Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第685話「無欠の果て」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第685話「無欠の果て」

 久々のセンターカラーですね(完結カウントダウン開始時のアレは「センターカラー」枠ではなく「衝撃の大発表」という名目の特別枠で、そのためにカラーイラストが特別に描き下ろされたという扱いでした)。晴れ渡った青空を見つめて立つ一護の図です。連載15周年の一護(イチゴ)イヤーという意味でもふさわしい扉絵だなと思います。

 

 本編の話に入りましょう。ユーハバッハ率いる「見えざる帝国」との死闘から十年が経過しているようです。浮竹の墓標に献杯して、京楽は独り語ります。双極の丘に寄り添うようにして何やら巨大な建造物が存在していますが、その立地と形状から判断するに、たぶんこれが新しい双極の磔架なのかなと思います。〈尸魂界篇〉で一護に破壊されて以来ずっと(といってもほんの2年弱ほどですが)放置されていたものが、今回の戦いからの復興を機に再建されたのでしょう。

 七緒に呼ばれて、京楽は浮竹の墓標を後にします。今しがた京楽が歩き去ったばかりの石畳の隙間から「黒い霊圧のようなもの」が漏れ出ている様子が描かれています。明らかにユーハバッハの霊圧ですね。

 

 今週のタイトルは「無欠の果て」です。このタイトルは、BLEACH第0話のルキア側として描かれた前日譚「the rotator」からの引用だと思われます。

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久保帯人BLEACH OFFICIAL ANIMATION BOOK VIBEs.』212~213頁)

 「運命が歯車だと言うのなら 我々はそれを廻す理 無欠であると信じて進む 噛み合う力の行く先へ」という一連のモノローグがそれです。死神の仕事は「運命の歯車を回転させるこの世の理の一部」であり、その理が誤りのない無欠のものであると信じて歩き続けるより他にない、というルキアの決意が表れたものです。そうして戦い続けたその果てに平和が訪れ、彼女は護廷十三隊隊長にまで上り詰めることができた。そういう意味で「無欠の果て」というタイトルになっているのだと思います。

 

 場面が変わって、内装を見るにこれは十二番隊の隊舎でしょうか。また涅が何やら暗躍しているようです。「秘裏条網」というのが何なのかは分かりませんが、字面から考えると「秘密の情報収集網」とかそんな感じのニュアンスに見えますね。涅はもともと一度戦った相手には「監視用の菌」を感染させておくという慎重さの持ち主ですが、「秘裏条網」というのもそれと同様に情報収集や異変察知を徹底するための手段の一つなのかなと。勝手に瀞霊廷全域の情報収集なんてやっていいのかという倫理面の話もまあありますが、涅がそんなことをいちいち気にするとは到底思えませんし、あるいは「見えざる帝国」が瀞霊廷内部に潜んでいたということへの反省を受けて公的に対策を講じる事にしたという流れも普通に考えられますね。

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久保帯人BLEACH』34巻162頁)

 で、涅の隣りにいるのは「眠八號」なんですね。ペルニダに敗れた七號は脳髄だけになってしまったわけですが、結局新たに造りなおしたようです。七號→八號で番号が連番になっているということは、涅は『眠』の新造に失敗することなく一度で成功したということですよね。涅の技術力の高さゆえになせる業でしょうか。

 七號が被造魂魄の限界を超えて「成長」し続けていたのは「強制細胞分裂加速器官」のおかげだったわけですが、その辺りの課題についてはある程度クリアされていたりするんですかね。見た目からではちょっと分かりませんが、涅が何の工夫や改良もせずに「ただただ七號と同じ仕様のもの」を造りなおすとも考えにくいんですよね。まあ逆に「自分の期待以上に見事に成長してくれた七號と同じものをもう一度造るぞ」という方向で涅が奮起したというパターンも一応考えられるんですが、その場合はちょっとエモさが青天井すぎて死んでしまいますね・・・。

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久保帯人BLEACH』70巻185~186頁)

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久保帯人BLEACH』71巻22頁)

 また、「ネム」ではなく「眠八號」という正式な名で呼んでやっているのもマジで最高ですね。眠計画が己の夢そのものであるということをネム本人に悟られることへの気恥ずかしさから、涅は番号呼びをやめていたわけですが、今はこうして正式な名で呼んでいます。照れくささはあるもののそれを甘んじて請け負おうと思えるようになったということでしょうか。やたら元気で声がデカいらしい八號ちゃんについて「全くお前は・・・ どうしてこうなってしまったのかネ・・・」とボヤく涅の背中が完全にパパのそれなんですよね・・・このまま一生幸せに過ごしてほしい・・・。

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久保帯人BLEACH』70巻180頁)

 

