」とか、プライベートでの人間関係があまり良好ではないらしいという情報が出てますね。これ、なにげにまあまあ凄まじいことをやってると思うんですよ。

ニニーはこれからダブル主人公の片翼として、読者にしっかり愛される必要があるというのに、やれおとぎ話が嫌いだのやれパートナーと別れただのやれアイドル仲間と不仲だっただのと、一見すると「ちょっと感じ悪い人なのかな…?」と思わず一歩引いてしまいたくなるような情報が列挙されています。なのに実際読んでると全くヤな感じがしないんですよ。ていうかぶっちゃけ死ぬほど格好良いですよね? これってちょっとすごくないですか??

もちろんこの作品は通常の新連載作品とはちょっと事情が違って、読切版である程度のキャラ立てがすでに完了している状態からスタートできているという面はあります。しかし、読切版の内容は明らかにのえるの描写に大きなウエイトが置かれていて、ニニーの掘り下げについては、一枚控えめなところまでに留まっていた印象がありました。むしろそれを補うためにこそ、今回の冒頭の流れがあるのだと思うんですが、そこでこういうマイナスイメージの面を呼ぶような切り口から語ってみせ、そして実際にめっちゃ格好良く感じさせてくれるということに、ちょっと驚愕してしまいました。

 

このくだりの最後、ニニーがスマホのカメラに「ウイング・バインド」のコインを翳して裏ロンドンへ逃げ込みます。読切版ののえるは、電話ボックスの電話にコインを入れ、電話口で出勤の旨を述べることで裏ロンドンに入っていました。

これらの手続きの共通項としては「電話機」と「コイン」という部分がまず見出せるかと思いますが、この入場手続きが厳密にはどうなってるのかは結構気になりますね。この二人はそれぞれこの手順でしか入場できないのか、それとも「電話機」と「コイン」という条件さえ満たせば細かい手順はその場のノリでもイケる感じなのか。色んな入場手順が見てみたいので、個人的には後者パターンだと好みですね。

 

場面が変わって、のえるがシカ型ドラゴン「蕾鹿竜(バッドバック)」をとっ捕まえています。ここでのえるが唱えている「マジック」の詠唱、これぞ久保先生節ですよね。詠唱の前半部分がわりとしっかり脚韻を踏んでいるのも、ちょっと英語の韻文詩っぽい雰囲気があってすごく良いですね。

ところで、ここでクソでかいコウモリ型ドラゴンに対して使っている「ブルー・スパーク」という名のマジックですが。名前といい実際の効果といい、なんかものすごく『蒼火墜』っぽくないですか? 直訳すると「青い閃光」とか「青い火花」とかそんな感じです。もうほぼ同じじゃないですか。

ただ、『蒼火墜』は破道の三十三番なのに対して「ブルー・スパーク」はマジックナンバー31番なんですよ。この微妙に数字がズレているところが余計に”それっぽい”というか、「たぶん西梢局と東梢局とではこういう魔術的なやつの体系が微妙に似て非なるものなんだろうな~」とか、「その違いは”ドラゴンの保護管理”と”虚の抹殺”という目的意識の違いから生じてるのかもな~」とか、いろいろ奥行きが想像できちゃいますよね。すげえニヤニヤしちゃいました。あとこのシカ型ドラゴンがめっちゃメブキジカやん!って思っちゃった。まあそういうこともある。

ここでニニーが使用した「フラッシュ・バンパー」、直訳すると「閃く緩衝器」みたいな感じでしょうが、これも破面篇で雛森や吉良が使用していた縛道の三十七『吊星』によく似た用途の技に見えますね。空中で足場や壁を緊急確保したいときに使う感じでしょうか。

 

「ウイング・バインド」本部ビルに帰還したニニーとのえるのやり取り、かわいいですね。のえる、報酬の独り占めを画策したり、蕾鹿竜の花を黙ってガメてきたりと、結構(というかかなり)ちゃっかりしているところがあるのが非常にキュート。蕾鹿竜のかわいらしい花をニニーがあからさまに欲しそうにしているのもかわいい。

オスシちゃんとバルゴ、元気そうで何よりです。クソでかい翼を生やしたオスシちゃんもめっちゃかわいいですね。「オスシちゃんが突然ハネを出すとき」の一覧がどれも可愛すぎる。これだけでもLINEスタンプとかにしてほしいです。ていうかこの突然ハネを出す条件の中に「バルゴに危機が迫っているとき」というのがあるのがめっちゃ泣けますよね。オスシちゃん、ドラゴンであってもめっちゃバルゴに懐いてるんやな…というのが一発でわかっちゃった。

このオスシちゃんとバルゴを捕まえるくだりで「ドラゴン接触禁止法」についての解説があります。内容自体は読切版でも述べられていたことに少し追加がある程度なんですが、この法律が設定された年代として「1609年」という数字が明記されています。これがちょっと気になりますね。

