Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第658話「Fatal Matters Are Cold」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第658話「Fatal Matters Are Cold」

 先週のヒキからそのままスタート。「自分の『致死量』を上昇させることによって免疫を獲得する=死ななくなる」というのは、シンプルな転換でありながらまさにこの能力の真髄といった感じで上手い見せ方ですよね。同じ能力を攻撃に使うか防御に使うかの違いでしかないんですが、それによって親衛隊の「不死性」まで演出してしまうのはやはりさすがだなと。こうした転換はリジェの『万物貫通』のときにも見られたものでしたね。

 ナックルヴァールの誘いに乗って再び『瞬閧』で突撃する夕四郎ですが、「霊圧」による攻撃は彼にはもう全く効かなくなってしまったようです。心臓部に矢を三本まとめて撃ち込まれましたから、これで死なないにしてもさすがにすぐには動けないでしょう。

 ところで、吐血して苦痛に歪む夕四郎ちゃんのお顔があまりにもカワイイすぎてけしからん限りだなと思うんですがこの点については皆さんいかがでしょうか。頬が赤くなっているあたりがもう完全に確信犯的というか、久保先生はこのコマの夕四郎の顔を「思いっきり可愛く描いてやろう」と意識しながら描いているとしか思えないんですよね…最高です…。

 夕四郎が倒れて再び孤立無援となった夜一に対しての「致命的だぜ」、もう最高にかっこいいですよね…。以前は自分のことを「下っ端っぽい」などと嘯いていましたが、むしろとんでもない大物感を漂わせています。

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久保帯人BLEACH』67巻13頁)

 

 今週のタイトルは「Fatal Matters Are Cold」です。直訳すると「致命的な問題は冷気である」くらいになるでしょうか。「冷気」を操る日番谷の登場がジェラルドにとって「致命的な問題」になる、ということを予感させるタイトルですね。ナックルヴァールの口癖をちゃんと絡めてあるのも面白いです。彼の「致命的」という口癖は汎用性が非常に高いですから、こういうサブタイトルでの遊びもしやすいんでしょうね。

 

 場面が変わって、ジェラルドと隊長格一行の戦いへ。やはり二つの戦闘を並行して描いていくようですね。ひよ里とハッチをはじめとした『仮面の軍勢』の面々が合流したようです。平子たちのような一部の生存者を除いてリジェに狙撃され尽くしたかと思っていましたが、周辺の細い路地などへ各自散開して逃げ延びていたのかもしれませんね。

 ジェラルドは、霊圧知覚は特別鋭敏というわけではないようです。本人の体躯が巨大化したせいで隊長格らの霊圧の相対サイズが小さくなってしまったからというのが現在の理由としては大きいのでしょうが、しかしそうしたデメリットすら彼の『奇跡』の前には意味がなくなるようです。

 「不可能を可能にしてこその『奇跡』!!」というセリフは「不可能そうな事柄を『奇跡』によって可能にしてしまう」ということを意味しますから、彼の『奇跡』は「神の尺度への交換」だけでなく、一般的な意味での「奇跡」をも引き起こすとんでもない代物と言えそうです。しかもこの能力、「それまで可能だった事柄が不可能になる」みたいなデメリットも別にありませんから、ある種の「全能」に近い状態と言えるかもしれません。こうなるといよいよ反則じみてきますね。

 ジェラルドの不意討ちから逃れたひよ里たちは、虚化して一斉に攻撃を仕掛けます。ひよ里の虚閃を素手で弾いてしまっているところからして色々と絶望的な気持ちになってきますが、ハッチ、ラヴ、リサの総攻撃もやはり全く効いていないようです。霊圧にしても体格にしても、「大きい者が強い」というのはそれだけ絶対的な事実ということなのでしょう。

 ハッチだけは仮面をつけていないというのが少し気にかかりますが、何かあるのかもしれませんね。それと「チョコレート・バー・スライダー」という、おそらくはハッチ考案のオリジナル鬼道の名前がやたらカワイイのも気になります。彼のオリジナルの術といえば〈破面篇〉で登場した『八爻双崖(はちぎょうそうがい)』がありましたが、それとはずいぶん趣の違うネーミングですから、術としての性質などに違いがあるのかもしれませんね。

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久保帯人BLEACH』26巻37頁)

 

 『仮面の軍勢』がジェラルドの盾の一振りであえなく吹き飛ばされます。体躯だけでなく霊圧の規模も巨大になっているらしいことを考えると、ジェラルドに対して有効と思われる手が本当に無さすぎるんですよね。一人ひとり潰していくことに限界を感じたジェラルドは、十三隊の面々を街ごと地上に叩き落としてしまおうと考えます。せっかくユーハバッハが創った神の国をそんな使い捨てみたいに扱っていいのかというアレもありますが、たぶんジェラルドは気にもしていないのでしょうね…。

 ここで、「満を持して」と言っていいでしょう、ジジによるゾンビ化から復活した日番谷が現れ、今まさに振り下ろされようとしているジェラルドの腕を氷結させたところで今週は幕です。

 

 個人的な見立てですが、日番谷、ここから大活躍してくれるんじゃないかなと思います。それこそジェラルドをこのまま撃破するか、死の一歩手前まで追い詰めるくらいのことはやってくれるのではないかなと。

 というのも、日番谷は〈千年血戦篇〉でゾンビ化したことで、一度「命・心を失った状態」を経ているからです。「命や心を失う(=胸に孔が空く)ことで強大な力を発揮する」というのは以前にも述べたとおりです。

 ちなみに〈千年血戦篇〉におけるこの様式美は、最後の審判が行なわれるときに死者が復活する」という聖書の記述を踏まえたものでもあると思われます。

 

 ジジの『死者(the Zombie)』によってゾンビ化させられていたときの日番谷は、普段の彼と比べて明らかに攻撃的な、常に強烈な殺意を伴った戦い方をしていました。できるだけ少ない手数で大きな傷を負わせられることを指向した戦い方です。

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久保帯人BLEACH』66巻13,15,33頁)

 こうした戦い方は、普段の日番谷とはほぼ正反対のものです。普段の彼は、自らが持つ強大な斬魄刀能力に他人を巻き込んでしまわないよう、常に配慮しながら戦っている節があるからです。

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久保帯人BLEACH』16巻28~29頁)

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久保帯人BLEACH』42巻12頁)

 従来はこういう考えのもとに戦っていた日番谷ですが、ゾンビ化による「孔空き」状態を経たことで、戦闘行為における手心というか「優しさ」とか「甘さ」みたいなものが無くなって、それによってこれまで発揮できなかった本領を発揮できるようになってるんじゃないかなと個人的には思うわけです。このあたり、虚化によって闘争本能が剥き出しになる一護などとも共通する部分はありますね(どちらも同じ「孔空き」描写なのだから当然の話なんですが)。

 そういえば日番谷は、蒼都に奪われた『大紅蓮氷輪丸』が帰ってきたときには軽い虚化状態にもなっていましたね。「孔空き」としてその本領を遺憾なく発揮してくれるんじゃないかなという期待がいよいよもって高まります。

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久保帯人BLEACH』62巻56頁)

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。