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『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第657話「GOD OF THUNDER 2」の感想・考察

あけましておめでとうございます。ほあしです。

本年もよろしくお願いいたします。

今週のBLEACHの感想です。

 

BLEACH』第657話「GOD OF THUNDER 2」

 夜一がナックルヴァールに対して『瞬閧 雷神戦形』による鬼道の攻撃を放ったところから。霊圧を纏うことによって夜一の髪の毛が逆立ち、二本の角のようになっていますね。俵屋宗達の絵などで有名な、オーソドックスな雷神の姿を模したものだと思われます。

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雷神 - Wikipediaより、俵屋宗達による雷神図)

 

 夜一の一撃(ナックルヴァールに直接叩き込んだものだけでなく、霊圧そのものが落雷のように降り注いでいるようです)によって、かなり広範囲の街並みが大きく破壊されてしまっていますね。ただこれ、夜一の瞬閧が『雷神戦形』に入ったことでパワーアップしているとかいうことではなく、おそらく瞬閧という戦闘術そのものが標準的にこれくらいの破壊力を有しているというだけのことだと思われます。夜一の瞬閧が周囲一帯の地表を抉り取って更地にできるくらいの破壊力を持っていることは、〈尸魂界篇〉の時点ですでに描かれていましたから。

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久保帯人BLEACH』19巻5頁)

 

 夜一は、一護たちの治療を織姫に託して、先にユーハバッハの許へ行かせようとしていますね。「ユーハバッハと戦うのは一護の役目だ」というのを意識しての指示なのか、それとも単に先行できる者からどんどん攻め込んで行けというだけのことなのかはちょっと分かりませんが、もし前者のようが思惑があるのだとすれば、一護にはユーハバッハと戦えるだけの特別な力がある」ということを夜一はある程度確信しているのかもしれませんね。そもそもユーハバッハ自身が一護のことを「特記戦力筆頭」に位置づけているようですから、それだけで警戒度の高さは伺い知れますし。

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久保帯人BLEACH』65巻32頁)

 そしてここで夕四郎が合流しました。彼らが霊王宮に侵入したときに一度合流しようとして、霊圧で足場を形成できずに墜落死しかけていましたが、あれで諦めていなかったんですね。夜一にしつこく抱きつこうとするのもそうですが、ちょっとシスコンにも程がありすぎる気がしますね…。

 しかもこれ、最終的には背後から下腹部に手を回して、ほぼ丸出し状態のお尻(瞬閧発動を前提にした衣装なのだとしても非常にエロくて素晴らしい)に抱きつこうとしてるんですよ。そこまでやっちゃうことに一切迷いが無いあたりがもう生粋のシスコンといった風情で、彼のキャラ付けとしては正直だいぶ気持ち悪い感じになっちゃってると思うんですが、顔がめっちゃカワイイのでまあいいか…ってなりますね。皮肉や嫌味を一切感知しないおバカっぷりもカワイイです。これに家督を継がせちゃってる四楓院家は果たして大丈夫なのかとか思わないでもありませんが。

 

 『雷神戦形』の直撃を受けたナックルヴァールでしたが、電撃による軽い火傷や衣服の焼け焦げがあるのみで、命に別状はないようです。この時点ですでに怪しいといえば怪しいんですよね。あんな破壊力の直撃を受けてなぜこんなにピンピンしているのかと。この時からすでに霊圧の「摂取」を進めていたのでしょう。

 ナックルヴァールの「嬢ちゃん」発言で顔を赤らめて怒る夕四郎ちゃんもほんとにカワイイの権化なんですが、しかし戦闘となるとめっちゃ強くてカッコいいですね。ただの打撃のみでナックルヴァールを完全に圧倒しています。四楓院家当主としての名乗りも様になっていますし、案外、カワイイ状態に陥るのは夜一姉さまが関わっている時だけで、それ以外ではそこそこしっかりしているのかもしれません。

 余談ですが、夕四郎が持つ「咲宗(さきむね)」という名前が少し気になりました。これ、同じような名前を夜一も持っているんですかね。貴族の子女は名前が複数あったりしますから、そういうノリで付けられた名が夜一にもあるのかもしれないなと思いました。似たようなネーミングとしては「京楽 次郎 総蔵佐 春水」とか「雀部 長次郎 忠息」というのもありましたから、雀部もまた貴族の出身なのかもしれませんね。

