『週刊少年ジャンプ』2016年47号の感想
こんばんは。ほあしです。
今週のジャンプの感想です。
◆『ハイキュー!!』第227話「チャレンジャー」
影山・日向・東峰さんらの、主に精神面での成長や変化にスポットが当たった回でした。
影山の場合、スタミナ切れでトスに追いつけなくなった月島に対して「今まで通り上げたぞ 何か問題が・・・(あるのか、とでも言おうとしたのでしょうね)」という従来の王様気質な発言をギリギリで飲み込み、「選手の状態を把握する」というセッターのミッションを再確認しています。新たな「コート上の王様」は下々の者の話を(それなりに)聞き入れてくれるんですね。
今週の内容だと、田中さんの不意打ちストレート狙いのシーンなどからも分かるんですが、影山は田中さんのストレート狙いを「励ましじゃなくてマジなやつ」として評価しているわけで、結局のところ影山は「良い」と思ったことについては「良い」と言うし「ダメ」と思ったことについては遠慮なく「ダメ」と言っちゃうやつなんですよね。良くも悪くも自分の発言に制動をかけないバカ正直者です。そういう影山が「言葉遣い」によるチームコントロールを身に着けようとしているのは、なんとも頼もしく、微笑ましく、末恐ろしいなあと思います。こないだの「ゴミ捨て場で王冠かぶせ」のシーンがばっちり効いているんですねえ。暴君から名君へ生まれ変わってもらいたいものです。
日向の場合、なんと相手ブロックの黄金川を"釣り"にいったかのような振る舞いを見せています。お前そんな器用な真似ができたのか・・・という感じですが、そもそも日向&影山の「変人速攻」は、出来たてほやほやの頃からこういう「相手の注意を全力で日向に引きつけることで他の選手が活きる」という部分がその効果の一部として織り込み済みだったわけですよね。その点を踏まえると、今回のようなシンプルな陽動なら即興で出来てもさほど不思議でもないのかなとは思います。それに、これはやや穿った読み方ではあるんですが、「日向が間違いなく自分の意志で黄金川を釣った」という解釈で読むことも一応普通に可能ではあるんですよね。
というのも、日向の速攻が青根さんに弾かれた直後の再攻撃時、日向と黄金川がネット越しに対面して同時にジャンプする2つのコマに跨るかたちで「今度は 俺が止める―!!」というモノローグがありますよね。これ、直前のモノローグが基本的に伊達工サイドのものだったのと「止める」という言葉から、なんとなくこれは黄金川のモノローグなんだろうなと解釈してしまうと思うんですが、これが日向のモノローグだったとしたらどうでしょうか。「今度は(さっきスパイクを止められた)俺が(伊達工ブロックの足を)止める―!!」というようなニュアンスに見えてきませんでしょうか。この読み方をすると、日向の"釣り"が完全に計算づくだったということになるんですよね。というか、このモノローグは日向と黄金川の二人が描かれたコマにまたがったものですから、「二人ともが同じことを考えていた」という演出としても読めるんじゃないかなと思います。ここは解釈によって読み味が大きく変わりそうなところですね。
で、個人的に一番嬉しいのが東峰さんのトラウマ完全克服なんですよね。いやもちろん、以前の伊達工戦の時点でこの辺りについてはしっかり描かれてはいたんですけども。以前に対戦したときよりもさらに強力な壁になっている伊達工に対しても、東峰さんは「でも不思議と恐くない」と言っています。かつて東峰さんが伊達工に潰されて「逃げた」ときと現在とで何が違うかと言うと、「エース独りにかかる得点への重圧が軽減されている」という点があると思うんですよ。日向を中心に攻撃のバリエーションが大幅に広がったおかげで、東峰さん以外の選手にも得点力を大いに期待できるようになったのが、エースが背負わされる勝利への責任を軽くしてくれているのかなと。これ、すごく嫌な言い方をすれば「東峰さんがミスっても他のやつで補えるから問題ない」みたいな話でもあるんですが、でもまさにそれこそが「チームワーク」ですからね。烏野というチームを構成する「歯車」たちがものすごく上手く噛み合って回転し始めているような、そういう印象の回でした。
◆『僕のヒーローアカデミア』第112話「何をしてんだよ」