さすがに西暦でのことだと思うのでそういうつもりで考えてみると、17世紀初頭のイングランドって、スコットランド王ジェームズ6世がイングランドジェームズ1世としても王位を継承した(1603年)ことで、いわゆる「イギリス王冠連合」時代が始まった頃なんですよね。これがイギリス・ステュアート朝の始まりであり、スコットランドイングランド両国が約100年後に合併して「グレートブリテン王国」となるまでの礎となった時代です。表ロンドンの事情が裏ロンドンの法整備にどこまで絡むのかは分かりませんが、まあそれくらいの時代だったんだなという話でした。ちなみに、16世紀末~17世紀初頭というのは、我らが黒崎一護くんの愛する作家ウィリアム・シェイクスピアが最も活躍した時代だったりもします。なんか関係あるんですかね。

 

このくだりでのえるが行ってる「ドラゴンとの接触検査」、やり方がちょっとあまりにもエロすぎますよね。そりゃ言われたほうだって赤面しますよ。あとここで「ドラゴトキシン」という名の物質が新たに登場しています。直訳すると「竜の毒素」。まあそのまんまですね。ただ、「ドラゴンとほんの少しでも接触したらその時点で完全アウト」というわけでもなく、設定された閾値を超えてしまうとアウトというのは面白いですね。わざとこの閾値ぎりぎりまでドラゴトキシンを得ることで何か悪いことするやつとかいそう。

このくだりでニニーが張ってる「バリアテープ」ですが、これには「WITCH/WIZARD ONLY」と書かれています。この感じだと、「魔女(ウィッチ)」とともに「魔法使い(ウィザード)」という肩書があるみたいです。単に性別で呼び分けているだけなのか、職務上の役割として魔女とは全く別の仕事を魔法使いが受け持っているのか、そのあたりが気になります。

 

バルゴに襲いかかってきたダークドラゴン、読切版のセルビーもそうでしたが、やっぱデザイン的にはかなり気色悪いですね。虚の不気味さともちょっと毛色が違うというか、虚って「仮面をつけている」という設定のおかげもあってか、「目と鼻と口の配置」が標準的な生き物のあり方からあんまり逸脱してないんですけど、ダークドラゴンの頭部に関してはもう完全に「バケモン」以外の表現が無理なんですよね。のえるのマジックで沈黙させられたあと、トカゲみたいな顔がずるりと剥がれ落ちて本当の頭部が露わになるシーン、デザインのあまりのギャップにちょっと本気で背筋が寒くなりました。

あとここで「黒化(ライツアウト)」という語もしれっと登場しています。流れから言って、ドラゴンがダークドラゴンに変異することを指しているのでしょう。BLEACHの語彙で理解するとしたら、整(プラス)が虚(ホロウ)になるのと同じ現象なんだろうなと思います。

ダークドラゴン出現を受けて「竜鎖」状態に入る裏ロンドンの光景、こういう「戦術対応型都市」みたいなのを見るとどうしてもエヴァ第3新東京市を想起してしまいますね。大好きです。まあやってることは単に住人の避難と締め出しだけっぽいですが。

 

ニニーとのえるがダークドラゴン相手に奮戦しているのを眺めている、「ウイング・バインド」の最高意思決定機関「トップ・オブ・ホーンズ」の皆さん。「笛吹き隊」が使っているラッパの形状からみて、「TOP OF HORNS」は「角笛の頂点」とでも訳せばいいでしょう。各部署の長たちによる経営幹部会議みたいなもんでしょう。各部隊の職務内容はまあ名前から概ね察せられると思うのでここでは省きます。キャラクターについてもみんな癖が強そうではありますが、次回以降を楽しみにする、という以上のことはまだ言えませんし。

ただ、人事神罰隊【ギャロウズ】のウルフギャング・スラッシュハウトだけはちょっと気になりますね。名前からするとニニーがたまに口にしている「人事」部門のことなんでしょうが、なんで人事部門に「神罰」なんて物騒すぎる言葉が含まれているのか。対ダークドラゴンの実戦を担当するのは戦術隊っぽいですし、ちょっと解せないネーミングですね。「ギャロウズ」というのも同様の意味で気になっていて、gallowsって、「絞首刑」「絞首台」を意味する言葉なんですよ。「隊律に背いた魔女を縛り首にする、組織内秩序の守護者」、という意味で「神罰」「絞首台」という名前なのかなと現時点では思っています。バルゴの監督責任を負うべき部署でもあるようですし、なんかそういう感じっぽいですよね。あとこういう「魔女を殺す」的なニュアンスは「BURN THE WITCH(魔女を焼き殺せ)」というタイトルにもそのまま繋がりますね。

という感じで、このままだとバルゴくんが討伐されちゃうよという話が転がっていくようです。これ本当にたった4週で終わっちゃうんでしょうか。普通にこのまま10年くらい読みたいんですが。まあもしかしたら予定変更して10年続けますって言ってくれるかもしれませんし、見守っていきましょう。

 

そうそう、『BURN THE WITCH』劇場版アニメの公式サイトも本格オープンしたようです。

みんな絶対チェックするんですよ。

https://burn-the-witch-anime.com/

 

今週の感想は以上です。

それでは。