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『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第672話「Son of Darkness」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第672話「Son of Darkness」

 白哉の"一咬千刃花"から。ジェラルドの頭部は完全に破壊され、それに続いて上半身も自壊していきます。日番谷の完全な卍解は、やはり持ち主への負担が大きいようですね。これまでの戦いで日番谷がこの完全な卍解を見せまいとしていたのも、単に勿体ぶっていたのではなく、肉体への負担が大きいためにそう簡単には使用できなかったからなのでしょう。

 しかし、ジェラルドはやはりまだ倒れませんね。今度こそ「肉体」と呼べるものを失って、「光の巨人」としか言いようのないものになってしまいました(ウルトラマンに非ず)。『奇跡』とは「"傷を負ったもの"を"神の尺度"へと"交換"する」能力ですから、この姿は、全ての肉体を「神の尺度」に置き換えた、神そのものとでも言うべきものなのでしょう。涅父娘vsペルニダ、京楽・七緒vsリジェに続いて、またしても「神殺し」ということになりそうです。

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久保帯人BLEACH』70巻144頁)

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久保帯人BLEACH』71巻171頁)

 思えば、ナックルヴァールについては「神」と見なせるほど凄まじい演出は結局見られませんでしたね。「あらゆる攻撃に対して免疫を得ることで無効化できる=事実上の不死である」という能力自体は神性の顕現と見ても良さそうですが、彼以外の親衛隊も全員何らかのかたちで不死性を具えていますから、その点だけでは少し弱いようにも思えます。

 そこで思ったんですが、ナックルヴァールは親衛隊のなかでただ一人、「普通の星十字騎士団のなかから土壇場で親衛隊に選ばれた者」なんですよね。彼以外の三人は、ユーハバッハが霊王宮で彼らを紹介するまではそもそも戦場に出てすらいなかったようですから、同じ親衛隊といえども少し「格」が違うというようなところがあるのかもしれません。

 そもそもナックルヴァールによれば、リジェは「ユーハバッハが最初に力を与えた滅却師ですし、ペルニダとジェラルドなんて「霊王の肉体の一部らしい」とのことですから、なんというか生命としてのステージ自体がちょっと違う感じすらするんですよね。そういうポテンシャルの違いみたいなものが彼らの「神性」の強さに現れていた(だからナックルヴァールはあんまり「神」っぽさを押し出さないまま終わった)のかなーとか、今にして思います。

 実際、ナックルヴァールは自分以外の親衛隊に対しては必ず敬称を付けていました。明確な上下関係というほどではないにせよ、やはり若干の立場の違いみたいなものはあったのでしょう。

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久保帯人BLEACH』72巻63頁)

 

 今週のタイトルは「Son of Darkness」です。直訳すれば「闇の息子」。今週のユーハバッハのセリフ「我が闇の子よ」をそのまま英訳したものですが、これはそもそも「見えざる帝国」の第一次侵攻の際にユーハバッハが一護に言った「闇に生まれし我が息子よ」というセリフを受けたものですから、そこから続いている言い回しですね。

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久保帯人BLEACH』58巻97頁)

 一護の「闇に生まれた子」という部分については、以前にも少し触れたことがありました。「光の王子」であるところの雨竜とはまるっきり対になるフレーズですから、まあそのように描かれるのかなと思います。

 

 場面が変わって、ユーハバッハの夢のなか。王座の間にやって来た一護を前にして、ユーハバッハは抵抗もせずあっさり両断されてしまいます。夢のなかの一護はえらく懐かしい恰好をしていますね。『斬月』の形状が変化していませんから、これは〈破面篇〉までの装いです。対するユーハバッハも、髭こそ伸びているものの、霊王を吸収する以前のごく普通の人間の姿をしています。二人の姿が現状とは明らかに食い違っていますから、これは別にユーハバッハの未来視によるものでもないだろうと思います。本当に単なる「悪夢」なんでしょう。

 色々な意味で人間離れしているユーハバッハですが、彼も眠っているときには夢を見たりするんですね。なんだか妙に「人間っぽい」というか、あまり「神」らしくはないなとぼんやり思いました。いや、ユーハバッハという名前といい、『全知全能』といい『聖別』といい、彼というキャラクターはどう見ても明らかに「神」そのものとして描かれているんですけど、こういう人間的な面が見えると、やっぱりこの世界真正の「神」になるべくして生まれた人物だとはちょっと思えなくなってくるんですよね。彼の出自が分かれば、その辺りの違和感についても分かるのかもしれません。

 

 また場面が変わって、城内で交戦する雨竜とハッシュヴァルト。朝日の光が差し込んでいて、なおかつハッシュヴァルトの眼も元に戻っていますから、夜明けを境にして再び力の交換が行なわれ、ハッシュヴァルトには"B"の聖文字が戻ったのでしょう。

 "B"がどういう能力なのかは分かりませんが、少なくとも『全知全能』よりは「戦いに向いている」とのことです。霊子兵装を作れないはずのハッシュヴァルトが神聖滅矢のような攻撃を仕掛けているのも、おそらくは"B"の能力によるのかなと思います。

 「拮抗した天秤を傾ける」というのが彼の役目だそうですから、たぶん"B"とは"balance(天秤)"の"B"で、内容としては「相手の力を奪う(ことで彼我の力の拮抗を崩す)」能力なんじゃないかなと勝手に思っています。滅却師の標準性能であるドレイン能力はそれだけでも強力な攻撃になりえますし、「力を与えることしかできない滅却師」であるハッシュヴァルトが聖文字を賜ったことでようやく一般的な滅却師と同じだけの力を得られたのだという流れになるのも面白いですし。まあこの部分についてもいずれ明かされるでしょう。

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久保帯人BLEACH』62巻156,168頁)

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久保帯人BLEACH』70巻17頁)

 

 さらに場面が変わって、一護と織姫がユーハバッハの王座の間にたどり着きました。一護「頼むぞ」という言葉ですが、織姫にとってこれほど嬉しいものはないよなぁと思います。ここで示された三つのシーンはいずれも、織姫が一護を守りたい」「一護に無事でいてほしい」という思いを強く意識しているシーンなんですね。

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久保帯人BLEACH』7巻122~123頁)

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久保帯人BLEACH』8巻17頁)

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久保帯人BLEACH』19巻121~123頁)

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久保帯人BLEACH』32巻94,100~104頁)

 ただし、その願いはこれまでずっと叶えられないままでした。命のやり取りをするには甚だ不向きな性格や、単純な戦力としての頼りなさなどによって、織姫はずっと一護に守られてばかりいました。「やっと黒崎くんを護って戦える」というのは、これまでの無念、無力がようやく報われるのだという思いによるものなんですね。

 また、一護「防御は任せる」とも言っていますから、役割的にも「一護を守る」というところにぴったり一致します。たぶんこのセリフは、「他人を攻撃する」という行為を織姫には極力させたくないという一護側の気遣いの表れでもあるんだと思います。織姫は〈死神代行消失篇〉ではかなり攻撃的な戦い方も見せていましたが、彼女の性格を思えば、こういった行為をすすんでやりたがるとは考えにくいですし。

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久保帯人BLEACH』51巻162~163頁)

 というわけで、一護と織姫という、「神」に匹敵する力を持つらしい二人がついにユーハバッハの元にたどり着きました。彼らがどうやってユーハバッハと戦うのか、またその戦いのなかで何が語られるのか、すごく楽しみです。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。