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Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第656話「GOD OF THUNDER」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第656話「GOD OF THUNDER」

 巨大化したジェラルドを眺めるナックルヴァールの独白から始まりました。場面は隊長格らとジェラルドの戦いから、一護たちとナックルヴァールの戦いへ一旦移るようです。

 ここからは二つの戦いが並行して進むことになるんでしょうか。だとすると、それぞれの戦いのなかに表現上リンクさせたいテーマなどがあるのか、あるいはもっと直接的に、どこかの段階で戦線が合流していくという流れになるのかもしれませんね。ここまでのハッシュヴァルト戦・ペルニダ戦・リジェ戦がすべて独立した戦いだったこともあって、そのためにあえて同時進行を始めているように見えます。

 

 ナックルヴァールによれば、リジェは親衛隊のリーダーであり、「陛下が初めて聖文字を与えた滅却師とのことですが、646話では「最後に力を与えられた」とリジェ本人は言っていたわけで、一見すると今週の内容と正反対のことを言っているように見えます。ただ、646話のこのセリフで言っている「力」というのが、必ずしも聖文字のことを指しているとは言いきれないんですよね。

 彼ら親衛隊はこの霊王宮での戦いが始まる直前に、ユーハバッハの『聖別』によって他の滅却師から奪い取られた力を与えられているわけですから、「最後に力を与えられた」というのはそのことを指しているのだと考えたほうがよいと思います。王悦に斬られたリジェを死から蘇らせたのは彼の聖文字ではなく『聖別』で賜ったあの「力」だったわけですから、リジェがたびたび言及していた「神の力」もここに由来するものと考えるべきでしょうし。これはおそらくナックルヴァールについても同様のことが言えると思います。彼もまたこのときの『聖別』によって「神の力」を与えられているはずです。

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久保帯人BLEACH』67巻51頁)

 また、リジェが親衛隊のリーダーであると考えると、新入りの雨竜に対してきわめて強い警戒心を抱いていたことにもより納得がいきますよね。要は「雨竜が陛下の後継者に指名されたことへの嫉妬」みたいなものがわりと大きかったのかなと。リジェは神たるユーハバッハを心底から崇敬していて、「神に最も近い男」を自称するような人物ですから、ユーハバッハの邪魔をする可能性が捨てきれない雨竜のような者をそう簡単には信用できないでしょうし。

 

 ペルニダとジェラルドの聖文字についての話は非常に興味深いですね。彼らの聖文字だけは、元々持っていた力にあわせた名前として与えられたものにすぎないという。リジェやナックルヴァールと違って、彼らが持っている「神の力」は自前の(あるいは霊王に由来する)ものらしいんですね。

 ペルニダが「霊王の左腕」であるというのは、なんというかあの姿を見れば分かりますし、実際そのようにしか考えられない振る舞いをペルニダ自身が見せていましたね。

 しかし、見た目には普通の人間にしか見えないジェラルドが「霊王の心臓」であるらしいというのはなかなか衝撃的です。あくまでも「ウワサ」レベルの話のようですが、ペルニダについての同様の「ウワサ」がずばり的中していたことを思うと、さほど的外れなものとも思えません。おそらく本当に、彼は「霊王の心臓」なのでしょう。

 ペルニダにしてもジェラルドにしても、霊王の肉体の一部であるらしい者達がそろって滅却師に与しているというのが非常に不気味です(ユーハバッハは霊王のことを「我が父」と呼んだりもしていますね)。霊王の出自や滅却師という種族自体になにか大きな秘密があるように見えるんですが、まだ情報が断片的なのでハッキリしたことは分かりません。もしかしたらこの辺の事情が「雨竜の力の秘密」にも関わってくるのでしょうか。

 ジェラルドのキャラ造型の元ネタがキリスト教神話よりも北欧神話にあるらしいのも、一つにはこの部分が理由になっているのかもしれません。キリスト教唯一神YHWHとは別の神がその起源になっているということを端的に示すために、北欧神話をモチーフに取り入れているというか。とはいえ、霊王の正体そのものがまだ謎に包まれている以上、あまり突っ込んだ解釈もできそうにありませんが。


 といったナックルヴァールの話が一区切りついたところで、倒れ伏す一護が映されて今週のタイトル。「GOD OF THUNDER」、直訳すると「雷の神」「雷神」 で、夜一の『瞬閧 雷神戦形』を指したものですね。このタイトルは、〈尸魂界篇〉で夜一と砕蜂の戦いが本格的に描かれ始めた第154話「The God of Flashをリフレインしたものだと思われます。ちなみに"God of Flash"というのは、夜一が持つ「瞬神」という異名を英語にしたものです。

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久保帯人BLEACH』18巻99,113頁)

 