夜嵐くん、自分の言動を反省してますが、やはりこう、「何をしてんだよ!」みたいなものすごく抽象的な一言で目が覚めるくらいならもっと早い段階で目が覚めててほしかったなぁおじさんは、という気持ちが拭えません・・・。いや、夜嵐くんの言う「エンデヴァーの目つきが嫌い」という気持ちそのものはよく分かりますし、おそらく雄英推薦入学枠の選抜試験と思しき回想シーンで轟くんから恐るべき塩対応を受けたことも気の毒だなとは思いますが、その嫌悪感を仮免試験の最中に試験内容ガン無視でぶつけてくるというところでもう本当に「底が知れたな」という気持ちにしかならないんですよ。まあエンデヴァーへの憎悪で前が見えなくなっていたとはいえ、相手の方を見もせずに剣呑な対応を取っていたかつての轟くんの人間性もかなりアレなので、こうして夜嵐くんの不興を買っているのはまさに轟くんの「自業自得」という話でもあるんですが。
というか、これは夜嵐くんについても昔の轟くんについても言えるんですが、「止むに止まれぬ事情があるからと言って、必ずしも他人に迷惑をかけるような振る舞いをしてもよいということにはならない」という点がやや抜け落ちているように見えて、そしてこれは夜嵐くんが特に顕著だと思うんです。ですんで、今回の轟くんと夜嵐くんの衝突についてはエピソードは「感情の昂ぶりを我慢できない精神的に未熟な子供同士が他人に迷惑をかけまくりながらケンカをしている」以上のものではないよなというのが正直な感想です。まあそもそも彼らは高校1年生ですから間違いなく「子供」であるわけで、このヒーロー仮免試験というのは職業資格試験の一環なわけですから、いわば「大人の世界に足を踏み入れられるだけの資質を身につけているか」を問うものです。そういう場に臨んだ子供が子供らしさを露見させてしまうというのはある種当然想定できる流れだなとも思うんですが。
で、まあ、それをデクが一喝して目を覚まさせ、ぎりぎりのところで共闘に持ち込ませたわけですが、しかしこの流れ、別にデクの評価が際立って高まるようなアレでもないんですよね。100人いれば100人が「何をしてんだよ!!!!!!」って言いたくなるに決まっていて、デクはたまたま二人のやり取りに介入できる位置に居合わせただけです。この一連の流れで明確に株の上がったキャラというのが特に見当たらないという・・・。夜嵐くんのキャラ見せという意味合いがあったのだとしても、もう少しカドの立たない見せ方は出来たんじゃないかなーという感想です。
◆『火ノ丸相撲』第118番「僕の克ち方」
私はどうやら蛍くんをナメていたようです・・・。あえてこういう言い方をしますが、これほど「卑劣」な戦い方を選択できる胆力は本当に凄まじいものがあると思います。たしかに、ここまで露骨な嫌がらせというかおちょくり方をすれば間違いなく観衆は怒り狂うでしょうし、対戦相手の首藤くんも冷静では居られなくなるでしょう。いまの蛍くんの振る舞いは、相撲という競技そのものを愚弄しているようにしか見えませんから。「鍛錬の時間が全く足りていない小兵」にできる戦い方の、ある種の極致だと思います。
ただ、だからこそ、首藤くんには最後まで余裕を持って冷静でいてほしかったなという思いがあるんですよね。首藤くんは、ただその圧倒的な体格差を活かして普通に距離を詰めて、普通に組んで、普通に転がすなり土俵の外へ出すなりしてほしかったなと思うんですよ。だって、仮にも王者白楼高校相撲部の頂点に立っているメンバーなんですから、それくらいの精神的な余裕というか、卑怯な搦手に終始する蛍くんをいっそ憐れんでやるくらいの"心"の強さを見せて欲しかったなと。なのになんだかモノローグも吃りがちであんまり頭が回らなさそうな雰囲気がバンバン出てますから、ここから心理戦で巻き返すのはかなり厳しそうです。とはいえ、ここまで首藤くんの内心についてはほぼ触れられていないので、来週以降どう転ぶかは分かりませんが。まあでもこれはさすがに蛍くんが勝ちますよね・・・。
◆『鬼滅の刃』第35話「散り散り」
新局面への繋ぎにあたる回でしょうか。タイトル通り、共闘していた炭治郎と伊之助が分断され、三人全員が散り散りになってしまいました。蜘蛛一家のパパが異常に「硬い」らしいのはちょっと意外ですね。見た目と言動から、ただただ異常な力強さで暴れまわるバーサーカー的なアレかと思っていましたが、意外と一筋縄ではいかなさそうです。「猪突猛進」という概念をそのまま形にしたかのような伊之助独りで果たして勝てるんでしょうか。かなり危なそうだなと個人的には思います。
