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Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第643話「BABY,HOLD YOUR HAND 6[Waiting for Love]」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です

 

BLEACH』第643話「BABY,HOLD YOUR HAND 6[Waiting for Love]」

 今週のタイトルは「BABY,HOLD YOUR HAND 6[Waiting for Love]」です。"Waiting for Love"を言葉通り素直に受け取れば、ネムはマユリから真っ当に愛される日を待ち続けていた、という感じになるでしょうか。あるいはこれは、自分の「本当の名前」を呼んでもらえる日を待望していた、ということなのかもしれません。大切な人にはあだ名ではなく本当の名前で呼んでほしく思う、というような気持ちは、それなりに普遍的なものだと思います。逆に、大して親しくもないし大切にも思っていないような人からいきなり下の名前などを呼ばれたりしたら、いっそ不気味にすら感じるでしょう。「相手の本当の名前を呼ぶ」という行為は、それ自体が一種の愛情表現になりうるものなんですよね。ネムが「眠七號」という名で呼んでもらいたがっていたのも、つまりはそういうことだったのかもしれません。

 

 『義魂重輪銃』でペルニダを粉々に撃ち抜いたネムでしたが、やはりと言うべきか、「霊王の左腕」はこの程度では倒せないんですね。力尽きて自由落下するネムを、砕けた指から再生したペルニダの神経が貫き、バラバラにしてしまいました。ネムかマユリのどちらかが命を落とす流れなのかなぁと思ってはいましたが、ネムの方でしたね。死の瞬間までマユリのことを想い続けていたというのが非常に辛い…。

 また、当たり前の話ではあるんですが、砕けた指から再生した小粒のペルニダたちは、ユーハバッハが霊王の力を吸収したときにその身から溢れ出た「霊王の力の奔流」によく似ていますね。「神を否定する者」という役割を与えられている涅がこれを降せるかどうかで、霊王の「神としての格の高さ」みたいなものを測ることができそうです。もしも涅が勝てない(≒否定できない)となると、霊王は本当に本物の「神」と言えるかもしれません。逆に、もしも涅がペルニダに勝てたなら、霊王は本物の「神」とは言えないということなのかもしれません。

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久保帯人BLEACH』68巻174頁)

 

 ネムの明確な死を目の当たりにしたマユリの脳裏に、かつて戦った十刃・ザエルアポロの幻影が現れます。幻影のくせにものすごく生き生きしていますね。一応、念の為、万に一つも誤解が起きないように断言しておきますが、このザエルアポロは、あくまでもマユリの頭のなかに現れた空想上のものであって、「あのザエルアポロ本人」が復活して霊王宮にやってきたのではありませんからね。

 というのも、あのとき戦ったザエルアポロ本人の魂魄は、虚圏でマユリに敗れて死亡した後、「地獄」に堕ちたからです。これは、『BLEACH』劇場版第4弾「地獄篇」来場者プレゼントの単行本『BLEACH OFFICIAL INVITATION BOOK The Hell Verse』に久保先生が書き下ろした短編のなかで語られていることです。また、成田良悟先生によるノベライズ版『[BLEACH]  Spirits Are Forever With You』では、「ザエルアポロは地獄の門を通過した」という事柄を間違いのない事実として扱っている場面があります。涅のゾンビとして蘇生した破面もいますが、ザエルアポロはそれらとは全く異なる運命をたどり、すでに地獄の住人となってしまっているんです。霊王宮には来られません。

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久保帯人BLEACH OFFICIAL INVITATION BOOK The Hell Verse』23頁)

 

 閑話休題。ザエルアポロの幻影が涅に語っている内容は、〈破面篇〉における彼らの戦いで涅がザエルアポロに対して語ったことそのものですね。『受胎告知(ガブリエール)』による復活が可能な「完璧な生命」を自称するザエルアポロを倒してみせることでその「完璧さ」を否定し、「完璧であることの絶望」を「科学者」の立場から語ってみせたシーンです。

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久保帯人BLEACH』35巻10~12頁)

 これらの言葉が、そのまま自分に投げ返されたというわけです。「君は彼の出来損ないの肉人形を”完璧”だと思い始めていた訳だ」という指摘が図星を突いているのは、先週までの涅の挙動を見ていれば明らかですね。「全く以てその通り」と涅自身も認めています。ネムと同等の被造魂魄を再び創りだすことがどれほど困難かということも彼は述べていました。これはつまり、涅にとっては、「現在のネム以上に完成度の高い被造魂魄を造り出すことがほとんど想定できない」ということです。まさしく涅にとってネムは最も「完璧」に近い存在だったということになるでしょう。

 そして、繰り返しになりますが、こうした「科学者としての怠慢」を涅が否定せずにきちんと認めているというのがイイですよね。それだけネムのことを高く評価していた、大事に思っていたということですから。ザエルアポロの幻影を打ち払った涅の笑顔、本当にかっこいいです。

 

 科学者としての矜持を取り戻した涅は、すでに肉片となって死亡したネムのことを悼んだりはしないんですね(少なくともいまは)。他の肉片を捨ておいて大脳だけを取り返したのは、もちろんペルニダが「過剰成長で自滅する」ことを狙ったという部分もあるのでしょうが、「『眠七號』の経験や記憶を逸失させず、『眠七號』本人として蘇らせる」ために大脳が必要だと考えているからではないかと思います。

 涅が現在のネムのことを他では代えがたい存在だとに思っていた理由の一端は、これまでに積み重ねてきた戦闘などの経験(特に『旅禍の少年』の一件以降に体験したもの)が、今後再現できるとは限らないほど貴重なものだったことにあります。滅却師の生き残りや十刃との戦いを、今後再現できる保証はありません。もちろん、新しい被造魂魄を一から造り、『眠八號』として育て直すことはおそらく可能だろうとは思います。なにしろ七號という前例があるのですから。しかし、そのやり方では、ネムがこれまで経験してきた貴重な戦いの記憶がすべて失われてしまうんですよね。眠七號とは別の魂魄なのですから当然の話です。だから涅は、あくまでも「大脳を基にして眠七號を蘇らせる」ということに拘ろうとしているのではないでしょうか。

 大脳は渡さずに”強制細胞分裂加速器官”だけをペルニダに食わせたことで、ペルニダは細胞分裂の暴走で自滅していきます。しかし、果たしてこれでペルニダを倒せるんでしょうか。そもそも左腕だけが独り歩きしているようなやつですから、どこか特定の急所を破壊すれば死ぬというようなことも無いと思うんですよね。やはりこれを倒せるとしたら、「神」に匹敵する力を持っているらしいごく少数のキャラクターだけなのかもしれません。そういった者のなかでこの戦場に短時間で駆けつけられる可能性がありそうな者といえば、いまのところは藍染くらいしか思い浮かびませんが…。あるいは、それこそ現在単独で行動している雨竜とかもありうるかもしれません。 

 

 今週の感想は以上です

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。