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Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第683話「The Dark Side of Two World Ends」の感想・考察

BLEACH 考察 ジャンプ 感想

こんばんは。ほあしです。
今週のBLEACHの感想です。

BLEACH』第683話「The Dark Side of Two World Ends」
先週の続きから。ユーハバッハの黒い霊圧に飲まれるようにして、瀞霊廷が破壊されていきます。本当に瀞霊廷全体を一息に飲み込んでいるようですから、とんでもない範囲です。
満身創痍のままでユーハバッハを追ってきたことを一護は問われていますが、一護の思いとしては、ユーハバッハが述べている予想で当たらずも遠からずといったところではないかと思います。「織姫も重傷を負っていたのでそれを気遣った」にしても「悠長に傷を治している間に全てが終わってしまうかもしれない」にしても、いかにも一護が考えそうな内容ですからね。

今週のタイトルは「The Dark Side of Two World Ends」です。「二つの世界の終末の暗黒面」といった感じでしょうか。しかし、今週の内容を見たかぎりでは、「暗黒面」と言うよりむしろかなり希望を見出せるようなものになっている気がするんですよね。『完全催眠』ならユーハバッハの未来視すら欺けるということが分かり、それによって実際にユーハバッハに攻撃を加えることができたわけですから。来週以降の内容と併せて見ると意味が見えてくるタイプのタイトルなのかもしれません。

話をするユーハバッハの背後から恋次が不意討ちを仕掛けますが、ここで恋次のように見えているのは、実は藍染なんですよね。最終的な状況から逆算すると、『完全催眠』は少なくともこの時点ですでに始まっていたことになります。
先週の感想記事で、「もし『鏡花水月』が健在ならば、『完全催眠』によって未来視のビジョンを誤認させることが可能かもしれないが、『鏡花水月』は〈破面篇〉の最後に失われてしまったはずなので難しいだろう」という話をしました。
しかし今回、藍染は明らかに『鏡花水月』による『完全催眠』を使っています。催眠が解けたあとの藍染の姿を見ても斬魄刀そのものが手許にあるようには見えませんし、これは一体どういうことなんでしょうか。
そう思ってよくよく思い返してみると、〈千年血戦篇〉の序盤で、藍染の『完全催眠』能力が健在であるらしいということを仄めかされている描写が一度あったんですよね。
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(久保帯人BLEACH』58巻92頁)
「私の感覚を僅かに狂わせたか」とユーハバッハは言っています。こういう芸当は『完全催眠』でなければちょっと難しそうですよね。
そう思って〈破面篇〉のラスト、藍染斬魄刀を失うシーンをもう一度よく読み返してみると、どうも必ずしも「斬魄刀の力をまるっきり失った」というわけではないような言い方をしているんですよね。
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(久保帯人BLEACH』48巻160頁)
斬魄刀とその能力と一体となった君と同じ」と藍染は言っています。彼は斬魄刀能力を失ったのではなく、「自分自身が斬魄刀そのものになったので手許に刀を持っておく必要がなくなった」とでも言うような状態に至ったのだと解釈できるんですよね。いわば「俺自身が『鏡花水月』になることだ」状態なのかなと。その後彼は崩玉との融合によって得た力を失い、おかげで浦原の鬼道による封印が成功したわけですが、そのときに失った力は「斬魄刀能力」とはまた別のものだったのだと思います。
でも考えてみれば、「斬魄刀が無いけどその力を使える」ってのは別にさほど不自然な状態でもなさそうだなとは思うんですよね。いやもちろん、一般的な死神のあり方と比較してみるとイレギュラーもいいとこなんですけども。
そもそも斬魄刀というのは王悦曰く「死神の魂の精髄」ですから、もともとその死神の魂に内在していた力の結晶みたいなものです。それを『浅打』という媒介に「写し取る」ことで自由に扱えるように仕立て上げたものが斬魄刀なわけで、これって魂魄の純粋自然な状態とはとても言いがたいですよね。
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(久保帯人BLEACH』59巻48頁)
あるいは、日番谷が死神になるに至った経緯を描いた短編「氷原に死す」をここで思い出しても良いでしょう。
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(久保帯人BLEACH』32巻188〜189頁)
流魂街で暮らしていた頃の日番谷は、自身の内に眠る『氷輪丸』の強大な力を抑えきれず、ともに暮らしていたお婆ちゃんを夜ごと凍えさせていました。当然、このときの日番谷斬魄刀など持っていませんでしたが、斬魄刀の媒介無しに『氷輪丸』の氷結能力がはっきりと顕現していますね。
乱菊がこの事態に慌てる様子もなく、至って平静に対処しているところを見ても、魂に内在する力が斬魄刀無しで発揮されることは(日番谷のように強い力を持つ者ならなおのこと)決して珍しい現象ではないのだろうということが推察されます。これが滅多に見られない珍しい現象ならば、乱菊がもう少し動揺などしているでしょう。「藍染斬魄刀無しに『完全催眠』を行使できているらしい」という点については、この辺りを踏まえればすんなり解釈できるかと思います。