とはいえ、ではあのパパが十二鬼月の一員なのかとなるとちょっと微妙ではないかなとも思うんですよね。とりあえず炭治郎はそう判断したみたいですが、個人的には、あの鬼舞辻無惨が精鋭として選ぶとしたら、最低限の理性・人間性みたいなものは持った鬼なんじゃないかと思うんですよね。その点、今回のラストで炭治郎が遭遇した子供の方こそがよっぽど本命くさいなあと思います。
今週非常に良いなと思ったのは、鬼殺隊の"柱"の一員・しのぶの登場ですね。「蜘蛛の巣に蝶が迷い込んでくる(ただしその蝶は間違いなくクソ強い)」というのがなんとも洒落てるなあと。登場の仕方やつま先立ちしている姿などもいかにもひらひらと頼りなげな蝶を思わせる雰囲気ですごく素敵です。なによりめっちゃカワイイ。個人的には禰豆子よりも好きかもしれません。どこを見ているのかイマイチ判然としない瞳も好きです(これはおそらく蝶の複眼がモチーフなんでしょうね)。
◆『左門くんはサモナー』第54話「左門くんは休息も大事」
マステマ編、話数はさほど費やさずに終わる感じなんでしょうか。マステマの準備した三人の悪魔のうち、もう二人目との戦闘に突入してます。とんでもないテンポの良さです。
前回がわりとがっつりシリアスめの導入だったので、少なくともマステマ編ではギャグは控えめになるのかなーと思っていたんですが、実際蓋を開けてみるといつもどおりにギャグは健在だったので安心しました。おなじ「コメディとシリアスの折衷」的なスタイルを取っている『銀魂』の場合だと、シリアス編のときには基本的にギャグがかなり控えめになる傾向があるので、その辺のバランスはどうするのかなというのは少し心配だったんですよね。
個人的には、『銀魂』くらいのテンションでがっつりシリアス一辺倒にやるのは作品の雰囲気的にちょっと合わないのではないか(少なくとも現時点での『左門くん』でそれをやると多分どこか上滑りしてしまう)と思っているので、これくらいギャグがポンポン飛び出してくるのならむしろ安心だなと。まあお話が長く続いて「シリアスをやれるだけのドラマの蓄積」が出来てきたら、そういう完全シリアス編みたいなものも可能になってくると思うんですが。『銀魂』もそういう部分は大いにあるわけですし。
まあそれはさておくとして、今週のハイライトとしては、マステマの「だって美しいもの 困難に立ち向かう人の姿は」、左門くんの「長い階段にだ」、ルキフグスの「恋する悪魔」あたりでしょうか。
マステマは本当に人間を人間として見ていないというか、それこそちょうどわれわれ読者がマンガのキャラクターを眺めているのと同じような気持ちで人間を見ているのだなという圧倒的な断絶を感じさせますよね。しかもマステマの場合、先週の九頭龍くんに対する言動に鑑みれば「困難に立ち向かわない人の姿は美しくない」という含意が込められているのは明白なわけですから、全くもって邪悪と言うほかはありません。さすがは「必要悪」という感じですね。
左門くんのこのセリフの真意はもう演出からしてあまりにも見え透いていますが、普通に照れ隠しのウソでしかありませんよね。お前はほんまに友達大好きなんやなと嬉しくなるシーンでした。
そしてルキフグス宰相ですが、彼の場合はまず登場コマがちょっと格好良すぎて笑っちゃったんですよね。「恋する堕天使」にあえて「恋する悪魔」をぶつけるという采配自体にどれほど意味があるのかは分かりませんが、バラキエルとアンドラスについてはマステマが「地力が違う」と言っているくらいですから、単に戦力的に相応しい助っ人がルキフグスだったということなのかなと思います。しかし、だとすると、この後に控えているであろうアンドラスはどうやって戦うつもりなのかなというのが気になってくるところですが、まあ現時点ではアンドラスのカタログスペックすらまだ分かりませんから、気にしても仕方がないですね。
◆『ワールドトリガー』第162話「玉狛支部⑤」
ちょっと今回は新たに提示された情報の量が多すぎてあばばばばとなってます。とにかく気になることが多すぎる。
