Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第636話「Sensitive Monster」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週の『BLEACH』の感想です。

 

BLEACH』第636話「Sensitive Monster」

 先週のヒキからそのまま、剣八&涅vsペルニダ戦に入りましたね。先週までで「複数の戦闘が各地で同時展開される」といういつもの流れが出来上がりましたから、今後はそれらの戦闘を並行して描いていくことになるのかなと思います。

 

 「不気味な奴だヨ」「おめえが言うな」のやり取りで正直めっちゃ笑いました。得体のしれない相手について真剣に話をしているところでいきなりツッコミを入れてくるというのは本当にずるいと思います。見事な「緊張と緩和」です。

 ネムと一角のやり取りを読んでいて思ったんですが、剣八と涅って意外とよく似た性格の持ち主なのかなと思うんです。どちらも徹底的な孤身無頼というか、自分の力あるいは知性に強い自信を持っていて、それを思う存分振るうことを生きがいとしていて、自分の得意とする領分(=剣八なら戦闘行為そのもの、涅なら分析や研究行為)に他人が横から出しゃばって来たり、自分よりも優位に立とうとすることを許容しないところがあるんですよね。あらゆる戦いに「勝ちたい」と願う(=最強でありたいと願う)剣八と、誰よりも優秀な頭脳を持っていたいと願う涅は、その負けん気の強さというかプライドの高さというか、そういうところが実はそっくりなのかもしれないなと思いました。欲望の方向性が違いすぎるので一見するといわゆる「水と油」みたいに思えるんですが、いま述べたような意味合いでは実は意外と気が合う二人なのかもしれないなと。欲望の方向性が全く違うからこそ、彼ら二人がライバルとなって潰し合うというような事態もまず起こらないでしょうし。

 

 今週のタイトルは「Sensitive Monster」です。直訳すると「過敏な怪物」「神経質な怪物」といった感じでしょうか。「神経」を利用して戦う怪人物・ペルニダのことですね。神経を剥き出しにしているがゆえに、外からの刺激に対してきわめて「過敏」でもあるわけですから、まさしく”sensitive”という言葉が相応しいですね。

 

 再び暴れ出した自らの右腕を、剣八はとうとう自力で引きちぎりました。表情一つ動かさずにやってのけるあたり本当に頭がおかしいですね。剣八らしいといえばらしいんですが。涅の皮肉っぽい言葉に対して「褒めてんのか喧嘩売ってんのかどっちだ」と返しているのは、涅が繰り返し言っている「質問か独り言か」という嫌味をやり返しているのでしょう。これを受けた涅が楽しそうにニヤついているのも面白いです。やっぱりこの二人ってものすごく仲良くなれるような気がします。

 そして涅の言葉を無視して再び斬りかかる剣八。「斬る」という行為そのものが大好きな剣八ですから気持ちはまあ分かりますが、ちょっと生き急ぎすぎですね……。両足を破壊されたうえに『疋殺地蔵』で四肢の動きを封じられましたから、さすがに今度こそ剣八は戦闘不能でしょう。

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久保帯人BLEACH』14巻190頁)

 というか、このときの涅は、ペルニダの能力を検証するためにわざと剣八を負傷させたのかもしれませんね。剣八が駆け出したと同時に『疋殺地蔵』を取り出していますから、ペルニダの能力が再び行使されるだろうことをすでに想定しているように見えます。まあ剣八が勝手に突撃したせいで涅の思考する時間が奪われてしまったわけですから、どうせなら検証に利用させてもらおうという打算が働くのも分かるんですけどね。しかしこういう行動をノータイムで選択できるあたり、まさしくマッドサイエンティストです。

 また、『疋殺地蔵』には複数の能力があるようですね。「斬った相手の四肢の動きを奪う」だけかと思っていました(それでも十分強すぎるくらいです)が、「”恐度四”」という言葉からすると他にもいくつかできることがあるようです。これが『疋殺地蔵』にもともと備わっている能力なのか涅による「改造」の賜物なのかは分かりませんが、いずれにしてもやはり底が知れません。そして発動のさせ方が「目潰し」というのもイイ感じに頭がおかしいですね。こういう頭のネジが吹っ飛んだようなキャラクターを描かせると久保先生は天下一品だと思います。

 

 剣八を使った実証実験のおかげで、ペルニダの聖文字強制執行(the Compulsory)』の正体が「神経」にあることを涅は看破しました。涅は「血装」との関連を指摘していますが、実際、ユーハバッハはこれによく似た「血装」の使い方をしていましたよね。

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久保帯人BLEACH』67巻107,111頁)

 『外殻静血装(ブルートヴェーネ・アンハーベン)』です。「奪う」という行為そのものが滅却師能力の本領ですから、ペルニダの『強制執行』もまたその一類型にあるということなのでしょう。

 また、「神経」を介して相手に干渉する能力といえば、エス・ノトの完聖体『神の怯え(タタルフォラス)』が想い起こされますね。

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久保帯人BLEACH』63巻145~146頁)

