『BLEACH』第615話「All is Lost」の感想・考察
こんにちは。ほあしです。
今週の『BLEACH』の感想です。
『BLEACH』第615話「All is Lost」
現世にいる夏梨と遊子のやり取りから始まります。夏梨を地震から庇おうとして逆にジュースをこぼす遊子、ちょっと可愛いすぎますね・・・。また、お兄ちゃんである一護がいようがいまいが相変わらずイチゴのブローチのヘアピンを身に着けているあたり、やはり生粋のブラコンなのだということが窺えます。とはいえ、遊子の「イチゴ」好きは作品の当初から一貫しているので今更ではありますが。夏梨はTシャツに印字された「RTA of the ...」という文字から察するに、何かのゲームのリアルタイムアタックでもしていたのでしょうか。遊び方がガチ勢のそれです。
なかなか収まらない地震は、霊王の死による「世界崩壊」の前触れでした。たしかに霊王の表情からは生命感のようなものが失われたような印象があります。「死体の表情」とでも言えばいいのでしょうか。「All is Lost」は読んで字の如く「世界の全てが失われる」という意味でしょう。
場面は変わって霊王宮。一護が霊王を斬ってしまったのは、やはりユーハバッハの力による強制が働いたからのようです。「一護の中の滅却師の血に呼びかけた」という旨をユーハバッハは述べていますから、やはり彼が自らの眷属に干渉するには「血」の繋がりが不可欠のようです。
一護はユーハバッハに斬りかかりますが、ユーハバッハから「まだお前に私と戦う理由があるか」という問いが発せられます。ユーハバッハによる霊王殺害を食い止めることが一護たちの目標だったわけですが、その目標はすでに失敗に終わりました。今更ユーハバッハに斬りかかっても世界の崩壊そのものを止められるわけではないのですから、たしかに「ユーハバッハと戦う理由」はすでに失われたように思われます。とはいえ、だからといってユーハバッハを野放しにしておいて良いということにはなりませんし、ユーハバッハをぶちのめして何らかの改善策を白状させるという道も無いではありませんから、ここで一護が斬りかかるのも当然と言えば当然です。
ここでわたしが注目したいのは、「一護が戦う理由を問われる」というシーンが〈破面篇〉にも存在していることなんですね。
この藍染の問いによって一護は激しく動揺して言葉を失いますが、最終的には狛村が「挑発に乗るな」と一護を諌めることで事なきを得ました。当たり前といえば当たり前のことですが、一護には「戦う理由」が必要なのだということが分かります。これまでの物語では、その理由は常に「仲間や家族を護りたいから戦う」という点に集約されてきましたから、おそらく〈千年血戦篇〉においてもそういうラインでの回答が今後提示されていくのだろうと筆者は思います。
再び場面が変わって、隊長格の集う十二番隊隊首室。ユーハバッハのセリフと尸魂界の様子を接続することでシームレスに場面転換する手際は見事ですね。周囲の建物が崩壊していく様を見て、浦原は霊王の死を察知します。この時点ですでに世界全体の崩壊についてまで言及していますから、やはり浦原は霊王について、一介の死神が通常知っている以上の事柄を詳しく知っているのでしょう。藍染とのやり取りでは霊王のことを「あれ」と表現していましたから、おそらくは彼自身がその目で霊王を見たこともあるのではないでしょうか。それがどのような経緯によるものかは分かりませんが。
三たび場面が変わって霊王宮に戻ります。ユーハバッハによれば、「霊王は大量の魂魄が出入りする不安定な尸魂界を安定させる為に創られた」のだそうです。つまり、霊王を創り出したことで世界の魂魄運行の流れが安定化したということなのでしょう。だからこそ霊王は、この世界全体を支える「楔」であり、「神」であるということになったのでしょう。「霊王」なるものの存在意義・役割について大きな回答が提示されたと言えます。
夜一がユーハバッハを足止めしている間に織姫が霊王の死を『拒絶』しようとしますが、どうやらそれも叶わないようです。織姫の『事象の拒絶』すら及ばないということは、いくら創られたものとは言えやはり霊王は「神」に相当する存在なのだということなのでしょう。
最後に再び場面が変わって、浮竹のただならぬ表情が描かれて終わりました。ここで浮竹にフォーカスされるということは、ポイントは「神掛」でしょう。やはり彼の「神掛」は、霊王が万が一死んだときへの備えだったようです。先の浦原や平子らの動揺を見るに、浮竹は「神掛」のことを京楽にしか話していないように考えられますね。あとはほぼ従者と化している清音と仙太郎くらいでしょうか。いずれにしても事態は火急です。これから何が起きるのか非常に楽しみですね。
ところで、今週ユーハバッハが明らかにした「霊王の存在理由」については、今年のはじめ、『BLEACH』第611話を読んだ後にわたしがTwitterで垂れ流していた「霊王の役割に関する予想」がそこそこの精度で的中していたようなのでここでご紹介します。主にユーハバッハが霊王のことを「我が父」と呼んだことを起点にして考えていた事柄です。関西弁そのままでつぶやいているので若干読みにくい部分もあろうかと思いますが、ご容赦ください。
