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Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第682話「The Two Sided World End」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第682話「The Two Sided World End」

 一護たちを降して「門」をくぐったユーハバッハのその後から。門の行き先、普通に尸魂界でしたね。尸魂界と現世とを順番に巡って潰していくつもりのようですね。しかし今週の流れを見るかぎりだとこのまま尸魂界で最終決戦というかたちになるっぽいですから、戦場が現世へ移るということはちょっと無さそうではありますよね。もちろん、ここで一護たちが勝利できたらの話なんですが。

 ユーハバッハがわざわざ藍染の居るところ(おそらくは十二番隊隊首室の付近)へ門を開けたのは何故なんでしょうね。星十字騎士団という従順な手駒すら捨てたわけですから、いまさら第一次侵攻の時のように藍染を麾下に加えるつもりだとは思えません。単に尸魂界を潰すにあたって邪魔だと判断したから優先的に潰しに行こうとしただけか、さもなくば彼の「未知数の"霊圧"」を奪ってさらに己の力を増大させるつもりかもしれませんね。

 あと、地味に気になるのが、藍染がユーハバッハを呼ぶときの二人称です。「貴方(あなた)」と呼んでいますよね。藍染が作中でこの二人称を用いた相手って、110年前、藍染が人知れず暗躍していた頃の直属の上官である平子だけだったんです。それ以外の相手に対しては「君」「お前」など、対等かそれ以下の相手に向けるべき呼び方しか用いていないはずです。つまり、どうも藍染はユーハバッハに対して一定の敬意のようなものを払っているらしいんですよね。少なくともこれまで彼が作中で対峙してきたどの相手よりも。その頭脳を一際高く評価しているらしい浦原に対してですら、藍染は「貴方」とは呼びませんでした。

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久保帯人BLEACH』37巻25頁)

 この辺り、何か事情というか理由というか、藍染がそういう態度をとるだけの何かがユーハバッハにはあるのかなという気がするんですよね。それこそ霊王の係累だからとかそういう理由なのかもしれません。それにしても、「私の尸魂界」とかいう無茶苦茶なことを当然のごとく言い切っちゃうあたりが何とも藍染らしいというか、有無を言わせない"圧"のようなものを相変わらず具えているのがイイですね。本当に好き。

 

 今週のタイトルは「The Two Sided World End」です。直訳すると「両面世界の終わり」でしょうか。"two sided"というのが「二面性のある・両面の」みたいな意味のイディオムなので。尸魂界と現世は世界の天秤を成す二面一対の存在であり、魂魄の均衡がどちらか一方に傾けばもろとも崩れ去る一蓮托生の存在ですから、その辺りも踏まえたタイトルなのかなと。

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久保帯人BLEACH』6巻52頁)

 

 場面が変わって、真世界城頂上を目指して階段を駆け上がる雨竜。その背後から矢を射掛けてきたのは竜弦でした。竜弦が持ってきたこの「銀の鏃」、あまりにも象徴的ですよね。銀というのが滅却師をある種象徴する物質である(銀筒を用いた魔術、『銀架城(ジルバーン)』という城の名前など)というのは勿論なんですが、ユーハバッハに対して撃ち込むべきものとして銀製品を用意するというのが、もう明らかに吸血鬼ハンターの作法そのものなんですよ。

 西洋には、吸血鬼や悪魔や狼男などは銀の弾丸を撃ちこむことで一撃で退治できるという謂れが古来からあります。銀という金属が持つ強い殺菌作用や砒素化合物との反応性などが経験的に知られていたことからこうした神聖性が見出されていったわけですが、いずれにせよ、今回の「鏃」は明らかに吸血鬼殺しの文脈に沿ったものと考えるべきでしょう。

 そもそも、滅却師が銀製の武器を遣って仕留めようとする」べき相手って、普通に考えれば虚しかありえないと思うんですよね。そもそも滅却師の天敵は虚なんですから、退魔の力をより強めるために銀製の武器を用いるというのなら納得できます。でも、今回の相手は滅却師の始祖たるユーハバッハです。なんでそんな相手に対して「銀の鏃」を撃つべきだという話になるのか、という点を考えると、やっぱり「ユーハバッハは虚かそれに類する存在である」という話に行き着いてしまうんですよね、個人的には。その辺りについても語られると良いのですが。