 次は十一番隊。剣八は変わらず隊長位に留まり、一角が副隊長に、弓親が念願だっただろう三席にそれぞれ昇進しています。やちるは剣八斬魄刀として姿を消したようですね。剣八「やちるの居ねェ今・・・・・・俺が道に迷う訳が無ェ!」と、やちる好きには少し寂しくなるような言い回しをしていますが、これは別に「やちるが居なくなってよかった」とかそういう意味ではなくて、ただ単に事実として「やちるのテキトーな方向指示によって道に迷わされた苦い経験が印象強く残っている」というだけの話だと思います。やちるは姿こそ消えていますが、それはつまり剣八の魂の内部へ還っていったということでもあるわけですから、いつでもどこでも剣八の戦いを見守ることができる、誰よりも剣八に近い特等席を得たのだと捉えるほうが良いと思います。

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久保帯人BLEACH』16巻135~136頁)

 迷う訳が無ェと言いつつ結局あさっての方向へ走りだした十一番隊の三人衆を、平子と雛森が見送ります。雛森はかなり大人びた顔つきになってますね。特に横顔のラインから幼さが消えています。「デモもプリプロもない!」というのは音楽好きな平子らしい言い回しですね。

 

 更に場面が変わって七・九・十番隊の隊長格が合流して一番隊舎へ向かっています。射場さんは七番隊隊長に就任したようです。崖から飛び降りて着地した拍子に石畳をバッキバキに破壊しているのが地味に面白いですね。せっかく十年かけて修繕したのにもう台無しという。右目の横に大きな傷跡が出来ているのも気になります。この十年は大きな戦いもなく平和な状態が続いていたという話ですから、この傷はそれこそ卍解修得の修行などで負ったものとかかもしれませんね。

 射場さんの心意気を聞いた日番谷乱菊に当てつけて、それが更に檜佐木へ飛び火して無駄にdisられるというこの平和すぎる茶番。雛森がそこそこ成長していたのでもしかしてと思ったんですが、どうやら日番谷は全く変化なしのようですね。ゾンビ化からの蘇生によって「寿命が大きく縮んだ」ことによる影響がここに現れているのかもしれません。ていうか拳西もゾンビ状態から蘇生できたんですね(一番隊舎ではローズも列席しているので彼もそうなんですが)。ジジによるゾンビ化の前にグレミィによって絶命させられていたので、ゾンビ化を解除しても蘇生は難しいのではないかと思っていたんですが。まあゾンビ化解除を手掛けたのは涅でしょうから、彼ならそこまで出来ても不思議ではないかなというアレはありますが。

 

 さらに場面が変わって、一番隊舎に遅刻して到着したらしい十一番隊。キレる砕蜂剣八を勇音がなだめて隊舎へ呼び入れていますが、彼女もすでに四番隊隊長に就任しているようです。妹の清音がその副官として十三番隊から四番隊に移ったようですが、彼女も回道の心得があるんですかね。まあ勇音と姉妹関係にあるわけですから、回道について高い資質を持っていても不思議ではないですが。しかし髪型を変えた勇音がカワイイです。かなりの癖毛だったはずなんですが矯正でもしたんですかね。いずれにしてもカワイイ・・・。

 こうして(涅を除いて)勢揃いした護廷十三隊隊長の面々を改めて確認すると、八番隊隊長にはリサが就任しているようです。ひよ里やハッチとともに現世に留まり続けていたはずなんですが、千年血戦による人材不足から隊への復帰を請われたのかもしれませんね。

 そして、今回の新隊長着任の儀の主役であるルキアがいよいよ登場です。結構髪が伸びていますね。隊長羽織、ルキアが着ると袖口がものすごくオーバーサイズに見えて非常にカワイイ・・・。たぶんこれくらいゆとりのある丈感が適正のはずなんですが、なんというか、羽織に「着られている」感が少しばかり漂っていますね。日番谷みたいに袖を取ってしまえばかなり引き締まった印象になりそうですが、まあこれはこれでカワイイので別に良いですね・・・。恋次白哉の副官として列席していないらしいところを見ると、もしかしたら恋次は十三番隊に移ってルキアの副官になったのでしょうか。新しい人事配属の一覧表みたいなものを見せてほしいですね・・・。

 

 さらに場面が移って、技術開発局の一室。阿近(彼も三席から副隊長になったようです)が涅を探しています。「十年前のユーハバッハの霊圧によく似てる」という謎の反応が発見された、といったところで今週は幕となっています。

 

 今週の内容は、なんというか、一つ一つの細かい描写について個別に何か言うことはできるんですが、全体としては「次週へのヒキ・前フリ」という側面が強すぎて、次回の内容を見ないことにはなんとも言い様がないみたいなところがかなり大きいという印象でした。

 それでも現時点で言えそうなことを無理やり言うとすれば、先週まで繰り広げられてきたユーハバッハとの死闘から十年が経過し、尸魂界の面々は、戦禍からの復興に苦労しながらもそれなりに平和を謳歌しているように見えます。尸魂界の安寧について大きな責任を預かる立場にある日番谷「十年 平和が保たれたって事なんだからな」と請け合っていますね。

