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Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第655話「THE MIRACLE」の感想・考察

BLEACH 考察 ジャンプ 感想

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第655話「THE MIRACLE」

 平子たち隊長格の一行とジェラルドの戦いにシフトするようです。地上でのイヅルvsリジェ戦や藍染の動向なども気にかかりますが、追々描かれるでしょう。

 今週のタイトルは「THE MIRACLE」です。さすがに説明不要でしょう、ずばりそのまま「奇跡」です。

 「"奇跡"とは 危機に瀕して起きてこそ”奇跡”!」とジェラルド本人が嬉しげに言っている辺りからして、彼は隊長格の攻撃をわざと手ひどく受けたのかもしれませんね。当初のジェラルドは非常に自信に満ち溢れた態度を見せていたのに、いざこうして負けてみても全然悔しそうではないんですよね。「全力で戦った結果どうしても敵わなかったから聖文字を使う」というよりも「さっさと聖文字を使えるようにあえて攻撃を受けた」みたいに見えます。実際、聖文字無しで隊長格を五人同時に相手するのはかなり無理がありそうですから、平子たちの前に現れた時点からそういう算段を立てていた可能性はわりとあるように思います。

 ジェラルドの口ぶりに危険なものを感じたらしい白哉が追討ちで止めを差します。頭部と腹部への集中攻撃というあたりに明確な殺意が見て取れますね。傷口の直接的な描写を避けていることと流血の量から判断するに、頭と腹については原型を留めないくらい徹底的に破壊しているんじゃないかと思います。ドン引きする雛森のフォローを平子がしてやってるのが面白いです。おそらくですが、雛森白哉の人柄が結構苦手なんじゃないかなと思います。〈尸魂界篇〉で一護に敗れた恋次の処遇について、怒りのあまり突っかかったりもしていましたから、その辺の事情もあって雛森から白哉への心証はあまり良くないんじゃないかなーと。そもそも戦い自体が好きじゃありませんしね、雛森は。朽木白哉という人物自体、特別に親しい人以外からはかなり「怖い人」と見られやすいタイプでしょうし。

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久保帯人BLEACH』12巻15~16,30頁)

 

 隊長格(というか最終的には主に白哉)によって徹底的に傷めつけられたジェラルドが、満を持して『奇跡(the Miracle)』の聖文字を行使します。その力は「"傷を負ったもの"を"神の尺度(サイズ)"へと"交換"する」というものでした。「奇跡」という言葉から単純に「運命を操る」系の力しか想像できてなかったので、個人的にはこれは完全に予想外です。この力によって、ジェラルドは途轍もなく巨大な(=神の尺度に則った)体躯を手に入れました。さきほど負わされたはずの傷も無くなっていますが、おそらくこれも『奇跡』の範疇なのでしょう。死体のまま巨大化しても無意味ですからね…。

 巨大化したジェラルドの足の大きさとその周りにいる恋次たちの大きさから見て、だいたい30~40倍くらいにサイズアップしているように見えます。見た目のサイズ感としては狛村の卍解『黒縄天譴明王』と同じくらいかそれより更に大きいくらいでしょうか。ジェラルドの元の身長が分からないので何とも言えませんが、彼の本来の身長を2メートルぴったりと仮定した場合、約60~80メートルくらいの大きさだと思います。デカい。

 このデタラメな大きさに物を言わせて、ジェラルドは隊長格らを次々に吹き飛ばします。最後のページにある「巨きさこそ力」というアオリがもう全てを言い表しているんですが、戦いにおいては、「大きい」ということはもう絶対的な正義なんですよね。いまの巨大化したジェラルドから見れば隊長格らはカナブンほどの大きさにしかなりませんから、圧倒的な暴力によって有無をいわさず叩き潰してしまえるわけです。白哉の『千本桜』がジェラルドの掌でこともなげに防がれているシーンなどが象徴的ですね。人間大の相手に対してどんなに猛威をふるう攻撃でも、巨大すぎる相手には何の意味も持たなくなると。

 

 で、この「圧倒的な大きさ」こそが、ジェラルドがユーハバッハから与えられた「神の力」に当たるのだと思います。ペルニダはこの世の神であるところの「霊王」の肉体そのものでしたし、リジェは「神の使い」を自称して、「最後の審判」を布告するための『神の喇叭』を吹き鳴らしました。親衛隊は全員、何らかのかたちで「神の力」を持っているものと考えられます。

 海や山や空や大地といった「あまりにも巨大で人間が抗えないもの」に神性を見出すのは古今東西に共通する精神性です。

 また、「ヴァルキリー」という名前から彼のキャラ造型の下敷きになっているであろうと推察できる「北欧神話」には、「ヴァン神族」や「霜の巨人」といったさまざまな「巨人」が登場します。ただし「ヴァルキリー」自体は人間の魂をヴァルハラへ運ぶ女神のことであって、それそのものは「巨人」ではありません。今後「ヴァルキリー的」な要素が現れる可能性は大いにあると思いますので、それについては注意しておきたいところです。

 また、北欧神話における「神」と「巨人」の違いについては結構曖昧というか、「基本的にはおおむね同じものなんだけど立場の違いによって"神"と呼ばれたり"巨人"と呼ばれたりする」みたいなすごくフワフワしたところがあるので、あまり深く考えすぎず、「北欧神話では神≒巨人みたいなものなんだ」くらいの捉え方をしておけば良いと思います。原典とされるテキストのなかでもしばしば混同されているくらいですから。

 キリスト教集団をモチーフにした『見えざる帝国』のなかに、「キリスト教化される以前のゲルマン民族の神話」であるところの北欧神話をモチーフにしたキャラがいるというのが大変皮肉っぽくて面白いですし、やはり「人種や宗教の衝突」を戯画化して描くことに久保先生は自覚的なのだということを再確認できると思います。

 

 次回以降、「神の尺度」を手に入れたジェラルドと誰がどう戦うのでしょうか。真っ当に考えれば平子あたりに活躍の機会があるのかなーと思っているんですが、「巨人」というキーワードで考えれば個人的にはチャドがすごく気になるんですよね。彼の完現術の名は『巨人の右腕』及び『悪魔の左腕』ですから、「神の力を持つ巨人」ジェラルドと「悪魔の力を持つ巨人」チャドの巨人対決みたいな展開はわりとアツいんじゃないかなと。というか個人的にチャドの能力のデザインがめちゃくちゃ好きなのでそんな感じで活躍してくれたら嬉しいなというだけなんですが。

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久保帯人BLEACH』29巻174,188~189頁)

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

それでは。