『BLEACH』第624話「THE FANG」の感想・考察
こんばんは。ほあしです。
今週の『BLEACH』の感想です。
『BLEACH』第624話「THE FANG」
やはり京楽は、滅却師らの協力の申し出を受け入れたようですね。感情的なもの以外でこれを断る理由がほぼ皆無であり、しかも明らかに利害が一致しているわけですから、これは当然の帰結だろうと思います。利害が一致しさえすれば藍染惣右介すら躊躇いなく味方に引き込むという京楽のこれまでの姿勢とも一貫した行動だと思います。傍若無人きわまりない藍染もひとまず大人しくしてくれるようですね。こういう切迫した状況において「利害の一致」というものが持つ拘束力は偉大です。
この「死神と滅却師が手を組む」という事態について、藍染は一護こそがその因果の中心にあると考えているようです。これは、かつて一護によって自らの野望を挫かれたことに対する怒りなどを綯交ぜにした、藍染のごく個人的な見解ではあるのでしょう(「許し難い」というきわめて感情的な発言をしているところからもこれは読み取れます)が、そもそも藍染がこうした見解を持ちうるのは、彼が一護の出生の秘密を全て知っているからこそではないかとも思うんですね。
藍染は、一護が「死神と滅却師との間に生まれた子供」であることを間違いなく知っています。ただ知っているどころか、ほとんどその首謀者とすら言える立場です。
たとえ表立っては殺戮の歴史ばかりを歩んできた死神と滅却師であっても(少なくともごく限られた場合においては)共に生きていけるらしいということを、藍染は自身の見聞に基づく知識としてすでに知っているわけですね。だからこそ、死神と滅却師が共闘するさまを目にしたときに、彼はまず一護のことに思い至ったのではないかと思います。
また、「死神と滅却師が手を組む」というのは、雨竜の祖父・石田宗弦が叶えようとした悲願でもありましたね。宗弦が与することのなかった『見えざる帝国』の滅却師らがその悲願を図らずも達成してしまっているというのはかなり皮肉な話です。ちなみに、石田宗弦の願いについて語られたくだりでは、「死神と滅却師が手を組む」ということについて、以下のようなやり取りがあります。
このシーンで一護が言っているのは、たとえ死神と滅却師であっても「利害の一致」さえあれば協力できるだろう、ということですよね。感情的な議論を一旦脇に措き、彼我の「利害の一致」を優先して共闘関係を結んでいる現在の死神と滅却師らの姿は、このときの一護と雨竜が見せた共同戦線のリフレインとして捉えられると思います。以前の記事でお話しした「ルビコンの対岸」にまつわる伏線といい、「これまでのBLEACHの物語は全てこの最終章の為にありました」という久保先生のコメントがますます説得力を増しているように思います。
地上から場面が変わって、五つの零番離殿のいずれかに落着した一護たち。まさかここでコンが出てくるとは思いませんでした。2014年12月22日に「少年ジャンプ+」で公開された『BLEACH』の番外編においてコンが登場し、「本編でもうすぐ登場する」という旨を明言していましたが、こういうことだったようです。言われてみれば、たしかに一護の懐中に潜んでいるようにも見えますね。思えば、刀を打ち直してもらうために霊王宮に入ったときからコンは一護に同行していたわけですから、隠れ場所としてはごく当たり前と言えるかもしれません。
ところで、一護が失神したのは、コンの出現に驚いたことで一護がよろめき、背後にいた織姫の頭に後頭部をぶつけたからなわけですが、「織姫は石頭の持ち主である」というネタを覚えている読者が果たしてどれくらいいるのかなぁと思ったりしました。初期にたった一度だけ、それも明白なギャグ的演出のもとで出たネタだったので、ここで再びこのネタが使われたことに驚きました。
【2015年4月27日22:20加筆】
織姫の石頭ネタについて、Twitterのフォロワーさんから、「尸魂界篇の一護vs白哉戦の後の印象が強いです」というリプライを頂きました。