まずゆりさんについて。私はてっきり彼女も近界出身者だと思っていたんですが、6年前の時点でどこかの高校の制服らしき服装をしてボーダーの一員として在籍していたらしい様子を見るかぎり、彼女は本当に普通に地球の人間なのかなという気がしてくるんですよね。現在24歳のゆりさんは6年前当時だと18歳ですから、高校生だとすれば普通に計算も合います。でも先週、ゆりさんが自己紹介したときには「私は林藤支部長の「姪」なの」と、カギ括弧つきで「姪」と名乗っていたんですよね。これ、「ここでいう姪というのは便宜上の肩書に過ぎず、本当の親戚ではありませんよ」というシグナルだと思っていたんですが、どうもそうとも言い切れないのかなと思えてきました。あと地味に「玉狛支部 オペレーター」という肩書も気になります。現在、玉狛第1(木崎隊)と玉狛第2(三雲隊)のオペレーターについては栞ちゃんが兼任しているはずですから、彼女がいま受け持っている隊というのは存在しないっぽいんですよ。「本来はゆりさんが木崎隊のオペレーターなんだけどスカウト遠征中だけ栞ちゃんが代行してた」ということなんでしょうか。しかし、そうだとしたら『BBF』にその旨が記述されていても良さそうなものなんですよね(実際には特に注釈はなく「栞ちゃんがオペレーターである」と記載されています)。ゆりさん、すでに意外と謎多き女性です。
(『週刊少年ジャンプ』2016年46号295頁)
(葦原大介『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』88頁)
そして今回最大のビックリポイントはやはり城戸司令ですよね。笑顔が眩しすぎる。「「こっちの世界」と近界民との橋渡し」を目的とする旧ボーダーに所属してこんなに爽やかに快活に笑っていた彼が、今ではあんなに怖い顔をして「対近界民強硬派」の首魁になっているということは、5年前の戦闘は、彼がそうなってしまうだけの壮絶な死闘だったのでしょう。戦闘の詳しい経緯については分かりませんが、「当時のボーダー隊員が10人死亡した」という話を聞くだけでも「そりゃまあ近界民絶対殺すマンになっても仕方ないか・・・」という気持ちになりますよね。迅の師匠にして空閑有吾の盟友でもあった最上宗一が死亡したのもこの戦いのようですし(というかこの集合写真のなかにいるのでは?)、詳細が描かれる日が待ち遠しいです。
あと、「旧ボーダーは「こっちの世界」と近界民との橋渡しを目的にしていた(そして現在その理念は玉狛支部に受け継がれている)」という情報は、物語序盤で遊真が言っていた話を裏付けるものなんですよね。少なくとも有吾からはボーダーとはそういう組織だと聞いていた、という旨を述べていました。聞いていた話と全く違っていることに遊真は困惑していましたが、「有吾がボーダーを離れている間に大きな方針転換が起きていた」ということなら話が繋がります。
それと、黒トリガーについても気になります。ゆりさんは今回、「19人のうち10人は死んで そのうち何人かは黒トリガーになったわ」と言っています。最上宗一の遺した『風刃』はそのうちの一つなわけですが、その他にも複数の黒トリガーが遺されたらしいことが分かりますよね。うち一つはおそらく現S級隊員・天羽月彦が所持しているはずですが、それ以外にもまだ幾つかありそうなんですよね。「何人か」という言い方だと、一般的な言葉の使い方から判断すれば少なくとも3人くらいは黒トリガーを遺していると見て良いんじゃないかと思います。なのに現在のボーダーには2つしかない。ということは、この2つ以外の黒トリガーは、当時交戦した惑星国家に奪われたのではないかと思うんですよね。
で、ずっと前に仄めかされた「城戸司令の真の目的」というのは、それらの「敵国に奪われた仲間の形見たる黒トリガーを奪還すること」にあるのではないかと。だからこそ城戸司令は「"空閑有吾の息子"を名乗る近界民が所持している黒トリガー」を強奪すらしようとしたのではないかなと思います。「旧ボーダー創設メンバーの名前を知っていてなおかつ黒トリガーを所有している近界民」なんてあまりにも怪しすぎますから、城戸司令が「殺してでも奪い取る」くらいの決断をしたとしてもさほど不思議ではありません。
とまあこんな感じで、ワートリ過去編への期待がいよいよ具体的なかたちを帯び始めたなあと思います。本当に面白い・・・。
今週の感想は以上です。
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。
それでは。