霊王、四肢が無い状態でなんか薄い膜的なものに包まれてて、天井から紐か何かで吊るされてるよね。なんかその様がものすごく無力そうに見えてしまった。かつて藍染があの姿を見たんやとしたら、たしかに「あんなちっぽけなものが神か」的な怒りを覚えそうではある。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
浦原は霊王をこの世界の「楔」と言い、和尚は「鍵」と言うた。どっちも「霊王が消えれば世界が崩壊する」という同じ主旨のことを言うてるから、この言い回しの違いには単なる「ものの喩え」以上の意味は無さそう。そこに存在すること自体が仕事、みたいなことなんやろか。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
ほんでBLEACHにおける「世界の崩壊」といえば、滅却師が昔にやらかした「魂魄バランス崩壊」がまず思い当たるよね。もしかしたら霊王は、現世⇔霊界の魂魄運行を司るためのシステムの一部に組み込まれてるのかもしれんね。だから霊王が死んだら世界が崩壊すると。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
魂魄運行システム的な「全ての魂魄の転生に関わる仕組み」を司るのが霊王なんやとしたら、ユーハバッハが霊王を「我が父」と言ったことにも説明がつくよね。まあその場合はユーハバッハのみならず全ての生命にとっての「父」にあたるわけやけど。しかしそれってまさに「神」って感じよね。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
和尚が「不転太殺稜」を使ったときに「転生すら許さぬ」と言ってたことからも、BLEACH世界では輪廻転生的な営為が成立してるっぽいし。そもそも「不転」という名前自体がその点を言い表してるよね。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
しかしBLEACH世界の輪廻転生システム、それほどガッチリした「世界の理」的なノリには見えへんねんよな。死神という職業の誕生自体がたった2000年前ということは、それ以前は野放しやったということになるからね。死神誕生と同期して人為的に設計されたシステムという感じすらある。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
最終的に一護が「世界の在り方を変える」という展開はありそうではある。一護自身が霊王そのものに取って代わるみたいな形かどうかは分からんけど。「世界を変えた人」というフレーズは尸魂界篇ですでに登場してるし。
— ほあし (@hoasissimo) January 5, 2015
「世界を変えた人」というフレーズは、過去に二度登場しています。
一度目は尸魂界篇。ルキアが一護に死神能力を与えたことによって、一護は大事な友人や家族を自分の手で護ることができるようになりました。そのことを「世界を変えた人」と表現してるんですね。ただしここでいう「世界を変えた人」というのは一護ではなくルキアのことです。
二度目は死神代行消失篇。「仲間を護る」という一護の変わらない決意が、尸魂界という世界そのものの意思決定を大きく揺さぶって、変節をもたらしました。一護はここで、文字通り「世界を変えた人」になったわけです。
そして千年血戦篇においても、一護は霊王をその手で斬ることで「世界を変えた」ようです。ただその変化が必ずしも好ましいものではなかったというだけで、変えたことには違いありません。とはいえ、まさかこのまま引き下がって諦めるわけもないでしょうから、崩壊が始まった世界を立て直すために一護は何らかの行動を起こすでしょう。巷間でよく囁かれている「一護が霊王に代わって新たな神になる」という展開もその可能性の一つとしてもちろんあり得ると思います。自分自身の手で霊王を斬ってしまったとなれば、なおさら。そうすることで世界の安定が保たれるのなら、「仲間を護る」という一護の決意にもフィットしますし。
しかし個人的には、一護は「自分が霊王の後を引き継ぐことで責任を取る」という決断はせず、霊王というたった一本の「楔」に頼りきった現状の仕組みとは異なる、全く新しい「世界の理」を提示するのではないかと思うんです。なぜなら、それこそ「世界を変えた人」と呼ばれるに相応しい英雄的な行為と言えるはずだからです。
そもそも、「私が霊王の代わりになって責任を取ります」という始末の付け方は、「霊王というパーツ一つが欠けたらその時点で世界全体がアウト」という脆弱性を克服しないまま無為に世界を延命させているに過ぎず、再び同じ危険が生じるリスクを全く低減できていません。ましてや〈千年血戦篇〉によって世界崩壊のリスクが実際に提示されたあとですから、物語の結末として読者も納得しがたいでしょう。だからこそ、この仕組みそのもの、世界のあり方そのものを根本からひっくり返す必要があると筆者は思うのです。その意味で、一護は最終的に「世界を変えた英雄」になるのではないか、と思っているわけです。なにせ一護はこのマンガの「ヒーロー」なのですから。
作品論3 ~「ヒーロー」としての一護とペコ~ - Black and White
今週の感想は以上です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
それでは。