Black and White

『BLEACH』を愛して止まない男・ほあしが漫画の話をします。当ブログに掲載されている記事の無断転載を固く禁じます。

『BLEACH』第612話「DIRTY」の感想・考察

こんばんは。ほあしです。

今週から、週刊少年ジャンプ最新号の感想などを記事として残していこうと思います。といっても、いまのところ『BLEACH』の感想だけに留めるつもりですが。

コンスタントなブログ更新に繋がるとともに、今後『BLEACH』を読む上で注目しておきたい点の整理にもなるかと思います。

よろしくお付き合いください。

 BLEACH』第612話「DIRTY」

前回のヒキをそのまま受けて、ユーハバッハが霊王の胸を刺し貫くシーンから始まりました。

ユーハバッハが霊王のことを「逃げることすらままならぬ不全の神」と言っていますね。霊王は四肢が欠損しているばかりでなく、天井から紐のようなもので吊り下げられていますから、身動きの自由はほとんど無さそうに見えます。おそらくはこの点を指して「不全」と表現しているのでしょう。

霊王が「不全の神」として君臨していることを「果てしなく永き屈辱」と表現していますが、このセリフ、「霊王にとっての屈辱」と捉えるか「ユーハバッハにとっての屈辱」と捉えるかによって解釈が大きく分かれそうです。

前者の意味であれば、「霊王」という立場そのものに何らかの闇がある、というような含みを帯びてきますね。〈破面篇〉のラストで交わされた藍染と浦原のやり取りからして、霊王というものが必ずしも「この世の神」に相応しいと見做されるとは限らないらしい、という含みがありましたから、やはり何か「裏」があるのでしょう。

後者の意味であれば、「不完全な神がこの世界に君臨しているということに対する屈辱」というほどの意味になるでしょうか。この意味であれば、〈破面篇〉における藍染の目的にも繋がってくるように思います。藍染は霊王のことを「あんなもの」呼ばわりし、霊王に代わって自分が「神」になろうとしていましたから。「私が天に立つ」というあまりにも有名なセリフはその象徴と言えるでしょう。

解釈が分かれるというか、この「果てしなく永き屈辱」というセリフはまさにダブルミーニングなのかもしれません。霊王とユーハバッハ、両者にとっての「屈辱」である、という。霊王についての謎が明かされれば、この言葉の真意もいずれ分かることでしょう。

 

前回も登場した「未来を見渡した我が父」というフレーズはやはり非常に意味深です。ユーハバッハの聖文字『全知全能(Almighty)』もまた「未来を視る力」ですし、「未来視」を発動したユーハバッハの眼球には、霊王のそれと同じように複数「瞳」が出現しています。言葉通りの意味での「親子関係」があるのかどうかは分かりませんが、二人の間に何らかの強い関係があるのは間違いなさそうです。そもそも霊王は「子孫を残す」ことができるような存在なのかすら怪しいですが・・・。

現時点で一つ言うとすると、YHWHという神の名を僭称する人間・ユーハバッハが「この世の神」であるところの霊王を「父」と呼んでいる様は、キリスト教における「三位一体」の考え方を踏襲しているように見える、ということでしょうか。『見えざる帝国』の軍勢がキリスト教的な宗教集団をモチーフにしているらしいことはほぼ間違いありませんし。

また、ユーハバッハが「霊王の胸に孔を空けている」というのはよく注目しておきたい点ですね。『BLEACH』において「胸に孔が空く」という状態はパワーアップや覚醒の大きな兆候として描かれるものですから、霊王がこのまま呆気なく退場するということは無いのではないかと思います(詳しくはこちらの記事を参照)。何より、霊王がこのまま本当に死んでしまったら「世界が崩壊」してしまうはずですし。

 

場面が変わって、おそらくは十二番隊の隊首室前に召集される隊長格の面々。バズビーと会敵して以来描かれていなかった平子&雛森砕蜂&大前田らの無事が確認されましたね。平子の『逆撫』であれば、バズビーの方向感覚を狂わせて無力化することは可能そうです。それに加えてユーハバッハの二度目の『聖別』によって星十字騎士団の面々は戦闘どころではなくなっていましたから、逃げることはそれほど困難ではなかったのでしょう。

また、恋次から大前田に対する言葉遣いに、この二人の微妙な距離感というか、言ってしまうと大前田の「人望の無さ」のようなものが見える気がして面白いですね(笑)。

BLEACH』のスピンオフ作品『カラブリ』のなかで、大前田は檜佐木や恋次の先輩であることが明言されています。そして恋次は、少なくとも目上の人に対しては、くだけてはいてもきちんと敬語を遣うキャラクターとして描かれていますよね(たとえば、年下であり尚且つ霊術院の後輩である日番谷に対しても、恋次は敬語を崩しません)。ところが、先輩であるはずの大前田に対して、今週の恋次は呼び捨て&タメ口になっています。同じ副隊長同士だから、という説明も出来なくはありませんが、恋次は階級的には格下である一角や弓親に対しても、一貫して敬語を遣っています。つまり恋次は、敬意を払うべきだと見做した相手に対しては業務上の階級など関係なく敬語を遣おうとする人物なのです。

ということはつまり、恋次は大前田のことを、どうやら本当に心底から尊敬していないらしい、という風に考えられるんですよね・・・(笑)。カラブリでの描かれ方にしても、大前田が恋次たちに食事を奢ってやると言うので嫌々ながら一緒にいる、という話になっていますから、人間的な意味では好かれていないようです。地味に気の毒ですね、大前田・・・。

 

