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Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第675話「Blood for My Bone」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第675話「Blood for My Bone」

 雨竜とハッシュヴァルトの問答から。雨竜の霊子兵装、先週もチラ見せしていましたがめちゃくちゃカッコいいですね。普通の弓を2本クロスさせたようなデザインですが、久保先生はよくこんなのを考えつくなあと感心します。雨竜は滅却師として「弓使い」であることに誇りを持っていますが、彼の弓は結構頻繁にデザインが変わっているんですよね。ディテールにはあまりこだわりが無く、「とにかく弓矢であればOK」という感じなのかなと思います。

 ハッシュヴァルトは「自分が借りものの『全知全能』を使って未来を視ても、それは完全なものではない」という旨を明言します。すでに雨竜が指摘していたことではありますが、言質を取れましたね。ただ、今回のハッシュヴァルトの口ぶりだと「ユーハバッハが『全知全能』を使って未来を視た場合は完全なものになる」ということにもなりますから、やはりユーハバッハを倒すすべなど無いのでは・・・というところに戻ってきます。

 とはいえ、最も注目すべき発言はやはり「『全知全能』の真の恐ろしさは"未来が視える"事では無い」のほうだと思います。すでに明かされている「未来を視て、そのなかで知った全ての力を味方につける」という能力だけでもアホみたいに強力なんですが、まだ隠し種があるんですね。バトル漫画としても、「未来視よりもさらに恐ろしい能力」というのはちょっと想像がつきません。おそらくは未来視と同様、「神」というコンセプトに沿った能力だろうとは思うんですが。

 そして相変わらず「秤」に関係する言い回しを好みますね、ハッシュヴァルト。彼の『天秤』能力の開帳が楽しみです。ここまで露骨に「天秤」を推してくるのであればさすがにもう間違いないでしょうし。

 

 今週のタイトルは「Blood for My Bone」です。直訳すると「私の骨のための血」です。ここまで愚直な訳だとさすがに意味不明ですが、要は、「一護が内なる虚を叩き起こすためにあえてユーハバッハの攻撃を受けて血を流した」ことに寄せたタイトルでしょう。虚の仮面は生物の「骨」がモチーフなので、ここでは内なる虚のことを"bone"と表現したのでしょう。「虚の仮面が骨をモチーフにしている」という話は、先日発売された『ジャンプ流!』の久保先生特集号に付属するDVDのなかで久保先生ご本人が明言されていましたから、見立てとしては間違いないものと思います。まあ見るからに骸骨感丸出しですしね。

ジャンプ流!DVD付分冊マンガ講座(4) 2016年 3/3 号 [雑誌]
 

 

 場面は一護・織姫とユーハバッハの戦いへ移ります。傍目には明らかに冷静ではないように見える一護を止めようとした織姫ですが、その表情を間近で見て、彼は大丈夫だと"気づいた"んですね。織姫はもともと、一護の表情の変化に対してはきわめて敏感に気がつく人物ですから、こうした言外のコミュニケーションができるのも当然ではあります。なにしろ、真咲の命日が近づくと一護が見せるようになる「偽物の笑顔」のことを、彼女は一見して見破ったくらいです。10年以上の長い付き合いであるたつきですらこれに気がつくまでに3年かかったほどですから、織姫がいかに一護をよく見ているのかが分かろうというものです。

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久保帯人BLEACH』3巻20~21,26頁)

 一護の狙いを知ってからこのやり取りを見てみると、ユーハバッハが一護に投げかけている挑発めいた問いかけも全部空回りしちゃってるんですよね。一護の狙いを見抜けないまま、「無策で突撃しているように見える」という釣り針にまんまと引っかかってしまっているわけですから。フリースタイルバトルで言うところの「disが刺さってない」というやつです(なんのことか分からない人は『フリースタイルダンジョン』を観ましょう)。

 ただ、ユーハバッハのセリフの後半の内容については、一護の「ヒーロー」としてのあり方に関わってくるのかもしれないなと思います。つまり、「一護は"世界中のすべての人間"を護る気があるのか無いのか」「仮にその気があるとして、ではそのために自分の命まで捨てる気はあるのか無いのか」「仮に命を捨てる気が無いとして、ではどうやって霊王が死んだ世界を建てなおすのか」とか、そのあたりの話です。「世界を護るために戦って死ね」というのは、今すぐにではなく、ユーハバッハを倒したあと、いざ世界を建てなおそうとなった時にじわじわ効いてくる類の問いかけなのかなと思います。

 で、これはわたしの個人的な読みなんですが、一護は「世界のために命を捨てる」ということはしないんじゃないかなと思うんですよね。いわゆる「一護霊王化エンド」的な予想がこれに当たると思うんですが、とりあえずその方向は無いんじゃないかなと。この議論については先日ツイッターで一頻り垂れ流したものがあるので、ここではそれを貼り付けるにとどめておきます。ツイートの流れとしては、先週の感想記事で言及した「境界の破壊者」云々という話から逸れていった感じです。

 とまあこういう感じで、「一護は霊的に全能で、崩玉に近いような性質を持っているっぽい」というところを膨らませたうえで、彼はどこからどこまでの人々をどういう方法で守ろうとするだろうか、という辺りを考えての与太話でした。あまり真に受けないように。

 「ヒーローは何を守るものなのか」というヒーロー概念そのものの再定義はそれこそ『ヒロアカ』が取り組んでいる一大テーマだったりもするわけですが、同じマンガ誌の新旧看板マンガが同じテーマを同時に取り上げているというのは非常に面白い状況だなと思います。いつの世もこのテの議論は尽きないということなんでしょうか。

