Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第668話「BIGGER, FASTER, STRONGER」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第668話「BIGGER, FASTER, STRONGER」

 先週の続きからですね。ジェラルドの持つ「希望の剣」が刃毀れしたのに呼応して、剣八の腹部が真一文字に斬り裂かれました。ジェラルドによればやはりこれも『奇跡』の一端のようで、どうも彼の剣には「傷つけられると相手にも傷を与える」的な性質があるようです。ジェラルドは『奇跡』の能力に「民衆の想いを形にする」というコンセプトがあることを述べていますが、実際、第655話でジェラルドが最初に巨大化する直前、表情ひとつ変えずにジェラルドを惨殺した白哉に対して平子が「おー怖」と言っているんですね。「破壊できぬ我が体躯は民衆の"恐怖"で巨大なものとなり」というのは、この点について言っているのかなと。

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週刊少年ジャンプ2016年2号431~432頁)

 また、このシーンでは、雛森もまた白哉の徹底的な攻撃に対して気後れした態度を見せていました(平子はこれを窘めていましたが)。こうした周囲の人間(=民衆)の気持ちに感応して揮われるのがジェラルドの『奇跡』という能力のようです。 

 

 この「周囲の人間の気持ちに感応する」という性質については、もうひとつ気になる点があります。「崩玉」の能力によく似ているんですよね、これ。

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久保帯人BLEACH』46巻112,114頁)

 崩玉と融合した藍染曰く、崩玉とは、「自らの周囲に在るものの心を取り込み具現化する」能力を持つ物体であり、それ自体が「意志を持っている」のだそうです。ジェラルドが言う「民衆の想いを形にする」という『奇跡』の性質と大変よく似ていますよね。

 しかもナックルヴァールによれば、ジェラルドの聖文字『奇跡(the Miracle)』の能力はユーハバッハから貰い受けたものではなく、彼が最初から持っていた能力に対して便宜的にアルファベットを当てはめたものであり、また彼自身が「霊王の心臓」ではないかと噂されている、とのことでした。

 「崩玉」と「霊王」には何らかの関係があるのではないかという推量は昔からありましたが、ジェラルドの正体を契機にしていよいよ繋がってくるのかもしれませんね。一番シンプルな考え方でいけば「崩玉は霊王の肉体を基にして創られた物体である」という感じでしょうか。崩玉をその手で創りだした浦原と藍染はどちらも「霊王の正体を知っている人物」ですから、この二人はそれぞれ何らかの経緯で霊王の肉体の一部を入手したことがあり、そこから崩玉を創ったのかも、とか。こういう線で考えると、「霊王の心臓」であるらしいジェラルドが崩玉によく似た能力を持っていることとも綺麗に繋がりそうです。

 まあ少ない情報で考え始めたらきりが無いのでここまでに留めておきますが、崩玉については別の記事でまとめようかなと思います。そのときには、なぜか一護だけが持っている「刃を交わした相手の心を感じることができる力」についても触れることになるかと。一護のこの力もまた、崩玉によく似ているんですよね・・・。

 

 剣八とジェラルドの舌戦は、まさしく売り言葉に買い言葉の子供の口喧嘩レベルですね。脳筋のなかの脳筋みたいな二人ですから別にこれで良いとは思いますが、剣八については人としてちょっと心配になる部分はありますね・・・。おまえよくそれで今まで隊長職が務まってきたなと。事務作業は一角あたりが頑張ってるんですかね・・・有能秘書・・・。

 

 今週のタイトルは「BIGGER, FASTER, STRONGER」です。「より大きく、より速く、より強く」ですね。「我は最大・最強・最速の滅却師!!」というジェラルドの言葉をそのまま持ってきています。このシンプルなタイトルも、剣八やジェラルドの脳筋っぷりを強調しているようで面白いですね。あと今週の扉絵はめちゃくちゃカッコいいですね。ジェラルドの威圧感と剣八の躍動感、素晴らしいです。タイトルの配置まで含めて眺めると映画のポスターみたいな趣も少し感じられる絵ですが、この構図には何か元ネタがあったりするんですかね。

 

 ジェラルドの巨躯に対して真正面から挑む剣八、あまりにもタフですね・・・。この体格差で斬り合いが成立していること自体が異常すぎます。まあ〈破面篇〉でのヤミー戦といい、グレミィ戦での隕石斬りといい、剣八には大きさなんて関係ないらしいのは分かっていたことですが・・・。そしてまたしても「すばしこい奴だ!!」という同じ言葉による応酬。あまりにも似た者同士すぎますね・・・。

 日番谷の「群鳥氷柱」による援護を、やはりというべきか剣八自身が止めます。剣八の場合、誰かに加勢されても「戦いに水を差された」としか思いませんからね。いまの剣八は強敵を前にした"けだもの"であって、だから白哉「道理の通じる相手ではないのは更木も同じ事」と完全に諦めているんですね。"けだもの"には人間の道理など通用しませんから。

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久保帯人BLEACH』35巻30頁)