ナックルヴァールの聖文字『致死量』は、やはり指定した物質を本人が摂取する必要があったんですね。セリフや解説としての言及こそありませんでしたが、実は王悦戦の時点からいかにもそのような描き方をされていましたよね。ナックルヴァールが自分の血液を舐めたのをきっかけにして王悦の体調に異変が生じた、という流れでした。

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久保帯人BLEACH』67巻11~12頁)

 これを踏まえると、『致死量』が実はかなり制限の多い能力だったことが分かりますね。それこそ今回指定した「霊子」などのように、「ナックルヴァールが戦いの場で無理なく準備して摂取できる物質で、なおかつ大量に摂取しても死にはしないような物質」でなければ意味が無いわけです(今回の"毒入りプール"でナックルヴァールは霊子を摂取しているわけではありませんが、ひとつの具体例として)。王悦のときに用いた「血液」という選択肢は、やはりかなり汎用性の高いものだったと言えそうですね。

 彼がカフェオレを常備しているらしいのも、「"毒入りプール"で相手の動きを止めた後でカフェオレを飲ませ、カフェインの『致死量』を操作して死に至らしめる」という戦い方をしたいがゆえなのかなと思います。彼は「自分のスタイルで敵を倒す」ことに強いこだわりを持っているようですが、この辺については以前登場した時にも「コッソリ殺せりゃそれがベスト!」というセリフで仄めかしていましたね。戦い方への強烈なこだわりが垣間見えるセリフでした。この点にかぎらず、ナックルヴァールは口数の多さゆえかキャラ立ちが非常に強いので見ているだけで楽しいです。「女の価値は顔じゃねえよ……オシャレかどうかだ!」というセリフも、彼のこだわり屋な面がさらに強調されていてすごくイイですね。

 

 "毒入りプール"によって一護ばかりかチャドと織姫まで無力化されたところで、夜一がナックルヴァールの背後に現れます。わざわざ瓦礫の縁にぶら下がっているのは、"毒入りプール"の範囲内に着地しないようにするためでしょう。

 かつてバンビも「そのまま首でも絞めれば」と言ったというのは面白いですね。バンビはまどろっこしい戦い方を好まず、『完聖体』を解放するやいなや無差別爆撃をおっ始めるようなやつでしたから、いかにもそういうことを言いそうです。隠密機動総司令官として暗殺などの任務に従事してきた夜一にも「戦い方へのこだわりなどは二の次で、標的を素早く確実に仕留めることこそがまず大事」という信念があるのかもしれませんね。

 そんな信念ゆえか、夜一は初手から『瞬閧』を行使します。ナックルヴァールの放った矢を平然と掴んで投げ返したあと、彼女の瞬閧の「本来のかたち」とでも言えばいいんでしょうか、『瞬閧 雷神戦形』による必殺の鬼道を放ちます。夜一の背中で炸裂する霊圧があたかも雷鼓(雷神の背後にある小さな太鼓)のような形状になることで、古式ゆかしい雷神そのものといった姿を取っています。

 最後のコマを見るかぎりではナックルヴァールが消し炭にされているようにも見えますが、彼もタダでは死なないでしょう。年内の週刊少年ジャンプ発売は今週が最後ですから、続きは年明けということになります。非常に待ち遠しいですね。

 

 ところで、『雷神戦形』を見てひとつ確信したことがあります。それは、「今後、夜一と砕蜂が同時に『瞬閧』を発動する場面があり、そのときにはあたかも『風神雷神図』のようなさまを見せてくれるだろう」という確信です。おそらくそう遠くないうちに見られるのではないかなと。それこそ今回のナックルヴァール戦で、という可能性も普通にあると思います。

 なぜかといえば、『瞬閧』は使い手によって異なる性質を帯びるらしく、砕蜂の『無窮瞬閧』は「風」の性質を帯びているということがすでに明言されているからです。夜一の『瞬閧』は見るからに「雷」の性質を備えていることが分かりますから、久保先生としては少なくとも『無窮瞬閧』を登場させた時点から準備していたことなのではないかなと思います。ただ、夜一が最初に『瞬閧』を発動したシーンで、すでに二人の『瞬閧』の性質の違いが見て取れるような感じで並べて描いたりもしていますから、もしかしたらこの頃から長らく温め続けていた設定だったのかも知れません。

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久保帯人BLEACH』18巻199頁)

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久保帯人BLEACH』61巻167頁)

 あの久保先生がわざわざ「雷神」などという非常に分かりやすい名前にしているくらいなんですから、こういった展開はかなり確実なものというか、「夜一&砕蜂による『風神雷神図』、ぜひ期待しててくれよな!」と久保先生が仰っているようにしか見えないんですよね。誰がなんと言おうと、本邦においては雷神の相棒といえば風神、風神の相棒といえば雷神で決まりなんですから。涅親子や京楽&七緒のように、今回は夜一と砕蜂の関係をより深く描写していくということなのかもしれません。期待しましょう。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。