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『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第616話「ミミハギ様」の感想・考察

こんにちは。ほあしです。

今週の『BLEACH』の感想です。

BLEACH』第616話「ミミハギ様」

 虚圏、現世、尸魂界。全ての世界が、霊王の死によって緩やかに崩壊を始めています。啓吾と水色はどちらかの家でくつろいでいたところのようです。地震のような揺れが続いているのに地震速報などが流れていないのは、これが「地震」による揺れではないからでしょう。やはり世界は崩壊へ向かっているようです。尸魂界に残された「見えざる帝国」の一般の滅却師たち(『聖兵(ゾルダート)』と呼ばれています)の狼狽ぶりからして、彼らは、ユーハバッハについて行けば自分たちは大丈夫だと高を括っていたのでしょう。もっとも、第二の『聖別』の折りに交わされたアキュトロンとリルトットの会話を見る限りでは、『星十字騎士団』の者もその点についてはさして変わらないようですが。ユーハバッハの個人的な目的とその配下の滅却師たちの目的とが必ずしも一致していなかった(あるいはユーハバッハの方便に彼らが乗せられていた)らしいことが見て取れます。

 

 場面が変わって十二番隊隊首室。先週のヒキになっていた恋次のセリフから始まり、やはり浮竹の「神掛」がここで用いられます。

 幼い頃の浮竹が肺病による死の淵から生還し、今では死神として働けるようにまでなったのは、霊王にゆかりのある神「ミミハギ様」の力によるものだったようです。「浮竹が病弱設定なのは分かっていたけど、幼少の頃に肺病で死にかけてたなんて話は今まで聞いたことが無いよ」という方もいらっしゃるかと思いますが、この設定は実はかなり古くから準備されていたものだったりします。

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久保帯人BLEACH』18巻 巻末オマケ)

 ご覧のとおり、浮竹は幼少の頃から肺病を患っており、発症当時の症状は髪が白くなってしまうほど壮絶なものだったということが明記されています。ちなみに単行本の18巻とは、尸魂界篇の夜一vs砕蜂戦を主に収録している巻ですから、尸魂界篇の時点ですでにこの設定が準備されていたことになりますね。

 

 今週のタイトルは「ミミハギ様」でした。浮竹の身に宿った神の名ですが、依代の全ての臓腑を奪うというところから考えて「御身剥ぎ」とか「身身剥ぎ」とかいうあたりからこの名が付いたのかなという感じがしますね。「天皇のおからだ、玉体」を意味する古語として「大御身(おおみみ)」というものがあるようですから、ミミハギ様が元々は霊王の肉体の一部だったらしいことを加味すればやはり「御身剥ぎ」という表記になるのでしょうか。ちなみに「身身」という言葉には「身が二つになる=出産する」というほどの意味があるようですが、ミミハギ様の在り様には少しそぐわないように思われます。

 

 浮竹によれば、「ミミハギ様」とは、「はるか昔に天から落ちてきた霊王の右腕を祀ったもの」なのだそうです。これは霊王という「神」の成り立ちを考えるうえで非常に重要な話ではないかと思います。なぜなら、やはり霊王は当初から今のような「不自由な状態」として創られたのではなく、少なくともある時点までは「普通の人間と同じような四肢を持っていた」のであり、また同時に、「それらの四肢が何らかの理由によって切断され、地上に遺棄されたらしい」ということが推察できるからです。詳細はまだ分かりませんが、やはり霊王というのは相当に悍ましい成り行きを経て誕生したもののように思われます。

 

 また、浮竹によれば、ミミハギ様の力を全身の臓腑に押し拡げてその身の全てを捧げる儀式のことを「神掛」と呼ぶそうです。また、ミミハギ様の姿や「自らの持つ”眼”以外の全てを捧げた者に加護をもたらす」という特徴から、やはりその力は「眼」に宿っているものと考えられます。彼はミミハギ様=霊王の右腕そのものに成り代わることで、霊王の代役として世界の崩壊を食い止めようということなのでしょう。「護廷のために死なば本望」と浮竹は言っていますから、霊王の身代わりになることが自らの死(あるいは、死んでいるに等しいと思われるような状態)に繋がることを覚悟しているようです。彼のこの言葉を見ると、やはりこれらのシーンを思い出します。

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久保帯人BLEACH』65巻203~204頁)

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久保帯人BLEACH』66巻91頁)

 涅の技術力で生み出された死者の軍団「涅 骸部隊」についての言及です。「護廷に死すべし」という元柳斎の言葉を涅は引用しています。浮竹は京楽とならんで元柳斎の愛弟子ですから、彼もまたこの護廷の矜持に殉じるつもりなのでしょう。思えば、同じく元柳斎を敬愛して止まない狛村もまた、護廷のために自らの心臓を捧げていましたね。

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久保帯人BLEACH』62巻129~130頁)

 

 最後に再び場面が変わって、暗闇の奥にいる人物へ京楽が問いかけています。相手はやはり、大逆の罪人・藍染惣右介です。四十六室の許可を取り付けて、中央地下大監獄の最下層、第八監獄「無間」の入り口あたりまで降りているようです。四十六室の裁定により、藍染はそこに投獄されているからです。

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久保帯人BLEACH』48巻191頁)

 また「無間」といえば、卯の花と更木剣八が斬術の修行場として選んだ場所でもありますね。

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久保帯人BLEACH』59巻53~57頁)

 卯の花と剣八のこの会話を読めば、今回京楽が言った「ボク達、無罪の者が立ち入れるのはここまでさ」という言葉の意味するところも理解できるかと思います。これはなにも物理的に立ち入りできないとか暗いところがニガテとかいうことではありません。「無間」という名が示すとおり、ここは罪人の中でも最悪の者だけが落とされる地獄の底である、ということを暗示しているわけです。尸魂界が擁する地下監獄は、仏教における八大地獄の名前をそれぞれ冠しているらしいことは、過去の描写からも明らかですし。

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久保帯人BLEACH』37巻60頁)

 ユーハバッハが特記戦力の一つに加えているほどですから、藍染を味方につけることができれば非常に強力な援護になるでしょう。崩玉と融合したことで不死の肉体を手に入れた彼は「神」にきわめて近い存在でもあるわけですから、間違いなく今後の鍵を握る存在になるでしょう。ただ、彼を自由にしたら何を仕出かすか分からないのが恐ろしいところですが、そこについては京楽がある程度手綱を取れるように交渉なり何なりするのかなと思います。

 

今週の感想は以上です。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

それでは。