 『爆炎無双』という名前を見る限り、夕四郎の瞬閧は「炎」の性質を持っているようです。カワイイ顔して瞬閧だけは殺意が強いというか、ここまで登場した三種類の瞬閧のなかでは最も直接的な破壊をもたらすことに向いた性質に見えます。そのくせ夜一に褒められたときの嬉し顔はやっぱり死ぬほどカワイイですし、こういう「人格と能力のイメージが少しズレてる」感じのちぐはぐなキャラ造型、めっちゃイイですよね…。

 

 夜一の雷撃・夕四郎の爆炎及び打撃でボロ雑巾にされたはずのナックルヴァールが、何食わぬ顔で口を開きます。「指定した物質を大量に取り込むことでその致死量を操作する」という能力によって、「霊圧」による「ナックルヴァール自身の致死量」を操作したようですね。自分自身の致死量をも操作できるということは、前回分の記事でわたしが考えていたような「指定する物質に関する制限」はほぼ無いに等しいと思ったほうが良さそうです。さすがは親衛隊と言うべきなんでしょうか、攻防ともにきわめて強力な、想像以上に反則級の能力でした…。

 また、ナックルヴァールが他の親衛隊と同様に備えているであろう「不死性」についても、これではっきりと道筋が見えましたね。「任意の物質に対する自分自身の致死量を操作できる」というのは、はっきり「不死」と言いきって差し支えない能力だと思います。彼の「不死性」については、実は『致死量』の初披露時にすでに仄めかしがあったんですよね。彼自身がそのような発言をしていました。

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久保帯人BLEACH』66巻187頁)

 「俺が陛下に拾われたのは…ただひたすらに死ななかったからさ…みっともねえ能力だろ…?」というのがそれで、ナックルヴァールは『致死量』の操作によってまず自分自身の死を回避し続けていたらしいということがここで明言されていたんですね。その内実がここでようやくお披露目となったわけです。

 さて、「霊圧」による攻撃が通用しなくなったナックルヴァールに対して、夜一たちはどのように戦うんでしょうか。「霊圧」での攻撃が効かないという時点でかなり絶望的な気がしますし、仮に「霊圧」以外の攻撃を畳みかけたとしても、それについてまた致死量の操作を繰り返されるというイタチごっこもすでに見えています。「神の力」「不死の生命」を与えられた天使の軍団をどうやって打ち破るのか、楽しみにしておきましょう。

 

 最後に、現時点でひとつだけ気になっている点があるのでそこだけお話しします。夕四郎の攻撃で、ナックルヴァールの衣装が焼失していますよね。上半身については首から肩周りの装飾と両手首にブレスレットを填めているだけになっていて、下半身については衣服はきちんと残っていて、腰の周りにいくらか装飾品があるという状態です。

 ナックルヴァールのこの姿、なにか既視感があるなあと思ってよく眺めていたんですが、古代エジプトの王(いわゆるファラオ)の服装によく似ている気がするんですよね。

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ファラオ - Wikipediaより、新王国時代の墓の壁画にもとづいて描かれた絵)

 古代エジプト宗教観として「人間の死後も肉体を保存しておけば、楽園に復活することが出来る」というものがありました(だからこそ「ミイラ」の保存が盛んに行なわれたわけです)から、これまで繰り返し描かれている「不死の生命」という要素にもそのまま接続できるんですよね。

 ジェラルド・ヴァルキリーのように北欧神話との接続を仄めかしているキャラクターもいることを考えると、ナックルヴァールは古代エジプト神話」への接続が予定されているのかもしれないなと、そんなふうに思ったりしています。ファラオというのは古代エジプトにおける「神の代理人」として神権政治を行なっていたような存在ですから、「神の力」を行使する親衛隊のありようにもマッチしますし。

 もちろん、ここまで穿った推量は現状ではただの考えすぎという線が最も濃厚ですので、おとなしく続きを待つのが一番健全なのかなと思います。情報が少ないうちはついつい好き勝手なことを言ってしまえるものですから。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。