 また、これによって竜弦が叶絵の解剖を行なった理由も分かりましたね。「"聖別"にかけられた滅却師は全て 心臓に銀の血栓ができて死ぬ」とのことで、いわゆる心筋梗塞に陥ってしまうようです。このことを竜弦がいつ知ったのかは分かりませんが、叶絵の遺体を(おそらく公的な手続きを踏むことなく)勝手に解剖していたらしいところを見ると、宗弦あたりから事前に教わっていたのかなという気はしますね。

 また、「鏃を作れるほど大量の銀の血栓をどうやって集めたのか」という疑問もありますが、石田家には叶絵以外にも混血統滅却師の使用人が複数いたはずなんですよね(作中で姿を描かれているのは叶絵を含めて2人だけですが)。そして、その使用人たちにも親類縁者がいたはずです。身元がはっきりしていなければ混血統かどうかの確認すらできませんから。使用人とその一族は混血統滅却師ですから、9年前の聖別でまとめて死亡しているはずですね。たとえば使用人の数が叶絵を含めて2人だけだったとしても、その親類を全て集めれば結構な人数になるはずです。掌に収まる程度の鏃を作れるくらいの量なら十分に集められるのではないかなと思います。

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久保帯人BLEACH』60巻14頁)

 この鏃の成り立ちを聞いた瞬間、雨竜はハッと目を見開いていますね。竜弦が母の遺体を解剖していた理由を知ったからなわけですが、これによって、雨竜が父に対して抱いていた蟠りの根幹とも言える部分がそれなりに緩和されたのではないかなと思います。もちろん、雨竜だって人間ですから、幼い頃からの習い性として父への反感が半ば染みついてしまっているという部分はあるでしょうし、これだけで父子の関係がすぐさま修復されるとは思えません。ただ、関係修復の「きっかけ」には十分なりうると思います。母の解剖には理由があったのだと分かったいま、いつまでも依怙地になって突っ張り続けるほど雨竜は子供じみてはいないと思うので。竜弦の視線を正面から受け止める雨竜の顔を見て、そういう関係の変化を予感させるものがあるなと思いました。

 

 場面が変わって、ユーハバッハの創った「門」を渡っている恋次と一護。満身創痍の一護を導くかたちで恋次が先行していますね。足場を形成しているのは先行する恋次の霊圧のようですが、〈破面篇〉で一護が見せたそれに比べるとかなり安定した足場のように見えます(なにしろ勝手にボロボロ崩れたりしていません)。恋次は昔から鬼道が苦手だったと述べていましたが、それに比べてもなお酷い一護は、霊圧のコントロールに関しては本当に苦手なんでしょうね。

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久保帯人BLEACH』44巻91頁)

 また、こうして見比べてみると、いま一護たちが居るこの「門」内部の空間はどうも黒腔っぽいんですよね。本職の破面が黒腔を開いた時とは門の開き方が異なっていますが、これは黒腔であると考えていいんでしょうか。だとすると、黒腔を開くことができたユーハバッハはやっぱり虚的な存在なのではという話に・・・。気になる・・・。

 

 一護の問いかけと恋次の答え、もう「最高」と言うほかありませんね。ルキアとの関係修復について恋次がこうも直接的に語るのはたしかこれが初めてだったと思います。まあほとんど言わずもがなで理解されてると思うんですけどね、この辺は。

 ルキアが朽木家に引き取られて以降、恋次ルキアと距離を置き続けていたんですね。流魂街でたまたま出会っただけの「家族のような集まり」ではなく、正式な手続きを踏んだ正真正銘の「家族」をルキアはようやく得られた(しかも相手は尸魂界随一の大貴族)のだから、根無し草の自分はおとなしく身を退くべきだと。

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久保帯人BLEACH』11巻197,204,206頁)

 そうして耐え忍ぶこと40年あまり。やっとの思いで副隊長に任じられたのを機に、遠ざかっていた関係を修復しようと恋次は思っていました。現世駐在の任務からルキアが帰還したときに隊長格への着任を明かし、盛大に驚かせてやろうというオマケ付きで。