今週の内容に戻りましょう。卍解もろとも左腕を切断された恋次を庇うべく、藍染が躍り出ます。しかしこれは完全催眠による錯覚であって、実際には「恋次(に化けた藍染)を庇うべく藍染(に化けた恋次)が躍り出た」という状況なのだと思われます。一護の攻撃を通すために恋次藍染が『完全催眠』を駆使しつつ協力して動いているわけですが、ユーハバッハの言うとおり、こうした動きを藍染が即座に取っているというのが非常に面白いですね。今後何をするにもまずユーハバッハを倒さなければお話にならないから、ということだと思いますが。
しかしまあ、こうして文章化するとつくづく分かりますが、完全催眠下での戦況を正確に把握するのは本当に面倒ですね…。
ここでニセ藍染(=恋次)が破道の九十九『五龍転滅』を唱えているように見えますが、おそらくこれを実際に唱えたのは本物の藍染のほうで、われわれ読者やユーハバッハは、完全催眠によって「ニセ藍染が鬼道を行使しているさま」を見せられているに過ぎないのだと思われます。鬼道が苦手な恋次が九十番台の鬼道など使えるわけがありませんからね。
ニセ藍染の持つ『鏡花水月』がひび割れていますが、これはあくまでも完全催眠が見せている錯覚に過ぎないので、本物の藍染が『鏡花水月』を持っているという話にはならないと思います。あくまでも錯覚が見せた架空の映像ですからね。
ニセ藍染も一撃で吹き飛ばされ、その背後から一護(に化けた藍染)が迫ります。ここが本当に複雑で、藍染は「恋次に化けていた一護に化けている」という二重の錯覚を用いているんですよね。つまり今回の剣戟のなかで藍染は、恋次と一護の二役を一人でこなしていたわけです。めっちゃ頑張ってますよね。
しかしこの戦い方、完全催眠による擬似的な「変身」の使い方としては結構巧みで、「一度変身が解けたならそれは真の姿に違いない」という先入観を利用している使い方なんですよね。詐欺師の常套テクニックである「最初に見破りやすいウソを提示してわざと相手に見破らせてから『実は本当は…』と提示した情報は、その内容の真偽にかかわらず信用されやすい」という心理コントロールに近いものがあります。一度ウソを見破られた相手がもう一度同じようにウソをつくとは考えない、という意識の陥穽です。まあ今回の場合はそういう心理テクニック以前の問題で、未来視の内容そのものを『完全催眠』の錯覚で欺いていたという話でしょうから、これは本当に余談なのですが。

藍染が化けたニセ一護もユーハバッハの一撃で胸に風穴を開けられます。完全に終わったかと思いきや、今度こそ藍染は催眠を解いて正体を見せます。「黒崎一護に 視えているか」の藍染の暗い笑顔、本当に邪悪で格好良いですよね…。あの藍染がここまで死力を尽くして一護のためのお膳立てをしたというのがめちゃくちゃ燃えます。
藍染が言った次の瞬間には本物の一護の『天鎖斬月』がユーハバッハを貫いています。一護はそのまま月牙天衝を放ってユーハバッハを真っ二つにしていますが、果たしてこれで決着となるでしょうか。
個人的には、先にユーハバッハが言っていた言葉が非常に気になります。"門"をくぐる直前に言っていた「これから先の未来 お前達が最も大きな幸福を感じた瞬間を 選び抜いて殺してやるとしよう」というセリフです。
今週のサブタイを訳出したときにも言いましたが、「とうとうユーハバッハを倒せたのではないか」というのは、現状ではこれ以上は考えられないほどの巨大な希望になりますよね。そういう大いなる喜びをわざと持たせてからまとめて殺す、みたいなことをユーハバッハなら全然やると思うんですよね。彼は本当に性格が悪いので。
まあそこまではやらないにしても、まだ雨竜の出番も残っているはずですから、とりあえずこの一撃だけで完全決着というのは無いんじゃないかと思います。74巻に収録できるであろう話数も残りわずかになっていますが、果たしてどうなるでしょうか。

今週の感想は以上です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
それでは。