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『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第667話「BIGGER, LOUDER, STRONGER」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第667話「BIGGER, LOUDER, STRONGER」

 剣八が肉体保護瓶のなかで目を覚ました瞬間の短い回想から始まりました。目覚めた直後に保護瓶の蓋をブチ破ってしまうあたり、さすが剣八としか言えませんね。日番谷が戦線に合流した直後に、しかも一角たちがそこへ追いつくよりも一歩早く剣八が乱入したわけですから、彼は保護瓶に入れられてからさほど時間が経たないうちに目覚め、すぐに飛び出したものと思われます。ペルニダに破壊されたはずの手足が治っているのは、おそらく保護瓶の薬液に治癒の効果などがあったのかなと。涅ならそういう薬品を作るくらいは簡単にできそうですし。とはいえ、やはりどこまでも化物めいていますね、剣八

 

 今週のタイトルは「BIGGER, LOUDER, STRONGER」です。直訳すると「より大きく、より騒々しく、より強く」という感じでしょうか。傷を負えば負うほど大きく強くなっていく『奇跡』の戦士・ジェラルドと、戦えば戦うほど成長し強くなっていく剣八、双方を言い表したタイトルなのかなと思います。こう考えると、こいつと戦うのは剣八しかありえないなというくらいお似合いのキャラではありますね。

 

 剣八がジェラルドの右手を斬り落としましたが、「更に強く」なって再生してしまいます。再生した右手には血管のような筋が現れていて、指の付け根には円盾のような装甲がありますから、明らかに普通の人間の腕ではなくなりつつありますね。この能力を最初に行使したときには「"傷を負ったもの"を"神の尺度"へと"交換"する」と表現していましたから、おそらく彼は『奇跡』が起きるたびに「神」へ近づいていくのでしょう。彼は「霊王の心臓」らしいという話もありましたから、むしろそういう「神」の肉体こそが彼本来の姿なのかもしれません。

 そして先週から引き続きの身長ネタ。日番谷本人が気にしているのはともかく、白哉が明らかに気を遣ってやっているのが本当に笑えますね。気を遣いすぎて逆に怒らせてしまうやつです。

 

 ジェラルドの能力を聞いてテンションを上げる剣八(あたまがおかしい)を、日番谷が制止します。本当に、徹頭徹尾「目の前の相手を斬る」ということしか頭にないんですよね、剣八は。こうした戦闘行為そのものへの執着心、"戦いを求める本能"こそが彼の強みのひとつなんですが、この状況では日番谷に止められてしまうのも当然ですね。倒せないまま地上へ落下した場合のことを考えると、無闇に戦わせることはできません。

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久保帯人BLEACH』25巻133,138~139頁)

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久保帯人BLEACH』64巻88頁)

 

 揉み合っている剣八日番谷をジェラルドが踏み潰そうとしますが、剣八はこれを膂力だけで持ち上げ投げ飛ばしてしまいます。無茶苦茶ですね。日番谷の制止については「チマチマ楽しんでねェで一発で頭割れってこったろ!!」と言っていますが、それだけでジェラルドを倒せるのかと考えると少し難しそうですよね。実際、白哉が最初にジェラルドを肉塊に変えたときは頭部も破壊していたようでしたから、結局はジェラルドが「神」へ近づくのを助けるだけなのではないかなと。物理的な破壊とは異なるタイプの攻撃が必要なように思えます。

 斬りかかってくる剣八を巨大な円盾で弾き飛ばしたジェラルドは、「希望の剣(ホーフヌング)」というらしい剣を抜き放ちます。"Hoffnung"とは、ドイツ語でずばり「希望」という意味の語です。彼の剣にこういう名前が冠せられている理由についてはまだ分かりませんが、今後の展開から類推できるかもしれませんので、注視しておきましょう。

 また、ジェラルドは剣八のことを「強力な闇の化身」と言っていますが、これはおそらく、剣八が常に戦いを求める魔物のような存在であるということを嗅ぎとったからではないかなと思います。剣八については、「無明の闇に棲む魔物・罪人」という表現が何度も繰り返されています。

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久保帯人BLEACH』13巻143頁)

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久保帯人BLEACH』17巻149頁)

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久保帯人BLEACH』59巻55頁)

 

 ジェラルドの頑丈さを思い知った剣八が、『野晒』を解放します。グレミィが召喚した「隕石」すら両断した刀ですから、サイズや硬さの観点から言えば何の問題もなく斬れそうですね。ただ、ジェラルドの「神の尺度へと交換する」というのが物理的な話だけではなく、「交換されたものは神性を帯びていく」みたいな意味も込みだった場合、文字通り「神を斬る」というような話になってしまいますから、果たしてどうなるか分かりませんが。しかもジェラルドの異様な右手などを見ると、そういった展開はいかにも起こりそうなんですよね。