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久保帯人BLEACH OFFICIAL CHARACTER BOOK VIBEs.』211~212頁)

 しかし、この目論見が叶うことはありませんでした。ルキアは現世で行方不明になり、帰って来なかったからです。恋次が当初一護に対してぶつけていた強烈な敵意は、この辺りにも理由があったんでしょうね。とはいえ、結局は行方不明の原因を作った一護のおかげでルキアとの関係修復に至ったわけですから、雨降って何とやら的な話ではあるんですが。

 こうした経緯で長らくルキアと疎遠になっていたのが、ルキア救出作戦のなかで一護が白哉を破ったことで関係に変化が起きたんですね。白哉ルキアは今度こそ「兄妹」としての関係を築いてゆくことになり、恋次にとっての白哉も、「倒すべき宿敵」から「超えるべき目標&ルキアを全力で庇護してくれる兄」くらいのノリに変わりました。恋次にしてみれば、一護はどれだけ感謝してもしきれない大恩人ということになります。

 だからこそ、恋次は一護を助けるんですね。この辺の経緯は、読者であればほぼ当たり前の事実として知っていたことではありますが、恋次本人が一護へあらためて語るというのが非常にアツいですね・・・。

 

 再び場面は尸魂界へ。ユーハバッハが藍染の拘束具を破壊しました。「私は常に 私を支配しようとするものを打ち砕く為にのみ動く」というセリフがすごく藍染らしいなと思います。霊王への叛意についてもこれで説明できますからね。自分は何者による支配をも甘受しないという表明なわけですが、こうした思想を端的に言い表した言葉が「私が天に立つ」だったんでしょうね。

 また、ここで「利害」について触れているのも気になります。京楽の働きかけに藍染が乗って地上に出てきたのは、京楽と藍染のあいだに何らかのかたちで「利害の一致」があったからなんですよね。他人による支配を許さない藍染にとっては、ユーハバッハという支配者と戦えること自体が「利」になるのだと考えることはできそうですが、そういうことなんでしょうか。

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久保帯人BLEACH』68巻119頁)

 一歩遅れて一護と恋次も到着し、背後からユーハバッハに斬りかかります。まあ未来を視通せる相手に対して不意討ちなんて機能するはずもないですし、未来を改変できる相手にはもう何をやったって無駄としか考えようがないんですけどね・・・。月島の助力によって修復された『天鎖斬月』も、再びヒビを入れられてしまいます。

 これは以前にも少し触れたことですが、『全知全能』による未来改変の恐ろしさって、「対症療法的にしか戦えなくなってしまう」という点だと思うんですよね。なぜなら、「未来」に手出しすることができるのはユーハバッハだけなので。彼以外の者は未来が「現在」の位置にやってくるまでその内容を知ることすらできない(当たり前なんですが)わけで、つまりユーハバッハの未来改変に対して前もって対策を講じるというのは絶対に不可能なんです。だからこそ、こうして問答無用で斬魄刀を折られてしまうわけで。

 となると、やっぱり雨竜の出番なのかなと。一護とユーハバッハの間で起きた「力の移動」を逆転させてユーハバッハを無力な赤ん坊に戻し、しかるのちに銀の鏃で止めを刺す、という。まあ先週も言いましたけども。そういう流れが整いつつあるのかなーという感じがするんですよね。問題はどうやって『完全反立』をぶち込むかという一点のみだと思います。

 で、ふと思いついたんですが、もし藍染の『鏡花水月』が手許にあれば、ユーハバッハの「未来視」に「錯覚」を起こさせることができるんじゃないかなーとか。ユーハバッハの『全知全能』は「未来を視る」という言い回しを常にしていて、「眼」がその能力の象徴にまでなっているくらいなので、じつは『鏡花水月』が掌握できる「五感」の範疇に収まるんじゃないかなと。藍染が偽りの未来を「視せて」いるうちに、雨竜が『完全反立』を発動する、という。まあ〈破面篇〉の最後で藍染斬魄刀を失っているのでかなり望み薄ではあるんですが、そういう流れも無くはないかなーなんて。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。