また、夜一の弟妹として登場した四楓院夕四郎ちゃんが「弟」であるということが判明しましたね。あまりにも可愛らしいわりに男性名なので性別が判然としませんでしたが、ここにきて素晴らしいおねショタが投下されました。四楓院家は性別にかかわらず男性名を名づけるという習慣があるのかもしれません。兄弟姉妹の名前に「一」と「四」の字が使われているということは、「二」と「三」の名前をつけられた弟妹がいかにもいそうですね(それが本編に登場するかどうかは全く別の話ですが)。

砕蜂は夕四郎の成長を見て感涙までしていますから、おそらく100年前の夜一失踪以前からの付き合いだったのでしょう。そしてそれを傍で眺める大前田の顔つきが面白すぎる。

 

浦原が隊長格の消息についてまとめてくれましたが、勇音、やちる、浮竹については言及されていませんね。

浮竹は「神掛け」とやらに懸りきりなのでしょうか。前回登場時、浮竹の影がものすごいかたちに変化していましたから、何かとんでもないことをやろうとしているのでしょう。

やちるは剣八vsグレミィ戦の後に死覇装を丸ごと残して姿を消し、十一番隊隊士が捜索に入ろうとしたところで女性滅却師4人組の強襲を受けて壊滅したため、捜索すらろくに行なわれていないのかもしれません。彼女の失踪については100年前の「魂魄消失事件」のそれにダブって見えますから、やはり何か裏があるのでしょう。

勇音については、剣八・檜佐木・一角・弓親の「緊急治療」をしている当事者であるという可能性がわりとあるように思います。というのも、勇音は剣八vsグレミィ戦の時点からあの戦線にいましたし、何より四番隊の副隊長ですから、「重傷の隊長と、隊長格に匹敵する複数隊士に緊急治療を施す」という仕事にはうってつけの人物のように思えるからです。剣八の状況を浦原に報告したのも、隊長格の一員である勇音本人なのではないでしょうか。

また、浦原は「十番隊の日番谷乱菊の消息をつかめていない」ようですが、彼らもまた涅に同行しているものと思われます。ゾンビ日番谷の姿を目撃したのは一角と弓親のみ(二人とも席官ではあるが隊長格ではなく、また現在治療中のため動けない)であり、ゾンビ乱菊の姿を見たのは涅の手下であるゾンビ破面たちだけです。今回の招集は隊長格にのみ掛けられたもののようですから、結果として、それらの情報が取りこぼされてしまったのでしょう。

 

また、京楽がいまさら中央四十六室などに向かっているのは、おそらく藍染惣右介の解放」の許可を得るためだと思われます。いくら有事下の総隊長とはいえ、不死の反逆者である藍染を勝手に解放する権限は無いのでしょう。思えば剣八に斬術の指南を与えることにすら四十六室の許可を要したほどですから、やはり総隊長権限は必ずしも大きなものでは無さそうですね。京楽は霊王の危機をすでに察知しているようですから、使える戦力は全て投入するつもりなのでしょう。ユーハバッハが藍染を「特記戦力」の一人に数えているところからしても、藍染はきわめて重大な戦力と見做されているようですし。

また、「藍染の解放」と同時に、京楽は「『仮面の軍勢』による虚化戦闘」の許可をも得ようとしているのではないかと思うんです。『仮面の軍勢』は護廷十三隊への復帰を認められたようですが、そもそも「虚化」研究は「禁術」とされていたわけで、それゆえに浦原は尸魂界を追われる身になったのですから、『仮面の軍勢』が復帰したからと言って「虚化」能力まで解禁されると思うほうがおかしいですよね。ですから、これまでの戦いでローズ・平子・拳西らが虚化を一切使おうとしなかったのは、「四十六室によって虚化の使用を禁じられていたから」ではないかと考えられるのです。しかし戦力の出し惜しみをしていられる状況ではありませんから、「藍染の解放許可」と併せて「虚化の使用許可」をも京楽はもぎ取ろうとしているのではないでしょうか。

 

というわけで浦原は、藍染まで含めた隊長格全員を霊王宮へ送り込むつもりのようです。そこで最終決戦になだれこむのだとすると滅却師側の頭数が圧倒的に足りないように思えますから、地上にいる星十字騎士団もまた霊王宮へ向かうことになるのかもしれません。あるいは親衛隊一人に対して複数人で戦うのかも。この辺の展開は蓋を開けてみないことには分かりませんね。

 

最後に和尚が一護たち「人間共」に向けて意味深な言葉をつぶやきます。言葉通りに捉えれば、「人間はユーハバッハに勝つことができない」ということになります。逆に言えば「ユーハバッハに勝つことができる者は人間ではない」ということになるでしょうか。誰がユーハバッハを倒すことになるのかは分かりませんが、その人物は少なくとも「人間ではない」ということになりそうです。

ただ、「人間ではない」という表現ですぐに思い当たるのは織姫なんですよね。織姫の『事象の拒絶』を目の当たりにした人物は皆、彼女のことを「化け物」だとか「人間のままであるとは信じ難い」だとか言っています。前者は藍染の側近だった破面ロリのセリフ、後者は『仮面の軍勢』の有昭田鉢玄のセリフです。彼女は何かにつけて「非人間的な存在である」ということが強調されているんです。藍染などははっきりと「神の領域を侵す能力だ」と表現していますから、神を僭称するユーハバッハと相対するのに、織姫はうってつけのように思えます。チャドともども虚圏で修行を重ねてもいますから、彼女はきっと何かやってくれるでしょう。

 

 そういえば、今週の「DIRTY」というタイトルについては意味を計りかねています。「ユーハバッハに勝てない」ということを知りながら一護たちを送り出した和尚の残酷さ、卑怯さを表しているのかな・・・というくらいしか、今のところ思いつきません。これについても要検討です。

 

 今週の『BLEACH』についてはこんなところでしょうか。 

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

それでは。