 エス・ノトの場合は自身の神経を露出させて直接干渉するというようなことはありませんでしたが、「神経」を介して能力を発揮するという点は共通しているんですね。視神経を経由して相手を恐怖で支配するというのも、滅却師能力の本質である「奪う」という点を尖鋭化させたものなのかなと思います。

 

 ペルニダの能力の正体を涅が見抜いてくれたことで、すごく安心している自分がいます。ここまでくればあとは涅の独壇場というか、「これからどんな薬の実験を見せてくれるんだろう」というワクワクが止まりません。ただ、ペルニダという人物そのものの正体がまだ分かりませんから、その内容次第ではまだいくらでも戦況はひっくり返るだろうとは思いますが。しかし、自身の神経を剥き出しにして武器にしてしまうような存在というと、ちょっと見当もつきませんね。少なくとも真っ当な人間ではなさそうですが……。

 

 第636話の感想自体はここまでなのですが、8月4日に発売される『BLEACH』の公式ファンブック「BLEACH 13 BLADEs.」について気になる情報が出ていたので、最後にすこしだけ触れておこうかと思います。

BLEACH 13 BLADEs. (ジャンプコミックス)

 今週のジャンプ誌上に、「BLEACH 13 BLADEs.」のために描き下ろされたマンガの一部が掲載されました。檜佐木に焦点を当てた短編のようで、おそらくは、『BLEACH』15巻に収録された短編「逸れゆく星々の為の前奏曲」の内容を受けたものになっています(この短編は、もともとは平成16年20号のジャンプ本誌に掲載されたものです)。

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久保帯人BLEACH』15巻147頁)

 この短編自体は真央霊術院に入ったばかりの恋次雛森・吉良の三人に焦点を当てたものなのですが、当時真央霊術院の六回生だった檜佐木も登場し、現世で勃発した巨大虚との戦闘によって同級生の蟹沢を殺害されるという経験をしています。

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久保帯人BLEACH』15巻158,163頁)

 「13 BLADEs.」描き下ろしマンガは、このときに死亡した同級生・蟹沢と、その死を悼み続けるもう一人の同級生・青鹿との交流を中心にしたお話になるようです。今週公開されたそのマンガの一部では、檜佐木と青鹿が死覇装を着ていることから、少なくとも彼らが真央霊術院を卒業して護廷十三隊に入隊した後のことであるということは分かるのですが、それ以上の時系列整理については現時点では不可能です。分かることといえば、青鹿が袈裟懸けに背負っている鞄から、彼が救護専門の四番隊に所属しているらしいということくらいでしょうか。

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久保帯人BLEACH』12巻62頁) 

 

 それでですね。この新たな短編の内容を見ていてひとつ確信したことがありまして。というのは、このたび発売される公式ファンブックは、徹頭徹尾「単行本を購入して集めているファン」をターゲットにして作られているらしいという点です。

 どういうことかというと、檜佐木の同級生である青鹿・蟹沢という二人のキャラクターは、先述した短編「逸れゆく星々の為の前奏曲」以外に本編で登場したことがない(しかもお世辞にも「メイン」の役どころとは言えない)ため、この短編が掲載された当時にジャンプ本誌を読んでいなかった読者にとっては「誰なんだこいつらは」としか言いようのない存在なんですよね。「物語の途中から読み始めたけど単行本までは追ってないんです」という、比較的ライトな楽しみ方をしている『BLEACH』ファンというのもたくさんいるはずなんですが、そういう人はそもそも青鹿や蟹沢の存在自体を知らない可能性すらあるわけです。公式ファンブックに掲載する描き下ろし短編においてそういう非常に影の薄いキャラクターをドラマの中心に据えるということ自体が、この商品が「単行本を買い集めているファン」向けであることを雄弁に物語っていると思うんです。

 また、この公式ファンブックのために企画されたいわゆる「人気投票」企画(すでに応募は〆切済み)からも同様のターゲティングが見て取れるんですね。この企画のなかには「死神ベストバウト」投票というものがありまして、ひとことで言うと「『BLEACH』で一番面白かったと思うバトルに投票してくれよな!」というものなんですが、その応募要項には以下のような規定があったんです。

 

「単行本の何巻に収録されている、誰と誰のバトルかを明記する」

 

 「単行本の何巻に収録されているバトルか」というのは、正確に集計するためには当然必要な情報ではあるんですが、これって、『BLEACH』の単行本すべてを手元に所有していなければ確認できない情報なんですよね。レンタルコミックや立ち読みなどで一冊ずつ確認していくことも一応不可能ではありませんが、『BLEACH』という作品のためにそんな面倒なことを実行するほどの熱意がある人なら、そもそも単行本を所有しているでしょう。

 つまりなにが言いたいのかというと、「このたびのファンブックはBLEACH』単行本を毎巻購入しているくらいに熱心なファンの為だけに作られた、一種の「お祭り」的な書籍になっているのではないか」ということで、その意味でわたしはこのファンブックの発売を非常に楽しみにしているわけです。まあファンブックってそもそもそういう面が強いものではあるんですけど、「13 BLADEs.」はその傾向が特に強いのではないかなと。

 

 そんなわけで、今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。