Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。寄稿のご依頼などはhoahoahoashi@gmail.comまでどうぞ。

『BLEACH』第633話「friend 3」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週の『BLEACH』の感想です。

 

BLEACH』第633話「friend 3」

 先週の続きからそのまま始まりました。ユーハバッハはハッシュヴァルトを指名し、自身の「側近」として『星十字騎士団』に迎えると言います。これに面喰らったハッシュヴァルトがバズビーに助け舟を求めたときに見てしまったバズビーの刺すような視線・眼光が、彼ら二人の決裂を決定づけてしまったようです。「friend」というタイトルが、この瞬間以降完全に上滑りしてしまっているのが大変切ないです。

 滅却師としての才能についてはハッシュヴァルトよりも自分の方が明らかに恵まれていると確信していたバズビーは、やはりこの状況に全く納得できていないんですね。滅却師としての能力に明白な差があった以上、バズビーの怒りはある種もっともなものです。より優秀であるはずの自分が選ばれず、無能であるはずのハッシュヴァルトが選ばれた、というのは大変な理不尽だと感じるはずですから。

 ただ、この瞬間のバズビーの怒りがハッシュヴァルトに向いてしまい、そのことをハッシュヴァルト本人にも悟られてしまったということが彼らの悲劇なのかなぁと思うんですよね。「なんでお前なんだよ ユーゴーというモノローグと視線の鋭さからも分かるように、この瞬間のバズビーが怒りを向けているのは、この選択の主体であるはずのユーハバッハではなく、ただ訳も分からず選ばれただけのハッシュヴァルトのほうなんですね。

 そしてこの視線を受けたハッシュヴァルトも「どうして一緒に喜んでくれないの」と戸惑っていますから、バズビーの怒りが自分に向いているらしいことに彼は気づいているわけですよね。ともに研鑚を重ねてきた友達だったはずなのに、自分の成功をバズビーは喜んでくれないのか、という絶望のようなものがハッシュヴァルトのなかには生まれているのではないでしょうか。

 早い話、バズビーはこの瞬間ハッシュヴァルトに「嫉妬」してしまったわけですよね。一般的には、こういう感情を抱いたまま友人関係を維持するのは非常に難しいと思います。このたびの回想に入る直前、バズビーはハッシュヴァルトのことを「裏切り者」と罵っていましたが、ハッシュヴァルトの立場で考えてみれば、むしろバズビーのほうこそが「裏切り者」ということになるように思えます。彼ら二人が五年間にわたって築いてきたはずの友情を、自己陶酔からくる嫉妬によってまず裏切ったのはバズビーなのですから。いずれにせよ、この二人の決裂はまさにこのとき訪れたのでしょう。

 

 ハッシュヴァルトは、自分を連れて引き揚げようとするユーハバッハの選択を「何かの間違いだ」として、バズビーのほうを側近として薦めます。ただでさえ「天才」としてのプライドを大いに傷つけられているバズビーからしてみれば、こうしてわざわざ席を譲るような真似をされるのは最悪の侮辱でしかないでしょう。すでに関係修復が困難なレベルにまで悪感情が拗れてしまっているようです。

 ユーハバッハ曰く、ハッシュヴァルトは、ユーハバッハと同じく「”分け与える力”を持つ滅却師だったんですね。ただ、ユーハバッハは「与えた力を奪う」ということができますが、ハッシュヴァルトにはそれができないため、滅却師としては「不全」と見做されていたと。「奪う」ことこそが滅却師能力の本質的な部分ですから、これは当然の話でしょう。また、バズビーが「天才」のように振る舞っていられたのはハッシュヴァルトの「分け与える力」が身近にあったからこそであり、バズビー本人の才能によるものではなかったのですね。ここまでくるとバズビーのプライドもすでに粉々といった感じでしょうか・・・。

 

 また、個人的にここで気になるのは、ユーハバッハやハッシュヴァルトのような「不全の滅却師」というのはいったいいつごろ存在していたのだろうか、ということなんです。

 というのも、今週のユーハバッハの語りぶりからすると、「ユーハバッハ誕生以前には「不全の滅却師」が生まれていた」ということになってしまうと思うんですが、しかし、滅却師という種族そのものがユーハバッハから始まったはずのものですから、「ユーハバッハが生まれる前にも滅却師が存在していた」という話自体がそもそも成り立たないように思えるんですよね。

f:id:hoasissimo:20150706122631j:plain

久保帯人BLEACH』60巻125頁)

 この「かつて数十年に一度生まれていたと言われる不全の滅却師」という話について、現時点で提示されている情報だけではどうも整合が取れないように思います。とはいえ、このたびの回想が時系列的にどのあたりに位置するのかもまだはっきりとは分かっていない状態ですから、あまり答えを急ぐのはやめておきましょう。これから明らかになる情報もまだまだあるでしょうから。

 

 バズビーに真実を伝えたユーハバッハは、ハッシュヴァルトに「私にはお前が必要だ」と告げます。おそらくこれが、ハッシュヴァルトがユーハバッハに忠誠を誓う決定打になったのでしょうね。これまでのハッシュヴァルトは、通常の滅却師としては間違いなく未熟者・役立たずということになりますから、その力が誰かに「必要」とされることは無かったのではないでしょうか。しかも、五年間ともに切磋琢磨してきた友人であったはずのバズビーは、ハッシュヴァルトがユーハバッハに見初められたことを友人として祝福してはくれず、嫉妬と怒りを顕わにするだけでした。そういう状況の中で「お前が必要だ」と言われてしまったら、靡いてしまうのが人情だと思います。

 しかし、こうして比較的スムーズにユーハバッハの部下となっているところを見ると、やはりハッシュヴァルトにとって、「叔父さん」を殺害されたことは他人を憎悪する理由にはならないようですね。いったいどんな人物だったのやら・・・。

 

 激昂したバズビーが放った神聖滅矢を、ハッシュヴァルトは手で掴んで止めます。矢の速度を見切って手掴みで止めるという芸当ができる時点で、ハッシュヴァルトが戦士として相当の鍛錬を積んでいるらしいということが窺えますよね。「不全」ゆえの努力の賜物ということでしょうか。ここで回想が途切れ、同じようにバズビーの矢を手掴みで止めるハッシュヴァルト。自分たちが決裂してしまった瞬間を二人して思い返しているのでしょうか、視線が交錯しますが、すぐさまハッシュヴァルトによる大剣の一閃がバズビーを斬り裂いて今週は幕です。

 

 バズビーが発した「裏切り者」という罵倒から、彼ら二人の関係について、ハッシュヴァルトのほうに何らかの責任というか後ろ暗いところがあるのかと思って見ていたんですが、これはほとんどバズビーの逆恨みと言うほか無さそうですよね。この二人の関係がここからどう転んでいくのか、次回以降を楽しみにしておきましょう。

 

 今週の感想は以上です。

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 それでは。