 これ以外にも『BLEACH』と『ヒロアカ』はテーマ面で呼応するところがわりと散見されるので、併読するといろんな発見があると思います。たとえば轟くんとエンデヴァーの確執は「血の繋がり」が子孫にもたらす呪縛に焦点を当てていますが、あれなんかは、純血統滅却師という血脈に苦悩させられた竜弦あたりの話にほとんどそのままスライドさせて読めてしまうんですよね。あとはラスボスと目される「オールフォーワン」の能力造型がかなりユーハバッハに近い感じだったり。まあ別にだからといって「ヒロアカはBLEACHの影響を受けているんだ」とかアホみたいなことを言う気は更々なくて、どちらの作品もそれだけ普遍的で語りがいのあるテーマに手を付けているという、ただそれだけのことなんだと思います。間口の広いテーマ設定って商業的な観点からも大事ですし。

 

 話題が大きく逸れました。戻りましょう。

 ユーハバッハの攻撃をあえて受け続けたことで、一護は目論見を成功させます。鋒の変色に気づいて一旦退いたとき、一護が織姫にきちんとお礼を言っているのがイイですね。少し言葉を補って言えば「何らかの狙いがあるのだと察してくれてありがとう」という感じになるんだと思います。一護が「作戦があるからちょっとだけ好きにさせてくれ」的な示し合わせなどをせずに突撃し続けたのも、「織姫なら何も言わなくてもきっと気づいてくれるだろう」という信頼があったからこそなのだと思います。仲間や友人を誰よりも強く信じ続ける、一護らしい動き方だなと。

 で、一護の目論見は滅却師の霊圧をブチ込んで内なる虚を叩き起こすこと」だったわけですが、これって〈死神代行篇〉で一護が大虚を撃退したときに起きたこととほぼ同じなんですよね。

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久保帯人BLEACH』6巻123頁)

 このときは大虚による『虚閃』を受けたことで一護の内なる虚が呼び覚まされたわけですが、今回受けたのは滅却師による攻撃でした。なぜ滅却師の攻撃を受けて虚の力が目覚めるんだという疑問がここで出てくるんですが、これにはとりあえず二つの解釈があるかと思います。

 ひとつは、滅却師の攻撃は虚にとって極めて痛手になるため。滅却師の霊子兵装は虚を消滅させることに特化していますから、そうした苦手な攻撃をやめさせるためには腰を上げざるを得ない、という流れです。

 もうひとつは、一護の中の内なる虚が、一護の中に棲むユーハバッハの魂の欠片とあわせて「二人で一人」であるため。ユーハバッハの力に触れることで、虚でもありユーハバッハの魂の欠片でもある一護の斬魄刀が目覚める、という流れです。こちらのほうが、虚閃に「共鳴」して覚醒したという流れには近いように見えますね。

 

 どちらの流れにしても、一護が新たな力を開帳したのは確かです。斬魄刀への呼びかけなどが無く、目が黒く染まったうえに仮面紋(エスティグマ)まで現れていることから、これは卍解ではなく虚化に近いものだと思われます。ただ、肝心の「仮面」がどこにも見当たらず、ツノが生身から直接生えているというのが非常に気になりますね。虚の仮面というのは「その人が亡くした中心(こころ)で出来ている」ものなので、いわばその人の心・魂そのものなわけです。それがどういうわけか現れない。

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久保帯人BLEACH』50巻16頁)

 これ、たぶんなんですが、いまの一護は「仮面そのものが斬魄刀になっている」のではないかなと思うんです。すでに斬魄刀として形を得ているので、仮面としては現れることはしないという。このように考えるのには一応理由があって、一護が新たに得た二刀一対の『斬月』の形状は、それぞれ「虚の仮面」と「滅却師の弓」をベースにして、刀剣として仕立て直しているように見えるんですよ。大きい方が仮面ベース、小さいほうが弓ベースです。

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久保帯人BLEACH』61巻34~35,36頁)

 大きい方の『斬月』は、刀身と柄の両方に「透かし」がありますよね。この透かしのかたちって、一護が虚化したときにまとう仮面の眼窩部分にそっくりじゃありませんか? あの仮面が巨大化して刀の形に変化したようにすら見えてきます。小さい方は、一護が柄として持っている部分が弦に当たり、弧を描いている刃の部分が弓本体に当たるのではないかなと。

 実際、一護が初めて二刀一対の『斬月』を手にしたシーンでは、右手に持つ大刀の方に内なる虚が、左手に持つ小刀の方に内なるユーハバッハが描かれていますし、今週、一護が虚化して白く染まったのも右手側の大刀だけでした。虚と滅却師の力が左右の刀に分かれて宿っているのだとすれば、大きい方が虚、小さい方が滅却師という分かれ方と考えて良いだろうと思います。

 

 最後に、今回の白い姿へのフォルムチェンジについて、一年ちょっと前につぶやいてたことが結構バッチリ的中してたのでそこだけ自慢させてください。ただまあ、これらのツイートは一護の新しい「卍解」のデザインについて考えてたときに出たものなので、厳密には別の話ではあるんですけどね。今回のアレはあくまでも「虚化」っぽいので。

 「分かたれし白と黒が一つに――!!」というアオリがラストに付されていますし、これ、近いうちに"Black and White"のサブタイが来るんじゃなかろうかとすごく期待してます。こういう流れを見ると、やっぱり一護は真っ白でも真っ黒でもないマージナルマンであって、世界の境界を破壊することで世界を救うんじゃないかなという方向へ想像が膨らんでしまうんですよね。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。