 剣八の斬撃を受けた「希望の剣」が"刃毀れ"を起こし、どうやらそのことが原因となって剣八の腹部が斬り裂かれた、というところで今週は幕です。いったい何が起きたんですかね。次回すぐに説明があるだろうと思いますが、「刃毀れ」というのは剣が「傷を負う」ということですから、おそらくこれも『奇跡』によってジェラルドの剣が「神の尺度」を得たということなのかなと思います。

 

 ところで、剣八斬魄刀について、白哉から気になる言及がありましたね。ごく一般的な始解と同じように姿を現した『野晒』を見た白哉「奴の刀は常時解放型では無かったという事か・・・・・・」「そもそも・・・・・・常時解放型などというものは存在せぬのかも知れぬな・・・・・・」というセリフです。

 剣八斬魄刀「常時解放型」という特殊なものであるらしいというのは、死神たちの共通認識になっていたようです。しかし、白哉が言っている通り、実際にはこうした通常通りの始解が行なわれた以上、この認識は誤りだったということになるはずですね。剣八斬魄刀もまた、ごく一般的なものと変わりなかったのだと。このことは、グレミィ戦で『野晒』が解放された時点で、少なくともわれわれ読者は知っていることでした。

 しかし、他でもない剣八自身が、自分の斬魄刀についてこんなことを言っているんですよね。

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久保帯人BLEACH』13巻46~47頁)

 「常時解放型」という言葉こそ使っていませんが、「元々封印自体してねえ」と明言しているんです。本当は「常時解放型」などではない一般的な斬魄刀のはずであり、しかも剣八がその刀の名前をまだ知らないのに、です。本来であれば、そういう斬魄刀は「解放」が不可能である(=「封印」されている)はずですよね。まず斬魄刀と「対話」をして名前を訊き出すところから始めなければなりません。にもかかわらず、斬魄刀の持ち主である剣八本人が、自らの斬魄刀のことを「霊圧がデカすぎて全力で抑え込んでも封印できねえ」と言っているんです。いわば「名前を知らないから解放不可能のはずなのに、なぜか封印もできていない」という、矛盾した状態なんですね。これは一体どういうことなのか。

 

 ピンときた方もいらっしゃるかと思いますが、やっぱり「やちる」がカギなんじゃないかなと思うんですよね。以下に現時点での見立てを述べます。

 まず結論から言うと、剣八の副官「草鹿やちる」は、剣八斬魄刀『野晒』が「具象化」した姿なんじゃないかと私は考えています。つまり、剣八は昔々にやちると出会った頃からずっと、『野晒』を「具象化」させっぱなしだったんじゃないかと。もちろん剣八自身は無自覚で、ですよ。剣八が自らの斬魄刀を「封印できない」と言っていたのは、「剣八の意志とは関係なく勝手に具象化してしまう」ということを暗示していたのではないかと。

 ただ、実を言うと、いままで私はこのアイデアについてはかなり懐疑的でした。「剣八と出会う前からやちるは流魂街にいたはずなのに、そんな彼女がどうして剣八斬魄刀であるなんてことがあるのか」と。

 ですが今回、

「どういうわけか『野晒』は剣八から遠く離れた場所で具象化した」

「具象化した『野晒』自身が「自分は更木剣八斬魄刀『野晒』が具象化したものである」ということをずっと忘れてしまっていた」

ということであれば、やちると剣八の出会いのエピソードとも矛盾しなくなるんじゃないかという点に思い至ったんです。いや、もちろん、どうしてそうなったのかという理由については見当も付かないんですけども、「やちるの斬魄刀『三歩剣獣』は、まるで具象化のような(しかし具象化そのものとも言えない)きわめて奇妙な始解だ」「やちるがグレミィ戦で『野晒』を目撃し、剣八との出会いの瞬間がリフレインしたのを最後にやちるの姿が消えた」というのを併せて考えると、やっぱり「やちる=剣八斬魄刀が具象化したもの」という図式が一番据わりが良いなと思うようになったんですよね。都合のいい脳みそでごめんなさい。

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久保帯人BLEACH』64巻26~27,130~132頁)

 

 剣八とやちるの出会いは、北流魂街79地区"草鹿"でのことです。たまたまやちるが居たところで剣八が斬り合いをして、そのときに出会ったのが始まりでした。

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久保帯人BLEACH』13巻133,138~139,143頁)

 「名乗るべき名前を持たない者」という繋がりが剣八とやちるの間には元々あって、その辛さから逃れるため、剣八は自ら「更木の"剣八"」と名乗るようになり、やちるには、彼が唯一憧れた人物である「卯ノ花八千流」の名を与えました。剣八が彼女に「やちる」という名を与えたことによって、彼女は剣八斬魄刀『野晒』である前に「やちる」という名の一人の少女になってしまったのではないかなーとか、そんなふうに思うんですよね。さすがにセンチメンタルすぎるかなとも思うのでこれ以上深掘りするのはやめておきますが、そういう感じなんじゃないかなと。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。