恥ずかしながら、このくだりのことを完全に失念していました。織姫の石頭ネタは尸魂界篇の終盤でも登場したことのあるものだったわけですから、「初期にたった一度だけ」という本文中の表現は明らかな誤りでした。お詫びして訂正します。
【以上加筆】
さて、霊王大内裏から追い落とされた一行ですが、夜一が言っている通り、事態は切迫しています。速やかに大内裏へ戻るための方策として夜一は、黒腔(ガルガンタ)による移動を提案するようです。『BLEACH』ファンが長らく待ちわびていたであろうグリムジョー再登場の瞬間がついに訪れたところで、今週は幕です。
今週のタイトル「THE FANG」は、動物の牙、いわゆる「犬歯」を指す言葉です。『豹王(パンテラ)』という、肉食獣と同じ名の刀剣解放を持つグリムジョーを形容したものでしょう。
グリムジョー再登場の布石は以前から重ねて準備されてきましたから、いまかいまかと待ち構えていた方が多いのではないでしょうか(わたしもその一人です)。
ここで浦原が言っている「いい契約」についても、来週あたりに明かされるのではないかと思います。おそらくは、チャドと織姫の修行及び黒腔の利用などについて協力を得る代わりに何らかの見返りを与える、というところだろうと思うのですが、どういう見返りならグリムジョーが動くのかとなると見当がつきません。
ただ、上に挙げた画像の6枚目、階段に立つチャドの背後には破面らしき人影が少なくとも二人見えますし、「みんな揃ってる」という言葉からしても、複数人の協力者がいるらしいということはほぼ間違いありません。チャドたちが虚圏に残された経緯から考えて、ここで言う「みんな」の中にはネル・ペッシェ・ドンドチャッカ・ハリベル配下の「3獣神」などもいるだろうと思われますから、ここにグリムジョーを加えれば破面の一大勢力が集結していると言えます。
で、浦原が彼ら破面との協力関係を結ぶためにどういうカードを切るだろうかと考えてみると、「『見えざる帝国』に囚われた虚圏の現統治者・ハリベルの救出作戦に協力する」ということであれば、それなりに強い協力関係を結べるのではないかなと思うんです。グリムジョー個人との「契約」であればこういう見返りを要求しそうには思えませんが、ハリベルを敬愛して止まない「3獣神」らが合流したそれなりの大所帯になっているらしいことを考慮に入れれば、それなりに現実的な提案ではないかと思います。もちろん、グリムジョーには個人的な思惑があって、これらとは全く関係のない契約を交わしているという線も大いにあり得ますが。来週以降のお楽しみとしておきましょう。
今回は「死神と滅却師」だけでなく、「死神と虚(破面)」の間にも協力関係が築かれていることがようやく明示されたわけで、これまで「白い勢力(=虚・滅却師)と黒い勢力(=死神)の対立」を強調して描いてきた本作が(一時的なものとはいえ)両陣営の宥和を鮮明に示したことには大きな意味があると思います。以前に述べた「生と死の狭間を描く」という話にも通底しますが、相反するもの同士の和解・宥和というものが〈千年血戦篇〉のテーマの一つになっているのではないかと思います。
ところで今回、霊王宮の障壁内部に「黒腔」による通路が開けていましたが、これはおそらく平時には不可能な芸当なのだと思います。というのも、そうでなければ藍染が謀反の時に『王鍵』の創生にこだわる必要などなかったはずであり、ただ霊王宮へ直接「黒腔」を開通させればよかったわけですから。では何故いまはこれが可能になっているのかといえば、今週1コマだけ描かれている「黒腔特有の空間亀裂を描いた杖のような道具」を利用しているからではないかと思います。あの杖には「黒腔を出現させる場所の目印」のような役割があって、その助けがあって初めて霊王宮に「黒腔」を通すことができるとか、多分そういうことではないかなと。「障壁に孔が空いている」という条件も必要なのかもしれませんし。なんにせよ、霊王宮の防衛がガタガタになっている今だからこそできることなんだろうなと思います。
今週の感想は以上です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
それでは。