Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第613話「The Ordinary Peace」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週も『BLEACH』最新話の所感をまとめていきます。

 

BLEACH』第613話「The Ordinary Peace」

 前回のヒキで述べられた和尚の独白には続きがあったようです。「平和とは全てそういうものよ」と和尚は言っています。

彼の言葉通りに解釈すれば、「平和とは、”人間の手で神を殺せないこと”である」ということになるでしょうか。藍染やユーハバッハが霊王に楯突いたことといい、市丸が藍染を『神殺鎗(かみしにのやり)』で毒殺しようとしたことといい、一護がユーハバッハ(=YHWH)を倒そうとしていることといい、『BLEACH』には「神殺しの物語」という要素が底流していますから、和尚のこの言葉はしっかりと記憶に留めておきたいところです。それこそ〈破面篇〉の終盤では「DEICIDE(英語で”神殺し”の意)」というタイトルの回が半年近くも続いていました。遠からず、再びこのタイトルが現れたりするかもしれません。

和尚の真意についてはひとまず今後に期待するしかありませんが、和尚がこの言葉を、すでに目の前にはいないユーハバッハへ語り掛けるように独り言ちているという点には注目しておきたいですね。

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久保帯人BLEACH』55巻103,118頁)

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久保帯人BLEACH』56巻77頁)

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久保帯人BLEACH』61巻129頁)

 なぜなら、ご覧のとおり、ユーハバッハはその当初から事あるごとに「平和」という言葉を口にしているからです(上記の画像の一枚目などは、まさにユーハバッハが初めて登場したシーンのものです)。「平和」という言葉が今後どう扱われていくのか、注目しておきましょう。

 

 今週のタイトル「The Ordinary Peace」を和訳すれば、「あたりまえの平和」といったところになるでしょうか。「人間では神に勝てない」ということを「あたりまえの平和」と言いきってしまっているところに、やはり和尚の言葉の残酷さのようなものを感じてしまいます。「人間は人間らしく、分際を弁えて生きろ」とでも言われているような。

 

タイトルから場面が変わって、隊長格が集う十二番隊隊首室。前回の浦原の報告で言及されていなかった勇音・やちる・浮竹のうち、勇音と浮竹が登場しました。前回、勇音と浮竹の消息が報告されていなかったのは、「たまたま別の部屋で仕事をしていただけで、すでに合流していたから」だったようですね。やはり十一番隊士らの治療に当たっていたようです。前回を読み返してみると、治療室らしき部屋の扉がたしかに描かれていました。そして浮竹がまさかの自虐ネタ。

ところで、花太郎がいつの間にやら四番隊の第三席にまで昇進していたようですね。〈尸魂界篇〉の時点ですでに第七席の地位にあったとはいえ、副官補佐となるとえらい出世ではないでしょうか。真面目な性格の持ち主で斬魄刀『瓢丸』も非常に強力ですから、就くべくして就いた座のようにも思えますが。しかし、花太郎が第三席に就いたということは、前任の第三席だった伊江村八十千和は必然的に降格したということになりますね。方々でいろいろと不遇な目に遭い続けている伊江村ですが、強く生きてほしいところです(この戦禍のなかで生存しているのかどうかも分かりませんが・・・)。

 

そして、やはりというべきか、やちるは生存している十一番隊士らによって目下捜索中のようです。やちるを探しに行こうとする剣八を止めようとする七緒、胆の据わり方が素晴らしいですね。〈尸魂界篇〉で京楽ともども元柳斎に反旗を翻したときなどにも思いましたが、彼女は自分の中の正しさや信念(これをあえて「正義」と言い換えることも不可能ではないでしょう)に正直に行動するタイプなのかもしれません。自分よりも目上格上の相手に対してであっても、自分の信念に反することであれば毅然とした態度を取ることができる、そういう人物のようです。だからこそ、旅禍に肩入れして元柳斎へ叛く選択をしてしまうほどの豪胆さを持つ京楽の副官をやれているのかもしれません。もし彼女が「自分の正義よりも社会の正義を優先する人物」であれば、あのとき京楽から離れていたでしょうから。実際、〈尸魂界篇〉での元柳斎と京楽・浮竹の戦いでは、「守るべき正義とはなにか」という問答が為されていましたね。

 

 ともあれ、浦原はいよいよ霊王宮への出発準備を開始するようです。浦原が隊長格らに手渡した珠は、おそらくは「花鶴大砲」の打ち上げに使用する「霊珠核」に似たものか、あるいは同じものなのでしょう(「霊圧を込める」という使い方まで同じですから)。「霊珠核」の砲弾なら瀞霊壁(=平時は霊王宮を守護している隔壁)を突破できるという事実は〈尸魂界篇〉ですでに明かされていますから、問題なく霊王宮へ行けそうです。

 

 再び場面変わって、一護たち一行が霊王の御前に、ユーハバッハの許に到着しました。ここでは「運命の歯車の上で轢き潰される哀れな羽虫よ」というユーハバッハの言葉に注目したいです。これによく似た言葉が、過去のエピソードに登場しているんです。

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(『BLEACH OFFICIAL ANIMATION BOOK VIBEs.』所収「the rotator」212~213頁)

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(『BLEACH OFFICIAL CHARACTER BOOK SOULs.』所収「the sand」254~256頁)

 2006年に二冊同時刊行された公式キャラクターブックに収録された短編「the rotator」と「the sand」の一節です。ルキアが現世駐在の任務を与えられて空座町へ赴く直前の状況を、ルキア一護両者の視点から描いた二本の短編です。これらの短編では運命を歯車になぞらえ、死神であるルキアを歯車の回転子(=rotator)に、この時点ではまだただの人間だった一護を歯車に砕かれる砂(=sand)に、それぞれなぞらえています。

 逃れられない運命やどうしようもない物事の成り行きを歯車の規則的な運動になぞらえる例は古今東西で枚挙に暇がありませんが、『BLEACH』においてもそういう仄めかしがあったわけです。藍染惣右介や浦原喜助や銀城空吾といった周囲の人物の思惑に常に翻弄されるかたちで戦いに巻き込まれてきた一護は、まさに運命に轢き砕かれる砂粒のような状態にあります。しかし一護は、「運命を砕く力」を、「振り下ろされる刃」を、「真の斬魄刀」というかたちですでに手にしていますから、一護がどのようなかたちで自らを翻弄する運命を砕くのか(あるいは砕けないのか)、楽しみにしておきましょう。

 

今週の感想は以上です。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

それでは。