 これを踏まえて、「平和」という概念についてのまなこ和尚の発言を振り返ってみましょう。

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久保帯人BLEACH』68巻25~27頁)

 人間ではユーハバッハに勝利することはできない、平和とはそういうことである、ということをこれ以上なくはっきりと明言しているんですね。実際、今週の内容はユーハバッハの復活あるいは生存を明らかに匂わせる、きわめて不穏なものになっています。今週描かれた幸福で平和な風景は、どう考えても「無惨に破壊されるための前フリ」でしかないと私は思います。

 霊王宮の頂上でユーハバッハが『門』を開いたときにも、「これから先の未来 お前達が最も大きな幸福を感じた瞬間を 選び抜いて殺してやるとしよう」「お前達はこれから先 幸福を感じる度 私の言葉を思い出すだろう そしてその度に 約束された死の恐怖を味わい続けるのだ 永遠に」と彼は宣言していましたよね。ひとまずの復興完了及びルキアの隊長就任というきわめて晴れがましいこの瞬間を狙って、ユーハバッハの未来改変がすでに行なわれてしまっているのではないかと思うんです。

 今週は一護をはじめとした現世の面々が全く描かれていませんから、来週はまずそちらの状況――おそらくはかなり幸福と言えるような状態にあるのではないでしょうか――を描いたうえで、それらの幸福をまとめて破壊する最悪のバッドエンドに至る、みたいな流れになるんじゃないかなと思えてなりません。

 あるいは、今週一護たちの動向が全く描かれていないのは「一護が霊王化してくれたおかげで世界の安寧を取り戻したというのがオチになっているので、そこは最後の最後まで描けない」という、いわゆる「一護霊王化エンド」の布石なのかもという考え方もできますね。ユーハバッハ撃破後、霊王を基軸とした世界のシステムはどのように再建されて世界の崩壊は防がれるに至ったのかという点に全く触れられていないのが非常に不自然ですし。まあユーハバッハ復活の兆しがあからさまに描かれていますから、たぶん普通にユーハバッハの逆転勝利ということじゃないかとは思うんですが。

 

 これ以外にも、今週の檜佐木に対する卍解するする詐欺」というイジり方にも引っかかるところがあるんです。こういうイジり方、熱心な檜佐木ファンからすると結構悲しいものがあると思うんですよね。もちろん、檜佐木については「めっちゃ優秀らしいという触れ込みで出てきたわりにはイマイチ活躍の場がなくてパッとしない」みたいな「ちょっと残念なやつ」的なノリがあって、そういうちょっと残念なところがまた可愛くて好きみたいな愛され方をしてたりもするので、ある意味イジられキャラ的なポジションにあるという部分は否定できないんです。

 しかし、だとしても、物語の大団円を迎えようかという最終回直前の回で、わざわざこうしてファンの神経を逆撫でするようなイジり方を久保先生はするだろうかと考えると、私としては「否」と思わざるを得ないんですよね。こういうイジり方ができるのは、「今後、檜佐木の卍解をきちんと描く予定があるから」なんじゃないかと。

 

 また、今週の本編最終ページの余白部分には「次号、最終回!!その衝撃を見逃すな!!」というアオリ文があります。「最終回」への期待を煽るにあたって「衝撃」というのは、考えてみるとかなり奇妙ではないでしょうか。尸魂界に平和が戻ったらしいことは明らかになっていて、現世や虚圏などについてもおそらく同様に平和が訪れているでしょう。順当に考えればあとは一護たちの近況を描いて終わりという流れになるしかないはずで、その流れは読者の目から見てもあまりにも明白です。どこに「衝撃」が差し挟まれる余地があるでしょうか。どう考えても「ここまで描かれてきた平和がひっくり返される」としか私には思えません。

 

 こういうわけなので、私としては、『BLEACH』というタイトルでの刊行はここで一区切りをつけて、誌面の移籍などでタイトルにマイナーチェンジを加えて仕切りなおしという線がやはり有力ではないかと考えます。「重大発表」というのも移籍の件なのではないかなと。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。

 

※追伸

 本日から、弊ブログのコメント欄を全面的に閉鎖します。

 理由はきわめて単純で、「不法な早バレによって知り得た未発売分のジャンプの内容をコメントしてきた人が現れたから」です。

 ごく一部の心ない流通・小売関係者から漏洩し、インターネットを通じて世界的に拡散されている「ジャンプの早バレ」ですが、そこから知り得たのであろう今週のBLEACHの内容を、先週分の記事へのコメント欄に書き込んできたアカウントがありました。本日、今週の内容を実際に読んでみて、そのコメントがやはり早バレによって知り得た情報を投下してきたのだと確信するに至りました。

 当該アカウントについてはただちに「コメント拒否」という措置を採ったのですが、今後もまた別のアカウントから同様の情報テロめいた嫌がらせを受ける危険性が否定できないため、コメント欄自体を閉鎖して防衛を図ることとします。あしからずご容赦ください。