 剣八の右目を覆っていた眼帯は、先週の『野晒』解放と同時に外してしまっていたようです。剣八としては本当に手加減無しにジェラルドを斬るつもりで戦っているのに、それでもジェラルドの巨躯や盾は斬れないわけで、状況としてはかなり厳しいですね。「希望の剣」の刃毀れだけで剣八には負傷が増えていくことも踏まえると、完全にジリ貧と言えそうです。

 こういうわけで、日番谷白哉による共同作戦になるんですね。勝手に戦っている剣八はもう時間稼ぎの囮として泳がせておいて、確実に止めを刺せそうな方法で終わらせようという。これは結局ジェラルドに気づかれて未遂に終わってしまいますが、仮に成功していたとしても、物理的な破壊だけでジェラルドを倒せるかは微妙そうだなと思います。一度は白哉によってミンチにされているわけですから、同じことの繰り返しになりそうだなと。

 

 「希望の剣」の刃毀れによる負傷がどんどん増えていきますが、剣八は倒れません。剣八のこの不屈の闘志については、本人が頑強であるというほかに、"剣八"という称号それ自体に「幾度斬り殺されても絶対に倒れない」という意味が込められていることも大きいのかなと思います。〈尸魂界篇〉における一護vs剣八のエピソードでは、"剣八"という称号の内実やその怪物性に焦点があたった回には"the Undead(不死身)"というタイトルが冠されたくらいです(ここに挙げた画像のほか、13巻収録の第112,113話がそれに当たります)。

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久保帯人BLEACH』12巻111,119頁)

 

 しかし、いくら剣戟が成立しても剣八は「希望の剣」の刃毀れでじわじわと傷ついていくばかりで攻撃自体は通らず、白哉日番谷の協同による不意討ちも見抜かれて潰されてしまいます。隊長格三人がかりでもまったく傷を負わせられないという最悪の状況です。ジェラルド本人はただただ暴れまわっているだけですが、「傷を負うたびに強くなって再生する」という能力そのものがあまりにもシンプルに強力すぎて倒しようがないという感じですね。やはり力こそパワー・・・。

 

 という絶望的な戦況のなか、地上で姿を消したはずの「やちる」が現れました。この展開はもうさすがに「決定的」と言ってしまってよいでしょう。予想がドンピシャで大当たりしました。

 いま剣八たちが戦っているのは地上の瀞霊廷から隔絶された霊王宮ですから、地上からおいそれと来られる場所ではありません。しかも彼女が消えたとき、死覇装や副官章はすべて置き去りになっていましたから、これらの品物がいまの彼女と共にあるのも、普通では説明がつきません。

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久保帯人BLEACH』64巻167頁)

 しかし、彼女が剣八斬魄刀『野晒』の具象化かそれに準ずるような存在であったなら、すべて説明がつきます。いまやちるがこの場に居るのは彼女が『野晒』だからですし、彼女が死覇装や副官章を置き去りにして消えたのも、それらの品物が『野晒』の具象化には本来含まれない、外部から与えられた品物だったからでしょう。そして今回姿を表したやちるが再び死覇装や副官章を身に着けているのは、これまでの彼女の有り様を反映して改めて具象化しなおしたからとか、そういう感じなのではないでしょうか。

 何よりも、「剣ちゃんがあたしをちゃんと使えば 剣ちゃんが斬れない奴なんていないんだから」という言葉があります。ここまではっきり言ってしまったらもう「やちる=『野晒』」以外にありえませんよね。

 

 また、やちると剣八のやり取りを見ると、彼女は剣八による卍解をすでに認めているように見えますね。やちるが剣八の手を握った際、卍解に相当する力を与えたようです。

 本来、斬魄刀卍解には、斬魄刀「具象化」「屈伏」という手順が必要になります。斬魄刀を物理世界に喚び出すことを「具象化」と言い、それと戦って自身の力を認めさせることを「屈伏」と言います。斬魄刀にその力を認めさせることができない者には、卍解を扱うことはできません。

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久保帯人BLEACH』15巻71頁)

 しかし、今回のやちると剣八を見たかぎり、この二人の間に「屈伏」にあたるような手続きが行なわれたようには見えませんね。なのに剣八卍解を手にしているらしい。これはおそらく、この場で改めて「屈伏」させてもらうまでもないほどに、やちるは剣八の力をとっくに認めてしまっているからなんじゃないかと思います。なにしろ彼女は剣八の戦いをずっとそばで見守り続けてきたわけで、しかもその態度は一貫して剣八の強さを誰よりも認めている、剣八の一番のファン」といった具合でした。「一番強いのは剣ちゃんだもん」とはっきり明言してもいますね。

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久保帯人BLEACH』13巻34,130,144頁)

 また、「あなたはあたしの世界のすべて」というのも、斬魄刀からその持ち主へ向けられた言葉として大変相応しいと思います。たとえば「斬月のおっさん」も、一護に対して同様の独白をこぼしたことがありました。持ち主の魂のなかに住む斬魄刀にとっては持ち主の心こそがその世界のすべてになるわけですから、斬魄刀同士でこうしたシンクロが生じるのも当然ですね。

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久保帯人BLEACH』13巻90~92頁)

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。